第39話 フラウ姫の帰郷
まずはキャンプ場までスクーターでってことで向かったが、
…やっぱ怖いって!4人乗りのスクーター!
昨日の帰りよりはマシだけど、楽しそうにひょこひょこ動かれるとヤバいから!
そしてキャンプ場に着いた後、山を登って人目のつかないとこまで来ると
『登るのはお疲れになると思いますので、運んであげますよ』
という声と共に、3人に空中に吊り上げられ…
(おあぁぁーー!)
森の中を飛ぶように丸太小屋に運ばれた!
いや、速すぎない!?
――あっ!
『リュノ!足そっちに引っ張ると木にぶつかる!!』
『うわ!危なっ!……ふぅ~、私はすり抜けちゃうから気がゆるんでた…ごめん、これから気を付けるね。てへっ☆』
『それでごまかされるとでも!って言ってるそばから!』
『うわっと』
『リュノ、私の指示に従って動きなさい!』
『分かったよ!ありがと姉さん!』
『次、左!!』
『え、左ってこっちだっけ?』
『ちゃうわっ!!』
『ひゃー危ない危ない、左右ってとっさだと分からないよねー』
…ぐぬぬ、ポンコツ過ぎん!?覚えておけよ、リュノ~っ!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そうして丸太小屋には一瞬で、何とか無事に辿り着き、待っていた朱里ちゃんは驚きの表情を浮かべたあと、目を輝かせていた
「ねぇ、すっごく楽しそうな登場の仕方だったね?」
「…朱里ちゃん、この姿が見えてない?」
今俺は膝をついて四つん這いの姿である…
「えぇぇ~!木々の間を滑空するなんて、刺激的で爽快そうだったじゃん!」
「…俺もジップラインとかは好きだよ、でもね、アレは安全が確保されてるから楽しめるんであって、身の危険を感じるレベルだとね…」
「そうなの?でもミズハ隊長でしょ?間違いなさそうだけどなー。…まぁいいや、それよりフラウ姫やミズハ隊長にリュノさんがいらっしゃるんでしょ?挨拶したいし、悪いけど、直ぐに魔力譲渡してくれない?」
「…おぅ」
ぐったり感から、ちょっと魔力譲渡が雑になってしまい、朱里ちゃんが「っああ、んっ!」っていつもより声を大きくあげていたが…顔が赤いだけで大丈夫そうだな、良かった。
さて、朱里ちゃんの挨拶も済み、早速畑作りをすることになった。
といっても俺は種や種芋のコーティング作業をしないといけないので、畑作りは朱里ちゃんとリュノにお任せである。
で、畑作りだけど…朱里ちゃんは小屋の周りの広場になっているところの雑草を刈って、こぢんまりとした畑を作ろうと思っていたみたいだけど、陽当たりを考えて少し木を伐採した方が良いってことになったらしく…
ミズハ隊長が大きな木を5本スパパパパンっと切って丸太にしていた。ミズハ隊長がマジックポーチから取り出したどでかい斧をコーティングしてと言ってきたので、さっきコーティングしたんだけど…凄い!
