第8話 ゲームっぽい要素
――SIDE.明都院 割美
父の部屋を出て、出立の準備を始める。餞別としていくつかのマジックアイテムをくれるそうなので、有用な物を遠慮なく持っていくとしよう。
そう言えば、すっかり忘れていた事がある。確かにここは現実世界だ……しかし、【ラブたん】を基に創られているのならば……アレがあるはずだ。
左手に付けられた、腕時計のような小さな端末。これは【冒険者端末】と言い、自分の【ステータス】確認やダンジョン内の地図表示にGPS、他者との通信手段などに使える万能装置なのだ。しかもダンジョン内や装着者が発する微弱な【魔力】によって動いているため、充電の必要も無い。この世界は魔力という存在をエネルギー資源として活用しているのだ。主人公の場合は入学式の後に配られるが、ワルミは中等部の時点で既に受け取っている。
前世ならゲーム特有のご都合設定だと思うが……この世界ではこれが常識。ステータスによって身体能力を分析し数値化したり、【ジョブ】や【アビリティ】で自分がどのような才能を持っていてどの部分を伸ばすべきか把握できる。ダンジョンに入らない一般人ですら当然のように魔力で動く道具を使い生活していると言うのだから驚きだ。早くこのギャップに慣れていかなくてはいけない。
ではでは、冒険者端末を起動して……「ステータス確認」! ラブたんだとワルミは前に出て敵の攻撃を防いで味方を守りながら武器を振るう【タンク】役のジョブに適性があった。つまり力が強く体が丈夫で重武装や近接武器の扱いに長けているという事。さてどうなっているかしらん。
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◇明都院 割美(あくどいん わるみ)
CLv:8/8級
JLv:8/ビギナー
HP:60/60
MP:48/48
SP:59/59
STR:24 VIT:26 SEN:23
AGI:30 INT:26 MND:28
MAG:21 AC/SC:4/5
・アビリティ
【★悪知恵】
【Lv4:武器マスタリ・長剣】
【Lv3:闇属性魔法】
・スキル
《威嚇》SC0
《初級鑑定》SC0
《パワースラッシュ》
《ダークネスアロー》
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あーコレ! コレですわコレ!! やっぱりこういうゲームっぽい要素があるとやっぱりラブたんなんだなって実感しますわ~! 感動ですわ! 感動ですわ!
………でもなんかこう……予想よりだいぶ平均的だ。ラブたんの仲間キャラクターはステータスにはっきりとした山が付いている者が多かった。【タンク】に適性があるワルミならば、
私の人格が混ざってしまった事でステータスにも変化が起きてしまったのだろうか? でもこれなら万能タイプである主人公のようにマルチな活躍が出来そうだ。前向きに考えよう。
そして【アビリティ】にも違和感がある。アビリティとはその人物が持つ才能を項目として表したもの。アビリティ枠にセットする事でその項目に能力ボーナスが得られるのだ。
そして一部の冒険者には別枠で外す事が出来ない【★固有アビリティ】を所持している場合がある。それは人物ごとで様々な効果があり、ステータス強化や特別な効果を持つもの、デメリットしかないハズレも存在する。
ワルミには無かったはずだが……というか【★悪知恵】。悪知恵て。お前トコトン悪役らしいなぁワルミぃ!
【★悪知恵】詳細
INT+10%
闇属性の適性・耐性+10%
光属性の適性・耐性-10%
効果も名が体を表していて笑えてくる。だがその名称に反して有能だ。INTは一定値に達するとアビリティ枠と【
ラブたんでは非操作仲間キャラの戦闘AIがより優秀になるという副次効果もあった。これを現実に置き換えるならば……戦闘における判断力が強化されるという事だろう。力だけでは解決できない事も多い。ありがたい事だ。
お次は【属性】効果だが……ラブたんには3種類の物理的属性と9種類の魔力的属性がある。注目してもらいたいのは、【闇属性】の耐性強化。ラブたんに登場する魔物は闇属性で攻撃してくるものが意外と多い。そう考えるとこの1割軽減は素晴らしい。光属性に弱くなってしまうので一長一短だが。
最後に【スキル】を見ていこう。スキルはアビリティなどで習得できる特殊技能である。武器を同じ動きで振るのだとしても、通常時とスキルではスピードや威力、効果に違いが出るのだ。不思議だねぇ。
《威嚇》《初級鑑定》はジョブ【ビギナー】で習得できるスキルだ。《威嚇》は自分より弱い魔物を追い払ったり逆に敵の注意を少し引き付けたりする便利なスキル。《初級鑑定》はアイテムや魔物、他の冒険者などに使うとぼんやりした概要を知る事ができる。
《パワースラッシュ》《ダークネスアロー》はそれぞれ【武器マスタリ・長剣】【闇属性魔法】で習得できる初歩的な攻撃スキルだ。近距離は強力な武器攻撃、遠距離は魔法による牽制と追撃……ラブたんプレイヤーにも人気の万能的な組み合わせである。やるじゃんワルミ。
……冒険者としてのワルミの能力は把握した。なんだ、意外とやれそうじゃないか。【フジヤマダンジョン】の内部構造がラブたんと同じならば、ソロでも効率的にレベルやアビリティを鍛えられる方法は頭にたくさん詰まっている。何ならFクラスの主人公や攻略キャラ達を育て精鋭に仕上げる事も可能だ。
……だが、この世界はそう簡単なものではないらしい。
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