まどの外に少女がいた

@kitamu_2510

第1話 まどの外に少女がいる



まどの外に、やかましい少女がいる。


「ねー開けてよ。お菓子持ってきたんだ〜」


「……」


無視して寝たふりを続行しながら、欠伸をする。

放っておけばそのうちどこかに行くだろう。


「ねえってば〜」






次の日


「あ、ちょうど良かった。開けてよ」


「……」


姉を見送った後、日にあたろうとまどべに行くと、ヤツがいた。

とりあえず無視して寝ころがる。


「昨日からそればっかじゃん。ちょっとぐらい話してくれてもいいと思わない?」


「……」


正直な所、困っていた。

自分はほとんどこの家からでる機会がない。

理由はよく分からないが、姉がでてはいけないと言っていた。

だから姉以外の者とほとんど話したことがないのだ。


「ねえ、ホントは私と話したいんじゃないのぉ?」


心を読んだかのような言葉に、少し驚いた。

その時に僅かに身じろぎしたのがバレてしまったようで、笑い声が聞こえてくる。


「もぉ〜、シャイなんだから〜」


なんかムカついたのでまどから離れてといれに行ってやった。

逃げたわけではない。……と思う。





その日の夜



「ただいまー!」


姉が帰ってきた。

返事をすると、ばっぐを投げ捨てて抱きついてくる。


「あー、もうホントに可愛いすぎるんだからコンチクショー!いつもお留守番ありがとねぇ!」


……何を言っているか分からない時の方が多いものの、しっかり者だ

なにせ、自分の食事を毎日作ってくれるのだ……そこまで美味しくはないけれど。


「あーいい匂い!幸せぇ……」


……ただ、自分が抵抗できないからといって、体のあちこちの匂いを嗅いでくるのは勘弁してほしい。






次の日


「雨が降ってるの!開けてよ!」


なら来なければいいのに、と思うのは間違いではないはずだ。


「……開けられないんだよ」


「あ!喋った!」


「……」


反応がオーバーすぎやしないだろうか?

確かに今までずっと黙ってはいたけれども。


「なんで?なんで開けられないの?」


「……自分は力が弱いし、そもそも開け方が分からない。これは姉しか開けられないんだ」


「なんか話し方変じゃない?」


「……」


「ごめん!ごめんって!」


ちょっと泣きかけたのは内緒だ。






それから、まどべで少しだけお互いの話をした。

彼女は自分より少しだけ年上だった。

弟が四人もいるらしく、今は両親と共に働いているらしい。

その仕事の一環でまちを歩いていた時に、何度かまどべでうたた寝している自分の姿を目撃していたという。

なぜわざわざ声をかけたのか尋ねると、ケロッとした顔で『イケメンだったから』と返された。

……悪い気はしなかった。


「——それじゃあ行くね!」


「うん、頑張って」


「えへへ、ありがと」


そう言って彼女は飛びおりて、走り去っていった。

……よくもまあこんな高い場所から飛び降りれるものだ。






それから数日間、彼女は毎朝やってきた。

仕事前に挨拶をしたいとかなんとかよく分からないことを言っていたから、もしかしたら姉に似ているのかもしれない。


あと、朝早くに来るものだから姉に何度か目撃されてしまった。

でも特に何も言われず、隠れてすまほを向けてくるだけだった。

その後にゆーとぴあ?が云々カンヌンと訳の分からない事を言っていたから、やっぱり彼女と姉は似た者同士なのだろう。






今日も、彼女は挨拶に来た。



「じゃあ行ってくるね!」


「いってらっしゃい。頑張って」


「えへへ」


変わり者な二人に囲まれる生活は、よく分からないが嫌いではなかった。

そうだ、明日は姉にまどを開けてもらおう。

そうすれば、外に出させてはくれないだろうが、自分の朝食をお裾分けすることができるはずだ。

その名案を思いついたとき、なんだかワクワクした。





そして、その日の夜。


姉が、泣きながら大きめのだんぼーるを抱えて帰って来た。

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