リュノは魔法で土を動かしてミズハ隊長が切り終えた所から順に切り株を掘り起こした後、丸太と切り株を隅に寄せていた。
その後はリュノが土を空中に動かしてふるい落とした雑草を、フラウ姫とミズハ隊長が風の魔法でひとかたまりにして、朱里ちゃんの持つゴミ袋に次々と入れていった。
なお、最初はリュノも土と同時に風の魔法も使ってゴミ袋に入れようとしたんだけど、勢い余って雑草のかたまりが朱里ちゃんにボフンっと襲いかかり、『ふふっ、リュノさん良い度胸ね』とニッコリ笑って言った朱里ちゃんとリュノの追いかけっこに発展したので(笑)、土の魔法に専念してもらうことになった。
小屋の周りの土は落ち葉や枝で腐葉土になっているので、このまま畝にして植えれば問題ないそうだ。
皆が頑張って畑を作ってる間(朱里ちゃんに捕まったリュノがこそばしの刑に処されてる時もあったが)にコーティング作業も終わったので、朱里ちゃん(※大樹さんのメモ持ち)の注意点を聞きながら種と種芋を植えていった。
水は井戸からポンプで汲み上げられるとのことなので、(そういえば丸太小屋には流し台があったよな)植え終わったところから水をかけてとりあえず畑は終了である。
その後はカレーライスを皆で一緒にわいわい言いながら作って食べた。外で作って食べるカレーって何でこんなに美味しいのかな。
朱里ちゃんもカレー作りには自信があったようで、手慣れた感じで3人に教えながら作っていた。フラウ姫は立場上、自分で作る機会はほとんど無かったらしく、興味津々で凄く楽しそうに作ってた。
カレーライスをフラウ姫達3人も美味しそうに食べて凄く気に入り、自分で作ったというスパイスも加わったフラウ姫は、お土産に持って帰りたかったと空になった鍋を残念そうに見て、
『さつまいもに続き、また好物が増えちゃいました!』
と言った後、ミズハ隊長と頷きあい、
『絶対また作ったり食べたりしに来ますね!』
とフンスッと気合いを入れて言っていた。
そうして楽しかった時間も過ぎ、何とか昼までの忙しい時間が終わった大樹さんが駆けつけて来たあと、フラウ姫とミズハ隊長は帰って行くことになった。
一週間後にまたフラウ姫の里まで行くことを伝え、別れの挨拶をしていると、ミズハ隊長がフラウ姫に気付かれないように
『フラウ姫の屈託のない笑顔、久しぶりに見ることができました。ありがとう』
と言って頭を下げてきた。
…俺は会ったときから親しみやすく笑顔の似合う華のような姫様だなぁと思っていたんだけど…この姫様の笑顔が無くなるなんて、本当に追い込まれてて、そんな姫様を見てミズハ隊長や里の人達は心苦しかっただろうな…
…俺に出来ることがあったら極力してあげよう
とその姿を見て改めて思った。
『えっと、偶然の部分が大きいので、そこまで感謝されるとこそばゆいので、頭を上げてください。でも、少しでも力になったのなら良かったです。それと、困ったことがあったら何時でも言って下さい。出来る範囲で頑張りますので』
と重くならないように笑って伝えておいた。
そうこうしているとフラウ姫が皆と一緒にニコニコ寄ってきた。
『カズマ様、アカリ様、タイキ様、本当にありがとうございました。里を救って頂いている上に、こちらで歓待して頂き、楽しく美味しい良い思い出が沢山できました!
しかも、トマトと枝豆(大豆)とトウモロコシの種と、好物になったさつまいもは種芋だけでなく食事用まで頂き、育て方も教えて貰いましたので、感謝してもしきれない感じです!
そこでちょっとお礼を考えたんですけど、カズマ様のお住まいとここの扉のある所まで結構時間がかかるので、転移装置をお渡ししたいなと思っています。まぁ私は移動が楽しかったのですが、やっぱり時間がかかる移動は大変だと思いますので。ちょっと制作に時間がかかるのでお待ち頂くことになるとは思いますが…如何でしょう?』
『いや、お礼はまだ受け取ってない装備もありますし、もう十分貰っていると思うのですけど…』
『まぁそう言わずに。あると便利でしょ?』
『それはそうですが…』
『じゃあ、決まりです!』
フラウ姫はそう言ってにっこりと笑顔を向けてきた。
…うん、この笑顔で十分なんだけどな、でもこれは断れない感じだな…確かに移動が一瞬になると相当便利であちらに行き易くなるし。
『ありがとうございます』
『ふふふっそれではまた里で会いましょう。アカリさんもお待ちしていますね。リュノも元気で。迷惑かけたらダメよ?』
『『はい、また』』『だ、大丈夫ですよ!?』
『『ふふっ、では!』』
そうして、笑顔のフラウ姫とミズハ隊長は手を振って、里に帰って行ったのだった。
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