第10話 マーシャとステイと風鈴

マーシャが「風鈴の本当の力をステイは知っている。ここに異世界への入口があることも知っている。夏の異世界への正式な出入り口は、もうすぐ上がる、夏祭りの花火の光の中だ。天の川の昔話ではないが一年に一度出入りができる。シガの任務期限も,そうだろう。」「はい。その通りです。」僕はマーシャに「ここの異世界の出入り口と花火の光の中の入口は、何が違うんですか?」「何も違わない。同じだ。」「えっ、同じ?じゃ、いつでもこの神社から夏の異世界へ出入りできるんだったら年に1度しかない花火の光の中の入口はいらなくない?」マーシャが「そうだ。我々、異世界人はそうだ。この神社、それに、他の地上にあるどの入口も、異世界人は自由に出入りできる。」「じゃあ、やっぱりあの花火の光の出口は、いらないのでは?」マーシャがギブスの足をさすった。僕は気になることは、すぐ、聞くタイプだ。僕は、まっすぐにマーシャの怖いほど透き通った大きな緑の瞳を見ながら「マーシャお願いです。犯人の元恋人のステイの話をしてくれませんか?何か漠然として何がどうなっているのか、風鈴がなくなったいるのかが、さっぱりわかりません。」マーシャはギブスの足をさすりながら大きなソファに深く座り、話はじめた。「まず、風鈴はステイが持ち去った。彼はさっき話したように、夏の異世界と、この地上の両方を支配したがっている。風鈴の力で彼はまず、夏の異世界を支配するつもりだった。風鈴を奪った時点で成功した。そう、そこのミクを使って。簡単に言うと風鈴は夏の異世界の”心臓”だからな。そしてステイは夏の異世界人を選別し始めた。」「何のために?」「この美しい四つの季節がある地上への移住のために。こうすることによって彼は夏の異世界人の要素も地上の要素も両方、自分自身の好きなところだけ集め形成した新たな世界を作ろうと思っているからだ。」僕はマーシャに「そんな身勝手なことができるはずがない。あなたの元恋人は狂ってる。」「そうだ、その通りだ。しかし、理由がわからないでもない。彼の両親は地上の研究者で友好的な考えだった。しかし、ある一部の夏の異星人の特権階級から、地上を”支配”してはどうか?”私達は優秀だ。あえて異能も何も力を持たない地上人に頭を下げて友好関係を築かなくてもいい。”地上を制圧だ。この流れに当時の夏の異世界人は乗ってしまい、ステイの両親は反対派として抹殺された。ひどい話だ。それからステイは、変わった。たぶん、夏の異世界への復讐。復讐は、憎しみの上書きだ。何も生まない。」シガが「その話は、僕も知っています。僕ら防衛隊所属の標的の中にステイに名前がありました。しかし、今の詳しい事情については、はじめて聞きました。」シガの本当の姿、防衛隊所属の凛々しい隊員に見えた。マーシャが話を続けた。「今この地上には多種多様の生命体が存在しているが、今の段階では、ステイの異能力の方が断然強い。ステイはこの地上を自分が描く世界に変えたいようだ。風鈴の本当の力は時間を止める力もそうだが、もっと具体的に言えば風鈴は結界を使って永遠の変わらない世界、”不老不死の世界”を作ることができる。そんな、終わりのない世界は恐ろしい。そして私のこのケガも6年前に、ステイの計画に反対して、わざとステイからケガさせられたものだ。ヒカル、君がシガと出会ったあの夏小3。ステイはこの神社にいた。そしてリナが君達の前から姿を消した。間違えないか?」僕は「そうです。」しかしなんて、ひどい話だ。元恋人にケガをさせるとは。許せない。僕の真ん中の心が、ざわついた。”マーシャを守りたい”」マーシャはチラリと僕を見た。しまった。頭の中をマーシャにのぞかれた。「ヒカル、ありがとう。」みんなは、突然のマーシャのヒカルありがとうの意味がわからなくて?はっ?と顔を見合わせている。ミクだけがマーシャの顔をチラリ見た。そして僕の手を握り「風鈴奪還頑張ろうね。」ガヤガヤ境内が騒がしい。僕は社の外を見た。朝だ。太陽が東に高い。そこには、たかちゃんたち3人の姿が見えた。ミクが「この境内は、マーシャの力で時間が外の世界と違うの。太陽が東に高いってことは、次の日の朝よ。ヒカルの仲間なんでしょう。」僕は大声で「あー、おーい中島、坂田君。」たかちゃんが「先に行くんだったらメールぐらいしなさいよ。」「ごめん。ごめん。君たちに会わせたい人がいるんだ。」「ミーンミンミンミー」神社のセミの声が響く。


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