第二十三話

 他の女子もたくさんキクイモをったのを確認すると、優希ゆうきさんの指示しじでペンションに戻った。


 ペンションのキッチンにキクイモを置いてリビングに行ってみると、ななみさんが優希さんと健太けんたさんと話をしていた。


 何となく見ていると、話し声が聞こえてきた。

「……というわけで、ななみさん。女子のはんはキクイモを、たくさん採りました。今日の夕食はもちろん、明日の朝食の分もあります」

「ご苦労様くろうさま、優希さん。それじゃあこれから女子の班で、キクイモを料理してくれる? ご飯のおかずになるように、甘辛あまから味付あじつけしてくれる?

 キクイモは今日の夕食と明日の朝食、同じ料理を食べることになるわね。できれば味付けを変えたいけど、まあ、いいわ」


「分かりました」

「で、健太君、男子の班はどうだった?」


 健太さんは、笑顔で答えていた。

「はい。男子の班も大漁たいりょうでした。ニジマスが、たくさんれました。やはり今日の夕食と明日の朝食の分まであります」

「そう、ご苦労様。それじゃあニジマスは、男子の班で料理してくれる? 今日の夕食の分は塩焼しおやきに、明日の朝食の分はみそ煮にしてくれる? キクイモは同じ料理だから、ニジマスだけでも違う料理にしたいの」

「分かりました」


 そうして少しすると優希さんの指示で、女子の班の小学生たちはキクイモの料理を始めた。中学生たちは、食器の準備をしていた。


 三十分後、リビングの大きなテーブルに、ご飯とニジマスの塩焼きとキクイモの甘辛煮がそろった。


 すると、ななみさんが挨拶あいさつをした。皆さん、今日はご苦労様でした。今日は、ケガや事故もありませんでした。明日もこの調子でお願いします。でも、明日も大変たいへんです。この夕食を食べたら、女子、男子の順にお風呂ふろに入って早く寝て、明日にそなえましょう、と。


 そして皆で、「いただきます」をした。皆は一斉いっせいに、夕食を食べ始めた。私も食べ始めた。ニジマスの塩焼きとキクイモの甘辛煮はどっちも美味しくて、私は満足まんぞくした。


 同じテーブルにすわった宗一郎そういちろう翔真しょうまは、自慢じまんしてきた。

「俺は今日ニジマスを、三匹も釣ったんだぜ!」

「僕は四匹、釣ったよ~」


 私は、軽くながした。

「はいはい、そうですか。ご苦労さん~」


 夕食を食べ終えて食器洗しょっきあらいも済ませて、お風呂に入った。パジャマに着替えてリビングに行くと、健太さんと優希さんがいた。健太さんは、男子はペンションの入り口側にある寝室しんしつで寝るように。優希さんは、女子はペンションの奥の寝室で寝るように指示を出していた。私は、奥の寝室に向かった。そこは広い部屋で、大きなベットが二つあった。


 するとゆかいた布団ふとんに入っていた、ななみさんが話しかけてきた。

「あなたは、春花はるかさんね。小学生ね。だったら今日は、ベットで寝てくれる?」

「え? いいんですか?」

「ええ。これは順番なの。一日目は小学生がベットで寝る。二日目は中学生が。そして私たち高校生は三日目にベットで寝るの」

「あ、そうなんですか。それではお言葉に甘えて……」と私は、ベットに入った。


 すると再び、ななみさんが話しかけてきた。

「春花さんって、今年から大海たいかいにきたのよね? どう、れた? 大海に?」

「そうですね、何とか……」

「思い出すなあ。私も小学五年生の時に、大海に入学したの」

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