第31話
『ほんとだあった、ブレーカー......。お母さん、手伝って』
コメントの助けを借りつつ、ビルの復旧が終わった。
これでエレベーターが使える。
「みなさん、娘のためにありがとうございます~」
【こむらがえり】『いえいえ、平和のためですから』
【元冒険者】『名古屋落ち着いてきた! このまま頑張って!』
【いきなり凸たろう】『お疲れ様です! 関東周辺は任せてくださいっす!』
【条件付き多幸式】『ダンジョンにたどり着いてるのは、現状お二人だけのようです。他の人たちもすぐ追いついてきてほしい......』
『まあ、応援は期待してないけどね......。みんなも、気を付けてね。後、まだ余力ある人はダンジョンに来てほしい。今、日本は、世界はピンチなの。ネクロマンサーは命を弄んで破壊の限りを尽くしてる。だから、今こそみんなの力が必要なの......。これから屋上に向かう。屋上で無事に会えたら、最高のハグしてあげる』
「お母さんもよければハグしちゃう~」
そう言ってお母さんはすぐにおちょけて私にバックハグをしてきた。
『ちょ、ちょっと......。お母さん!』
【酒バンバスピス】『おお、癒し......』
【小竹ゆきまろ】『女神が二人......』
【シーランド】『とりあえず拝んどこ』
「やだぁ、女神だなんて!」
『早く行くよ! 屋上までエレベーター向かおう』
エリア中央にあるエレベーターのボタンを押すと電気が通ているためモーターが動き始めてエレベーターのかごが下に向かって来た。
「電気、回復してるみたいでよかった......」
『うん。まずは100階だね』
最速で100階にたどり着き、屋上へ続く階段へ向かおうとするとその途中でまたモンスターに遭遇した。そいつは、鳥の頭に人間の下半身で翼を有していた。
「下から来た、ということは我が兄弟アヌビスを倒したか」
『アヌビスに加えて、鳥頭ってことはエジプト神縛りなの?』
「如何にも。我が名はホルス。魔導士ホルスである! 我が魔宝珠『メビウスの指輪』の餌食となれ! 照りつける 日は永久暮れず 敵焦がす 我が命聞きて その呪を示せ」
突然川柳のような呪文のようなものを唱えると、手の先から光が生まれてその光が私たち真上までやってきた。次の瞬間、その光は太陽のような熱を私たちに浴びせて来た。熱い......。暑い!!
「アツッ!!」
『あっっつ!!』
1月の寒さで重ね着をしていたのも、すぐに脱ぎ捨てるほどの暑さだ。
汗ばむ前に私たちはジーパンと長そでだけになって、ホルスの元へ向かった。
『サンダー・クラッシュ!!』
「エアロ・ブレイク!」
二人とも魔法を繰り出すも、ホルスはそれを読んでいたのか指を使って空中に円を描いてそれらをすべて跳ね返してしまう。
「月の盾! 無駄だ......。私には魔法を無力化する魔法がある」
『だったら!』
「実力行使ね!」
私は弓矢を、お母さんは両手剣を取りだした。私はすぐに矢を放ち、お母さんはその放った矢に合わせて当たらないようにホルスに近づく。
「鋼鉄の 鎧のごとく 身を包み......」
ホルスが呪文を唱え終わると、彼自身の身体が鉄のように銀色に輝き実際に矢をも弾き、お母さんの剣さえも受け付けなかった。
「なんて強さなの!?」
『ていうか、物理無効の魔法無力化ってチート級のチートじゃない。最悪ね......。こうなったら、こっちもチートを使うしかないわね。ファイア、サンダー、エアロエアロ、スパイラル、アクアアクアアクアファイア!』
これは、複数の魔法石への命令を同時に行うことで、魔法石をオーバーヒートさせて一般的には流通していない魔法を使えるというバグ技みたいなもんだ。今のダンジョンで、この技が使えるかどうか知らないけど、やってみる価値はある!!
しばらく静寂が続き、諦めかけていると空から大きな電撃がホルスに直撃した。その電撃はなん十発もホルスに直撃していく。さらには地下からマグマのようなものが噴出し、ホルスを打ち上げていった。
「ぐああああああああ!!」
『やった!』
「さっきの凄いわね......。お母さんにはマネできないわ」
お母さんに褒められるのは嬉しいけど、右手に負担がかかっちゃうのよね。
私は右手を抑えて息を整えていると、瓦礫からホルスが起き上がってきた。その顔は憎しみに染まっていた。
「き、貴様ぁっ!! 魔法を、愚弄するなぁ!」
『あんたらだって、人間のこと見下してるでしょうが! ただのキャラのくせして!』
「だから何だというのだ! 私はネクロマンサー様のために生まれ、ネクロマンサー様のために死ぬ者。魔導士ホルス! 貴様に殺されるわけにはいかんのだ!!」
『私はネクロマンサーの所に行きたいだけ。そこをどかないなら、力づくでいくわよ!』
「今更、我々を倒すことを躊躇うなぁ!!」
私とホルスは、同時に炎の魔法を繰り出した。その威力は途中で相殺されて魔力の押し合いになった。だが、そこにお母さんが加わってくれた。
「あの子も言ってることだし、私達はすべてを背負って世界を救う親子になっちゃいましょ!!」
こちら側の炎の威力が強くなり、ホルスの炎の魔法が押されていく。ホルスは、抵抗するも最後には諦めたかのようにスッと腕を下ろした。炎はホルスに直撃して最後には爆発した。
『消えた......。これで、いいのよね』
「うん。先を急ぎましょ」
私たちは階段を上っていき、やっとの思いで屋上にたどり着いた。
そこには、ネクロマンサーが一人佇んでいた。
「私のイベントは気に入ってくれたかな。題して『人類殲滅ゲーム』......。君たちがダンジョン内で魔族を殺してきたように、私達もこの世界をダンジョンにして人間を殺していく。もちろん、互いにコンティニューはなしにだ。これで、ゲームはリセットされる! もう何度も殺され、生き返ることはない!! ハハハ! ハハハハハハハ!」
ネクロマンサーは高らかに笑っていた。だが、私はどうも今の言葉に引っかかることがある。
『あなた。もしかして、自分もダンジョンのモンスターとして討伐されたいの? だから、こんなに人を巻き込んでるの??』
「私は不死身だ。その不死身ゆえに、運営は私をダンジョンの地下深くへ幽閉した! これほど屈辱的なことがあるか!? 私は、初めてダンジョンを恨んだ。だから、復讐を誓った。攻略不可能な上級モンスターを生み出し、何度も蘇るシステムを組み込んだ。だが、君たちはそれらを易々と攻略してみせた。なんたる非道、いや外道か......。だから、私自身も外道に身を落とす。貴様ら人類を残らず捻り潰してやる!」
『それで、あんたの言い分はそれだけ? じゃあ、私が思う存分遊んであげる』
私がこの最悪の状況を終わらせてやる!
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