第13話 秘密


 私はコウ先輩と二人でカフェに移動した後、相談に乗ってもらっていた。


 最近、自分自身がコントロールできない事、今日もレイ君の後を付けるなんて卑怯な真似をしたことなど、普段は絶対に話さないような事も漏らしていた。


 もしかしたら、私は叱ってほしかったのかもしれない、そんな事するべきじゃないって、でも帰ってきた言葉は。


「本当にツムギ君の事が好きなんだね」


 そんな優しい言葉。


「はい、好きでたまらなくて、だから自分が抑えられなくて」


「そっか……ねぇ、突然だけど僕の秘密も聞いてくれるかな?」


 それこそ本当に突然そんな事を言われればどうしても戸惑ってしまう。仲良くはなったけど秘密を共有するほど親密というわけでもないから。


 私が戸惑っていると、コウ先輩は「君の秘密だけを知っちゃうのは不公平だから」と微笑んだ。


 こっちとしては勝手に愚痴みたいなものを溢しただけだけど、きっとコウ先輩なりに私を気遣ってくれての話なんだと理解した。


 だから話を聞いて驚いた。


 だって、本当にトンデモナイ秘密だったから。


 コウ先輩が言うには、私と今まで一緒に遊んでいた元生徒会の女子メンバーの複数名と肉体関係にあるという事だった。


「えっ、そのユカリさんともですか?」


 思わず聞き返す。

 確かに最初はカップルと勘違いしたけど、一緒に遊ぶようになって、そういう雰囲気は微塵も感じられなかったからだ。


「うん、まあユカリは特殊だけどね。書紀だった子なんかは彼氏いるけど、まだ関係続けてるよ」


 今まで見ていた世界がびっくり返った衝撃。


「ふっふ、絶対に秘密だよ」


 驚く私にコウ先輩が笑い掛ける。

 それと同時に疑問も浮かぶ、どうしてそんな重大な秘密を私に打ち明けたのかと。


「……どうして、私にその事を話したんですか?」


「ん? そうだね。君は僕と同じで欲求に忠実だと思ったからかな」


「先輩と同じですか?」


「そう、僕はただ、気に入った可愛く綺麗な子を抱きたいだけ、それこそ、恋愛感情なんて必要なく割り切った関係でね。だからこそ脅したりとか、騙してなんて面倒なことはしない、別れる時はそれこそ何もなかったかのように別れたい」


「えっと、話だけ聞くと……」


「クズに思えるかい? でも、さっき言ったように脅したりとかしてないんだ。あくまでお互いに利害関係で成り立ってるんだよ、それこそ彼女達一人一人違う理由でね」


 ここまで言われれば私も気付く、コウ先輩は私を誘っているのだ。お互いに利害関係を結ばないかと。


「私には、利益になるような事は無いと思いますけど」


「そうかい、今の君の状態、心に対して体を持て余してるだろう。それが精神的にも影響している。だからこそ発散すべきじゃないかな。僕なら絶対に秘密をバラさないし、バレない自信があるよ」


 コウ先輩の穏やかな口調から無理強いする事は無いのだと思った。

 それに言葉通り、きっとコウ先輩は周りにバレる事を望んでいないのだろう。言われるまでは他のメンバーとの関係性なんて全く気付けなかったし。


 でも、私はレイ君を裏切る事なんて出来ないからその場は断りを入れて、家に帰った。

 

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