第27話 里での試食

 さて、試しに食べてみることになったが…今回持ってきた食材は、トマト、じゃがいも、枝豆、ウィンナーか…

とりあえず俺に負担をかけるわけにはいかないので、こちらの料理人に指示して簡単にできる物をってことだけど、何を作るかな?

…コンソメがあればポトフとかミネストレーネとかも簡単にできるけど無いしなぁ。野菜から出汁を取るのはさすがに時間かかるし…

とゆーか、魔力用の非常食になるのだし、こっちにある調味料で誰でも簡単に再現できた方が良いよな…


『リュノ、塩と胡椒は同じようにあるんだよね?』

『うん、あるよ』


じゃあ、じゃがいもとウィンナーと塩胡椒で、ジャーマンポテトだな

枝豆は塩ゆで、トマトは生のままサラダで

…リュノ達が同じような耐性か分からないけど、じゃがいもの緑色に変色した皮とか芽には“ニンゲン”にとって毒性があることを伝えとかないとな…


とりあえず、20~30人分くらい作って欲しいってことなので、お屋敷の調理場で料理人の人達に手分けしてもらい、ササッと作って貰ったが…ここに居る人で分けるには多いよな…


どうするんだろ?と思っていると、フラウ姫が

『お庭に持って行って皆で食べることになりましたので、お庭に向かいましょう!』

と言って先導してくれたので、付いて行った。



そして、庭に出てみると、何と里の人達が100人くらい集まっていた!


いつの間に!?と驚いていると、ミズハ近衛隊長が

『さて、権利を勝ち取った皆さん、順番にお渡しするので、身体を半分の大きさにして並んで下さい!』

と言って、整列させていた。


おお!皆半分の大きさになった!…各隊長も鎧を脱いで小さくなった!…あ!フラウ姫まで!


そして、身体を半分の大きさにした人達が、料理を受け取って食べ始めたのだけど…塩と胡椒しか使ってないのに、美味しい!しかも、本当に魔力が増えてる!って大騒ぎだった。


そうか、身体が半分になったら、少しの量でも満足できるんだな…しかし、デフォルメって訳ではないけれど、小さくなると皆なんか可愛かわいいな


聞いたところによると、ここに集まった人達は、広場で急遽行われた抽選で選ばれた人達らしかった。



 今回食べた人達にも問題なく受け入れられたので(というか、神のようにあがめめられる感じで絶賛されたので)、無理のない範囲で定期的に持ってきて欲しいと、改めて依頼された。

…まぁ週末ごとに他に用事がなければ来る感じかな…朱里ちゃんには毎週末来ましょうね!ってすごい勢いで言われたから、しばらくは毎週こちらの世界に来ることになりそうだ。まぁ食材の備蓄の意味でもその方が良いだろうしな。


なお、『こんな風に振る舞うなら玉ねぎがあった方がより美味しかったよな』と呟いたら、フラウ姫が耳聡く聞きつけて、『無理がないようでしたら是非』と(全力で目を潤ませて)お願いされたので、持ってくるものリストに追加することにした。

あと、一応料理長や調理師には、ポトフとかの野菜スープや、トマトソースとかも伝えておいた…次回余裕があればナポリタンみたいなのもやっても良いかも。麺とかあるのかな?



そうして、料理の振る舞いと今後の話がある程度落ち着いたので、お屋敷の中に戻り報酬の話になった。

…やっぱり使えるならマジックポーチが良いかなと伝えると、快く頂けることになった!

収納の大きさは家一軒分と最大級の物らしい。

試してみると問題なく使えたし、凄い!最高だ!!


マジックポーチを手に取りホクホクしていると、フラウ姫がスッと寄ってきて、

『そう言えば、リュノから魔力を直接譲渡して頂いたと聞いたのですが、私にもして頂くことは可能でしょうか?』

と聞いてきた。


うーん、魔力譲渡か…リュノも朱里ちゃんも結構大変そうだったんだよな…

『リュノが耐えるような感じだったので、苦しいかもしれません…フラウ姫にもしものことがあったら大変なので、私としては心配なのですが』

と伝えると、フラウ姫がリュノを呼んで詳細の説明を求めた。


リュノはフラウ姫の手を取ってこちらから少し離れ、こちらに聞こえないように小声で説明をし、途中からミズハ近衛隊長も呼んで3人で秘密話をするように話し込んでいた。


そして、まずは試しにリュノの姉のミズハ近衛隊長に行い、問題がなければフラウ姫に試すことになった(らしい)。


『ミズハ隊長にも何かあったら大変だと思うんだけど…』

と伝えたが、良いとのことだった。


心配になって朱里ちゃんにも聞いたけど、大丈夫だと思うよー。と心配性な俺を安心させるためなのか、軽めで苦笑しながらの返事だった。

経験者が止めないならまぁ大丈夫なのかな?

ちょっと躊躇していると、フラウ姫から

『上手く魔力譲渡できた時はさらに報酬を差し上げますので、是非試させて下さい』

と頼まれた。


まぁそこまで言われるなら、と了承すると、成り行きを見ていた家老が

『すいませんカズマ殿を疑う訳ではなのですが、見ているだけで姫に何かあったら私は自分を許せませんので、姫の前に体力の劣る私にも試して、安全性を確かめさせて下さい!』

と言ってきたので、計3人に試すことになった。

(里長の息子のカーク君やダガト攻撃隊長も『俺も!俺も!』と言ってきたけれど、魔力譲渡はお腹も減るし際限がなくなるので『魔力譲渡は疲れるので』と言って勘弁してもらった。笑)


そうして話しがまとまると、

『それではカズマ殿、よろしく頼む』

とミズハ隊長が近づいてきた。

よし、じゃあやってみるか…問題が起こりませんように。

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