蝉と蝶

平素な道を歩いていると、その端に、墓が在った。


石に囲われ、花を手向けれらている、蝶が弔われていた。


きっと、少年少女達がその蝶を憐んで、そうしたのだろう。


悲しいながらも、少し、心が温かくなった。


そんな墓の前を少し、顔をはにかみながら通った。


コンクリートと道は続く。


暑い、暑い。


記録的な暑さの夏に、心を奪われそうだ。


そうして、歩いていると、その真ん中に、死体が在った。


蝉の、死体だ。


車に轢かれたのか、将又、老衰をしたのかは分からないが、蝉が死んでいるのだけは分かった。


体が半分、潰れていた。


少年少女達が、遊んで走るその道、蝉は夏の一部で在った。


僕には、その蝉を弔う、勇気が無かった。


車の音がする。


蝉が鳴いている。


忙しなく、夏を告げている。


蝶が飛んでいる。


忙しなく、羽を動かして、空を飛んでいる。


空は、氷の様に、涼しい様子だ。


そんな中、少年少女達は、走って、遊ぶのだろうな。


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