『次、転校するまでウチと恋人ごっこせえへん?』〜転勤族のオトンのせいで友達のいない隣の席の美少女からの夢の提案〜

🌸桜蘭舞🍒@暫くお休みします!

第1話 ウチな、たまに自分が何ゆーとるか分からん事あるけぇ(笑)


 暑い……。



 GW明け最初の登校日、都内は季節外れの記録的な猛暑に見舞われた。


 こんな日に学校に行くのなんて、クラスのみんな、イヤ学校中の生徒全員が憂鬱ゆううつな気分だろう。


 そんな中、まるで台風が来たかの様に一人の女の子が俺の前に現れた。



 ※


 二年A組、ここが俺の教室だ。


 「なんか今日、転入生が来るみたいよ!」

 「男かな、それとも女かな?」


 「イケメンだったらどうしよ〜♡」

 「可愛い子だったらラッキーだよな♪」


 HR前、噂好きのクラスの中心人物達が好き勝手言ってると、担任が汗をびっしょりかいてやって来た。


 「はーい、みんなおはよー!」


 先生もよっぽど暑かったのか、クーラーの効いた教室に着いてもなお、ハンカチで汗を拭って続けた。


 「連休明けで突然なんだが、転入生を紹介するぞー」


 教室内では、所々で話し声が聞こえ、皆、興味津々だと言う事がわかる。



 ん、……まてよ? 今、このクラスで空いてる席と言えば、一番後ろの角から二番目、つまりは俺の隣だ!


 もうその時点で心臓バクバクな中、先生は廊下に向かって声を掛けた。



 「おーい、桜さん、入っておいで!」



 「…………」

 「……っ!」



 先生が入り口の扉を開けたが転入生は教室に入って来ない。


 それどころか廊下では、一人の女の子がスマホ片手に大きな声で誰かと話してる声が響いていた。


 

 「……だからな、ゆーたやろオトン、一人で大丈夫じゃけぇ、ウチの事いくつや思うちょるねん? じゅうしちやで! どこぞの声優はんが言うとる『じゅうななさい』とはちゃうねんでー!」

 

 『…………っ!』


 「それは分かってんねん! オトンの仕事の都合でウチは転校ばっかりしとうと、色んな方言がまざっちょるきに、たまに自分が何ゆーとるか分からん事あるけぇ(笑)」


 『…………っ!!』


 「……じゃけぇゆーとるやろ? コレからは何でも一人で出来るて! なっ?」


 『……』


 「あっ、センセが睨んどるけん、切るな、ほななー♪」


 ツーッ、ツーッ…………



 教室中の視線を独り占めしたこの転入生。



 身長は少し低めで、見た目は幼く見えるが、出る所は出てるし、引っ込む所は引っ込んでいて、足も細い。


 ハーフツインの似合う、目がクリッとした誰が見ても可愛いと言うだろう女の子。


 だが先程の会話の一部始終を聞いてしまった俺達は顔をしかめていた。



 すると彼女はそそくさと教室に入り、何事も無かったかの様に教壇に立ち、黒板に大きく名前を書いた。



 さくら 蘭華らんか



 そして慣れてますと言わんばかりに俺達を見回し、自己紹介を始めた。



 「みなさん、ご機嫌よう」

 ペコりと頭を下げてから、大きく息を吸って、


 「ウチ、『桜 蘭華』言いますねん。ココ来る前のガッコでは略して『サクラン』て呼ばれてたけぇ、ココでもそう呼んでくれると嬉しいわぁ、何気に気に入っとんねん! 更に一コ前のガッコではな、某ロボットアニメの髪の毛が緑色のヒロインはんと名前が同じやきに、『キラッ☆』とかやられてよう揶揄われたわ!」


 手さげカバンからミネラルウォーターを取り出し、キャップを開け半分程一気飲みした後、話はまだ続いた。


 「それでな、ウチ、オトンの仕事の都合で小さい頃から転校ばっかりしとるんよ。行く先々で方言覚えてもうてな、ごちゃ混ぜになっとんねん! ……今はな、前の大阪弁とその前の広島弁が主にごちゃ混ぜになって、ウチかてよう分からんようになってもうたわ、ふふっ♪」


 ……話はまだ止まらない。


 「じゃけぇ、このガッコも半年も居るか分からんきに、季節ハズレの台風が来た思うて仲良うしてくれると嬉しいわぁ♪」


 彼女は残りの水も一気に飲み干して、空になったペットボトルをカバンにしまった。


 そして、もう済んだのかといわんばかりに彼女を見た先生が、判決を言い渡すかの様に声を上げた。


 「それじゃ、桜さん。 空いてる席は……と、一番奥の席に座ってる西に座ってくれ!」


 もちろん『安西のとなり』とは、俺、安西悠一あんざいゆういちの隣の席と言う事だ。


 最後に彼女が、


 「ほな、……短い間やけぇ、よろしゅう頼んます!」


 最早、何処の方言かもわからない言葉で挨拶をして、俺の隣の席に腰掛けた。


 俺は咄嗟とっさに、

 「よっ、よろしく、『桜さん』!」


 すると彼女は怪訝けげんそうな顔をして、


 「……さっきウチが言うてた話、聞いてたん? 『サクラン』呼べ言うたじゃろ? あんさんもたいがいにせーや!」


 ……と、言ったと思ったら、


 「あんさん、『安西』さんやろ? ほな『あんさん』でええのちゃいまっか?」


 一人満足そうにケラケラと笑っていた。

 勿論クラスの視線を一気に浴びて、だ。


 俺はクラスじゃ目立たないグループだったのに、この日を境に彼女、『桜蘭』と共に悪目立ちする様になってしまった。




 第2話につづくて



 ※※


 初めましての方、いらっしゃいませ!


 『ポップでライトなラフランス姫』こと桜蘭舞さくらんです! 今後とも宜しくお願いします♡


 はい、この作品は『第2回「G'sこえけん」音声化短編コンテスト』に参加します。


 読者選考があるのです! 是非ともページ下の★で応援して頂けると嬉しいです!



 SE : パン、パンッ //手を叩く音


 黒桜蘭『は〜い、いつものみんな! ちゃんと読みに来てるかしらぁ?』


 SE : パチーン、パチーン//ムチの音


 黒桜蘭『アンタたち、わかってるわよねっ! ご新規さまに好感持って貰える様な気の利いたコメントで賑やかしなさいよっ! じゃないと……「めっ」なんだからねっ!』


 SE : ピッ! //人差し指を立てる音


 ASMRって、……こんな感じかしら?


 

 

 ♪読んで頂きありがとうございました♪

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