ネコとウサギとイヌ 9

「話を聞いてきましたよ~。」

エリーが戻ってきた。


コボルトたちを恐がらせるという理由で俺、リノア、メキラは離れて待機していた。


エリーが単身、コボルトたちから事情を聞いて来た。


「陳情書の通りでしたね。

村の中に危険な迷い犬が徘徊しているようです。

コボルトたちは危険な迷い犬を恐れて、村の外に逃げ出したようです。」


「じゃあ、その危険な迷い犬を倒せば良いってことだな。

思ったより簡単じゃん。

さっさと見つけて、さっさと倒してしまおうぜ!」


「簡単だとわかると元気になりますね。」

リノアが鋭い。



そんなことを言いながら村に入った。

そしてすぐに見つかった。


「あれが危険な迷い犬か?」


そこにいたのは、うずくまり、小さく丸まる子犬だった。


「他にはいなさそうですね、、、」

優しいエリーもリアクションに困っている。


「・・・殺る?」


「待て、待て!

さすがに子犬相手に乱暴はまずいだろ。

それに弱ってるみたいだからな。

一旦保護しよう。

この村から離れれば問題無しだろ。」


そう言って子犬に近づく。

反応は無い。

相当衰弱してそうだな。

ぐったりとしている子犬を抱き抱える。


「魔王城に連れ帰って治療しよう。

エリーはコボルトたちに迷い犬は連れて行ったと伝えてくれ。」


「わかりました。」



そして、俺たちは魔王城に戻った。

子犬を診察してもらった。

衰弱の原因は栄養失調だった。

おそらく、親とはぐれてしまったのだろう。


「魔王様、あれは子犬ではありませんでした。」

リノアが報告をしてきた。


「ん? じゃあなんだ?」


「狼です。」


「あ~、狼か。」

ここは魔界。狼なんていくらでもいる。


「それも、フェンリルの子どもです。」


「な!?」


フェンリル。

魔界でもトップクラスの実力を持つ狼モンスター。

大人になれば、ドラゴンなども倒す強力なモンスターだ。


「なんでフェンリルの子どもがあんなところにいたんだ?」


「原因は不明です。

フェンリルは非常に移動力の高いモンスターです。

どこかを目指して移動中に落としてしまったのかもしれません。」


「状況はわかった。

どちらにしても放置はできんな。

とりあえずは面倒を見よう。

万が一殺して、フェンリルの逆鱗に触れれば厄介だ。」


フェンリルは強い。

魔王が負けることはないと思うが、戦いたくはない。

まずは元気になるように世話をしよう。


それによく見ると、とてもかわいい。

見た目はただの子犬だ。

シベリアンハスキーの子犬って感じだな。

こんなかわいい子犬を見捨てることはできないな。

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