第46話

翌朝、まだ部活の人達も来てないであろう早朝にの校舎に、美和とアヤナの姿があった。


「美和ちんおはよ!今日は絶対犯人捕まえようね!」

アヤナは朝から元気だ。

「おはよう、早起きしてくれてありがとう」

「エヘヘっスマホの充電もバッチリだよ」

「スマホ?」

「うん!これで犯人の証拠動画を撮るの!」

「あー、なるほど。全然思い付かなかった」

「大丈夫!アヤナがバッチリ撮るから!」


二人の作戦は、二人は敢えて外履きから上履きに履き替えず、外履きを隠し持ち、登校していない風を装い犯人を物陰から見張るというものだった。


「ここら辺からなら大丈夫かな?」

二人は階段の近くにある柱に隠れる事にした。

「こういう時定点カメラとかほしぃよね」

二人が小声で話していると、早速何人かが登校して来たが、誰も美和の靴箱に見向きもしない。

「この人達じゃないって事か」



二人は暫く見守った。

が、部活の一団が来た後は誰も来なかった。


また暫くして…


「あ、美和ちんの靴箱に誰か来たよ!」

ここからでは後ろ姿しか見えない。

「でも、何か見覚えがあるかもしれない…」

二人は固唾を飲んで見守った。アヤナはこっそり動画で一部始終を撮っていた。


そうこうしているうちに、その人物が振り返った。あの顔は…

「新井さんだ!」

アヤナが小声で叫んだ。

「行こう!美和ちん」

言うが速いか、アヤナは美和の返事を待たずして走り出した。


「新井さん!」

呼び止めたのはアヤナだった。


新井さんは肩をビクッと震わせる程驚いていた。

「ア、アヤナちゃん…」

「今の見てたよ、どういう事?今までの嫌がらせは新井さんだったの?」

その間に、美和は自分の靴箱へと走った。

「ち、違う!私は何にもしてない!」

「じゃあどうして美和ちんの靴箱で何かゴソゴソしてたの?」

「そ、それは…」

「答えられないの?」

「アヤナちゃん待って。新井さんの言う通りかもしれない」

美和は自分の上履きを持って来てアヤナに見せた。

「見て。今日は何もされてない」

「本当に?」

アヤナは上履きを細かく調べた。

「ほんとに何もされてないみたい、今日はね。でも、それならゴソゴソしてたのは何で?」

「藤枝さんがまた嫌がらせされてるのかと思って。確認してただけよ」

「…それは、思いやりから?好奇心から?」

アヤナは新井を問い詰めた。

「思いやりからよ。好奇心だなんて失礼だわ」

「…ごめん」

アヤナは素直に謝った。

「新井さん、思いやりからならありがとう。この間も机綺麗にしてくれてたもんね」

「じゃあ犯人は誰なんだろう…」

作戦は振り出しに戻った。

「とりあえず、今日はもう教室に行こうか。二人ともありがとう」

美和の言葉に二人は頷いた。


教室に向かう途中、新井さんはずっと黙っていた。

「二人とも、またね。美和ちん、何かあったらすぐ言ってね」

アヤナの教室の方が先に着くので、アヤナを教室まで送り届けた。アヤナは心配そうに何度か振り返りながら。自分の机に鞄を置いた。


「えっと、新井さん、疑って本当にごめんね」

「気にしてない。それより私、犯人探しの邪魔したみたいね」

「あ、それは全然気にしないで。明日にでもまた見張ってみる」

「…多分、もう嫌がらせはおこらないと思う」

「え、それはどういう事?犯人を知ってるの?」

「…多分ね」

それだけ言うと、新井はさっさと自分の机に向かった。


どういう事なんだろう…新井さんが犯人を知っている?

「新井さん、詳しく話聞いてもいい?」

美和は鞄を自分の机に置くと、新井の元へ向かった。

「話す事は無いの。ただ、犯人に何となく覚えがあるってだけ。でも言えないわ」

新井は美和を冷たくあしらった。

その内に他の生徒達が登校して来て、美和はそれ以上聞けず、引き下がる事しか出来なかった。


その日は一日中、新井の言った事が気になって、授業に集中出来なかった。



ーそして放課後


「やっぱり新井さんが犯人なんじゃないのかなー?」

アヤナは腕を組んで考える仕草をした。

「私もちょっとは考えたけど、朝の出来事が本当に思いやりからしてくれた事なら、疑うのは申し訳ないし、犯人を知ってる風だったのは嘘じゃないと思う」

「そっかー。何で新井さんが犯人知ってるんだろうね?そんで何で教えてくれないんだろう?」

「分からない。放課後話を聞こうと思ったんだけど、目を話した隙にサッサと帰っちゃったみたいで聞けなかった」

「うーん…捜査は振り出しに戻ったか」

アヤナは残念そうに言った。

「そうだね…」

「とにかく!新井さんが教えてくれない限り、私達で捜査するしかないよね。頑張ろっ?こんな事する奴絶対に許せないよ」

「うん、ありがとう」

「じゃあまた明日決行ね!」

「うん、明日も早起き大丈夫?」

「だーいじょうぶ!アヤナ、今日は布団入ったら三秒で眠れそう!」

アヤナは自信満々に答えた。



決行は、明日。


次の日も二人は早朝から学校に来て見張りに挑んだが、犯人は捕まえられなかった。

それどころが、昨日以降、美和への嫌がらせはピタリと止んだのだった。

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