幼馴染に好きな人がいると分かった時の対処法

ゆうちゃん

第1話


「あのね、凪斗…私好きな人ができたの…」


それは突然だった。図書委員の仕事終わりの僕塩宮凪斗は幼馴染の高橋泉から話があると放課後の学校の教室に呼び出され、そう告げられたのは…


泉との付き合いは、お互いに生まれた時からでずっと一緒だった。現在の高校生まで….


泉はしっかり者で、勉強もでき、運動神経もそれなりに良く、家事全般もこなす事ができた。欠点が無く、周りから頼られていた。


しかし、たまに見せる天然な行動は普段の泉とのギャップがあり、僕の恋心を成長させていた。


僕が泉に恋したのは、いつからだろうか…幼稚園からだろうか?わからない…わからない内に僕は泉に気付いたら夢中になっていたのだ。


「そっか…」


「……うん//」


教室の窓から見える夕焼けは、とても綺麗ではあったが、切なくも見えた…



「ま〜なんだ…その…頑張れよ?」


「うん…応援ありがとね」


恋する幼馴染は綺麗だった…女性は恋をすると綺麗になると言うのは、聞いた事はあるが、泉の場合は元々備え付けられている綺麗さに、さらに綺麗さが数万倍増してるような気がした…


「………」


「……?」


泉が僕をじっと見やる…その清楚らしい黒い瞳に僕は吸い込まれそうになる……


「どうした? 何かあったか?僕の顔をじっと見ても何も面白い事なんてないぞ?」


「フフ…違うよ いや…凪斗驚かないんだなって思って」


上品に笑うと泉はそう言った。


「そりゃまぁな… 僕達も高校生になるんだし、好きな人が1人や2人いたって不思議じゃないだろ?」


嘘だ…本当はめちゃくちゃ動揺している…


泉に好きな人が出来た? 冗談だろ? 止めてくれよ… せめて僕に恋してくれよ!!何の取り柄もない僕に泉が振り向く事は無いって言う事はわかっている…


わかっているけど、泉が…幼馴染の泉が他の人の者になるなんて、考えられなかった…考えたくもなかった…


「へ〜じゃ〜その考えだと、凪斗も好きな人いるんだ?」


「いや、僕は変わり者だからな〜 好きな人なんて居ないさ 恋に左右なんてされないぜ☆」


「フフ何それ〜」


本当は居るさ… 泉が好きなんだ……


「それで誰なんだよ? 泉の好きな人って?」


「あ…聞いちゃうか〜そうだよね…ここまで言ったんだもんね…聞かない訳にはいかないよね…」


泉の白いほっぺたが赤くなる… 僕の心はギュッと締め付けられる…


恥ずかしさからか、僕から逸らされた目は再び僕を見つめ、泉は意を決したように言う…


「陸上部の赤坂先輩だよ… 凪斗も知ってるでしょ? この間県大会に出て有名になってる筈だから…」



赤坂先輩…知っている。 陸上部のエース的立ち位置で、学校の皆から注目されている先輩だ。


この間、その期待に応え県大会に出場していた…


優勝こそ出来なかったものの、惜しい所まで行っていた。


泉は陸上部のマネージャーをしている為、赤坂先輩と繋がりがあった。


泉の好きな人は、ひょっとしたら僕という淡い期待を抱いていたが、その期待は先程打ち砕かれた…


「じ….実はね…明日その赤坂先輩に告白しようと思ってるんだ!! ま…前から決めてたの…!! 県大会の試合が終われば告白しようって!!」


泉は顔を真っ赤にして言う。


その姿を見ると、自分に振り向く筈がないと分かっていながらも心の何処かで、何で自分じゃ無いんだと想ってしまうが、泉の好きな人に対する純粋な想いを見てしまうと、その僕の想いは綺麗になくなってしまう…


応援したくなってしまうのだ…


「そ…それで凪斗には…もし私が振られた時ように私を慰めてほしいから…きょ…今日呼び出しました…」


泣きたいのはこっちだと思ってしまうが、泉の真っ赤な恋する少女の顔を見ると、その思いもなくなってしまう……


恋愛は時に楽しく、時に切ない…そんなものなんだと、今この時実感させられていた…


「大丈夫だろ…泉なら大丈夫だと思う 泉と赤坂先輩、お似合いだぜ?それに赤坂先輩も泉の事多分好きだと思う」


確証はないが、泉とたまに学校から一緒に帰る際に赤坂先輩に会う事があった。 その時に赤坂先輩は泉を見ていた為、多分好きなんだと思う。多分だけど…


「ほ…本当に!? 嘘じゃない?」


僕の言葉を聞き泉は顔をガバッと上げ、僕に急接近してくる…


その姿はいつものしっかりものの、泉とは違う泉で可愛らしく感じてしまうが、赤坂先輩の事が本当に好きなんだなと実感させられてしまう。


「あぁ嘘じゃない…多分だけどな」


「あ…ありがとう!! 勇気出てきた!! 明日頑張るね!! それじゃ!!」


泉は顔を赤らめたまま、今日最高の笑顔を残して、帰って行った…


明日の泉の告白はきっと成功するだろう…



翌日の夕方、僕の元にメッセージアプリの通知が来る…泉からだ…


成功したらしい… 感謝のメッセージだった…


「……ちっくしょ〜 こんななら、最後、想いだけでも伝えておくんだったな…」


その日の夕方、僕は部屋で泉との想い出を頭の中で振り返りながら、泣いていた…

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