第15話 疑う心

 何度も何度もゴーストを退治していくうち、館を一周し切ったのか、ホタルとルキがいた。二人とも上手くいったようで、探知してみても何の表示もない。

「お疲れ様、これで終わり?」

「うん、そうみたい。」

「俺たち二人はもう少しだけ見て回るから、ティーナは先帰っててもいいぞ?」

 窓を見ると夕方だった。元々は二人の任務なんだし、一度私は帰るべきかもしれない。そう思い二人とは逆を向いて私は二歩程、進む。


バンッ!!


「誰だ、お前ら」

 目の前にいるホタルが、血を流して倒れた。そしてもがき、苦しんだあとに徐々に消えていった。するとルキも震え、絶叫しどこかへ消えた。

 いつの間にか一人になった私は、呆然と呟く。

「確かに、探知魔法なのに何の表示もない、のはおかしいもんなぁ…」

 先ほどの魔法は同時展開した光と風魔法の弾丸だ。

 そして私は階段を一気に下がる。二階建て構造だったので一階は地上。こちらも探知魔法を使っても何の表示もない。

「これはこれは。一体どういうつもりなのかな?…さっきとは全く構造が似ているようで違うようなのだけど」

 頭が混乱する。落ち着け、こんなことをしている場合ではない。そう、私はおおよその屋敷の構造は把握していた。一周したらそりゃあわかる。

 だけど、また一階に降りたら構造が変わっている。はてさて、これはどういう意味だ?

 そして、幻術系のゴーストがいるとは。おそらくあの状況で本当に私が帰ろうとしていたのなら…

 ホタルやルキを連れ去る、または私を殺し二人も殺されるところだった。

「…今になってあいつらに感謝だよ」


「前の私ならさっきので死んでたね」

 2年のおかげでブランクもできたけれど、ずっと持っていなかった疑う心が身についた。これがいいことなのか悪いことなのか。私には判断できないけれど…

「早く帰ってキリさんのご飯食べたいなあ…」

 うん、お腹が空いたのは事実だ。さっさと済ませて帰ろう。そういえばさっき夕方だったけどそんなわけないんだよなあ。もうすでに日付は変わってるだろうし、今は明け方といったとこか?

 勝利の夜が待ち遠しいね。

「空間認識魔法…<モノクロ> 」

 白と黒のシンプルなマップだけれど、今はこれがないと厳しい。いくら私といってもカラー地図を永遠と頭で把握し続けたら魔力不足と体力不足で倒れる。その間にパックンチョ。

「まるで建物が生きているようだな…」

 さっきから独り言を言っていたからか、随分頭が落ち着いた。そう、建物が明らかに動いている。部屋の配置、階段の位置。トイレの位置をズラすのは勘弁してほしい。

 自由に組み替えをしてくる…そして移動していない部屋はたった一つ。

「寝室…?」

 一階端の寝室だけはずっと動かない。これは何かある予感だ。それより、愛する兄と親友は生き残っているだろうか…

 まあ、あの猫がいるなら平気かな…なんかあれば王城に連絡がいくだろうし。

「じゃ、そろそろ行きますか。」

 謎解きのお時間です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る