第2話 お便りコーナー2
「なんか終わりそうな雰囲気だけど、まだお便り一通目だからね? 続いていくよー。香川県のうどんレスラーさんから。自分の性別に自信が持てません、性別を変える薬なんてありませんか? だそうです。錬金術を馬鹿にしてるんですかね?」
<コメント>
:言わないであげて
:そりゃ、賢者の石やらエリキシル剤だなんて出てきたら夢見ちゃう
:男から女になったって気持ちの問題じゃないですか?
「質問者は女性の方です。昔から自分が女であることが疑問だった、と」
<コメント>
:性同一性障害かー
:でも実際どうなんですかね?
:できたら面白いよね
「面白いだけで済めばいいですが、作るなら法整備が整ってからですね。それをクリアしないと作っても許可が降りないでしょう。そんで、性転換薬には心当たりがあります。そこら辺をちょっといと弄ればなんかそれっぽいものでも出来るんじゃないですかね? ついでに年齢も若返るので、免許の類も使えなくなります。全てを捨ててでもいい人向けになるそうです」
<コメント>
:可能なの!?
:待って、若返るのまでセットで!?
:それぞれ単品で欲しいですが!
「若返り年数は調整できてないからねー。飲んだら今の年齢の半分になる検証結果がある。これがピッタリ半分なのか、それともたまたま半分だったのか要検証と言ったところだね」
<コメント>
:いきなり半分はえぐい
:60の爺ちゃんが30になるのか
:40代なら二十歳?
:そりゃ免許も何もかも使えんわ
:30代だと10代だぞ!
:土地の権利書も含めて信用切れるかー
「いいことばっかりじゃないので、実装は難しいんですよね。代案はあるのでいずれ安定したら学会で発表します。その時までお待ちください。その頃までには若返り薬の年齢の調整とかもしていきたいですね。ただこっちは命の冒涜につながる禁忌ですので国が許してくれるなら、僕は挑戦したいです」
<コメント>
:急に弱腰になったな
:そりゃ、作ったところでお上が許さなかったらそうよ
:作るアイテムひとつで暴動が起きるなら許可降りないぞ
:それで性別変えた人がどんな暴挙に出るか次第で世に出回らなくなりそう
:全員が全員犯罪に使うわけじゃ……
「ただこれ、実装されたら一個あたり2億くらいかかりそうだけど買ってくれる人いるかなぁ? ちなみにTS薬、若返り薬各々ね」
<コメント>
:そんなお金ないです
:犯罪者なら大金を得るために買いそう
:その前にお上が許さんだろ
:億稼げるのなんて探索者の中でも上澄みの上澄みだけ
:もっと安くなりませんか?
:↑この値段は犯罪者に買わせないための値段だ、気づけ
:あー、なる
「え、違うよ? 普通にSランクモンスターであるフェニックスの素材を大量に投下してるからの値段だから。なお成功率は1%なので、失敗分も足して値段が跳ね上がってる。研究前でこれだからね。なお、これでも希釈してのお値段なので原液なら兆はいくよ。なんもかんもフェニックス素材が高いのが悪い!」
<コメント>
:国家予算越えんな!
:どこから仕入れてきたんですか? そんな素材
「昔懇意にしてた知り合いが海外のダンジョンに遠征してて。白夜極光ってチームなんだけど知ってる?」
<コメント>
:誰それ?
:海外勢って超優秀エリート集団だろ?
:世界のダンジョンは難攻不落らしいし
:ヒントください
:香ばしいネーミングだな
:絶対名前負けしてるぞ、そいつら
「なんだ、あいつら人気ないのかな。ガイウス、キング、トールの三人組なんだけど」
<コメント>
:もしかして、超人ガイウス?
:鉄壁のキングに銃王トール?
:今や個人名が有名になりすぎてる奴らじゃん
:チーム名、そんな香ばしいのか
:厨二病かよ!
「え? まぁそれこそ高校時代からのものだったろうし。僕は一時期そのチームと交渉してたことがあるんだよ。素材くれたら無料で錬金してやるって。ポーションとかいまだに送ってるよ」
<コメント>
:まさかのパトロンだった!?
:パトロンというよりかクラスメイトとか?
「あー、違う違う。あいつらと出会ったのは大学時代だよ。僕は研究に行き詰まっていてね。貧乏で素材をあまり買い付けられなかった。そこで出会ったのがそいつら、白夜極光でさ。向こうはヒーラーなしのタンク、ファイター、ガンナーの超攻撃重視の三人組、生傷が絶えずに薬代が馬鹿みたいになって大変だったから組んだ、それだけだよ」
<コメント>
:鉄壁、昔はそこまで鉄壁じゃなかったんか
:黄金世代の走りだよなぁ、その三人
:待って? ミコト様が関わってたってことは……
:黄金世代を作り上げた男ってコト?
「黄金世代が何かは知らないけど、僕がポーションを作ってたのは大学時代には白夜極光、勤続時代には大手製薬だけだから。白夜極光の頃から週のノルマ1000とかザラだったし、大手製薬ではこんなものでいいのかって拍子抜けしてたよ。それはそうとあいつら無茶し過ぎでさ、まぁいつみても装備に傷をつけてたよ」
<コメント>
:まぁ一度あのポーションの魅力にハマったら
:待って、ミコト様は一度もノーマルポーションだなんて言ってない
:流石にノーマルポーションでしょ
「ノーマルって普通のポーションのこと? だったらノーマル500、ハイ250、エクス250の内訳となるね。素材さえ集めたらお題いらないって言う契約の裏を掻いてきやがったんだ、あいつら。まぁ僕も作ってて楽しかったが」
<コメント>
:傷作ってた原因それだーー!
:エクスポーションとか買えば安くて20万だろ?
:それを250個=5000万大儲け!
:ハイポだって単価1.5万だから250個で375万だぞ?
:ポーションは最安値の1000だろうが、まず間違いなく品質S
:8000×500で400万行ってるのは……
:あれ? この計算でいくとミコト様ぼったくられてません?
「素材だって買えば高いんだぜ? 僕は無償でそれを頂いてる。多少備品の追加もして、代金は全部向こうが持ってくれた。貧乏学生だったからな。向こうの稼ぎでたまにご飯に連れて行ってもらったし、いい思い出」
<コメント>
:搾取の果てにあった栄光か
:黄金世代のカラクリが解けたな
:キング最低
:ガイウスさん、見損ないました!
:虚言乙、キング様がそんなせこい真似するわけないだろ!
:世界の有名人以上にミコト様のヤバさが窺えるな
「虚言も何も、今も付き合いのある友人だよ? 僕は無償で億単位の素材をゲットできてるのは昔そう言うやりとりがあったからだってお話じゃないか。ちなみに向こうは律儀に昔の恩を重く受け止めてくれててね、面倒くさいことこの上ないフェニックス素材の提供でなんとかチャラにすべく動いてくれてるんだ。彼らは僕が欲しい素材をそれこそ命懸けで集めてきてくれるからね」
<コメント>
:このセリフにはミコト様擁護派もダンマリ
:あれ? むしろ搾取されてたのはキング達の方だった?
:つまりどう言うことだってばよ!
:アイテムを金に変えてるかと思ったら、素材取るためにアイテム貰ってた話
:訳がわからないよ
「フェニックスって手癖が悪いことで有名で、出会ったら装備一個盗んで逃げる常習犯。そのくせ殺しても復活して同じことを繰り返すんだそうだ。なお、盗んだ装備は死んだ時に同時に消滅するらしく、それで鳥頭だから同じことを繰り返す。ここまではいい?」
<コメント>
:あっ(察し)
:装備泥棒の巣に飛び込む勇気
:なお蘇生持ち
:もう一回盗めるドン!
:エンドレス泥棒やめろ!
「そんな訳で素材回収するにはそれなりの支援があってようやく達成できるのもあって彼らの熟練度は一般探索者より頭ひとつ抜けてる訳ですねー。僕はそのお手伝いをさせてもらってた訳」
<コメント>
:嘘だぞ、絶対無理難題の素材求めて海外のダンジョン行かせたぞ
:そんなつもりはなかった(すっとぼけ)
「無理は言ってないし、お互い納得しての同盟なのに酷いなぁ」
多少文句を言われることもあったけど、それはそれ。
僕の薬品でいい思いしてるのは事実だからさ。
だから僕の求める素材がうっかり高難易度のものでも、取りに行こうと決めたのは向こうだし。僕は悪くない。
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