死神と、ある婦人

漂うあまなす

第1話 ふと訪れる暗殺者

前書き(初めて書くにあたって)


この世界は、異世界というより架空の世界です。

細かく世界設定を作る能力が無いので

曖昧な雰囲気で捉えて下さい。

第一次世界大戦頃の武器や文明が発達しつつ

まだ通信手段が拙い頃をイメージしています。

この物語は、

とある強権的で社会主義的な国で暗躍している

暗殺者のエピソードを描いていきます。


穏やかな午後。昼食後すぐくらいの時間だった。

見渡せる程の広大な敷地を持つ立派な屋敷と

その庭で2人の男の子が無邪気に遊んでいた。


その様子を微笑ましく見つめている2人の母親、

その屋敷の婦人は、その日の過ごしやすい気候

と息子達の様子にとても満足していた。


その屋敷の主人は不在であった。


いつも忙しく過ごしている人であり、長く不在に

する事もあったが、その日は夜遅くなる前には

帰ってくる予定であった。


主人の父親が成り上がりだからと謙遜しているが

この主人もかなりのやり手であるなと

婦人は分かっている。


親子2代で政府高官を務め、今はある大臣の補佐を

務めている主人は次の機会は自分だと

ほぼ確信を持っているようであった。



それ程裕福な出ではない婦人は、とても慎ましく

穏やかで思いやりがあり、それでいて芯を

曲げない強さも持っていた。


政府高官の妻になる事はとても気の向かない

ことではあったが、強く惚れこまれ

結婚を望まれてこの家庭を持つことになった。


できるだけ社交界から遠ざけてもらい

子ども達も妻の望むように育てられて

主人に愛されていることを常に感じている

婦人は色々なことはあれど毎日が幸せで

充実していたのであった。



その日の午後までは…



ふと視線を感じて振り返ると

そこには全身黒ずくめの上にあらゆる風景に

溶け込めそうな外套を羽織った子柄な者が

立っていた。


細身のその者は女性のようであったが

確かではない。


振り向くまで気配は全くなかった。


親子2代で成り上がり、やはり敵も少ない中で

屋敷周りのセキュリティは用心に用心を重ねて

いて、容易に人が入れるはずはなかったので

婦人は心底驚き、声を上げて人を呼ぶべきだと

思ったが、声を出さなかった。


それが何故なのか自分でも分からなかった。

光の無い黒ずんだ瞳に殺意がなかったからかも

しれない。


少し見つめ、動きが無いことを確認しながら

彼女はその訪問者に尋ねた。


「ようこそお越し頂いて…何かお飲みになります?」


どうやって侵入したのか、何を目的にしているのか

を尋ねようとしたのに、なぜか言葉にする瞬間

それらは無駄なように感じた彼女からは

以外な言葉が発せられた。



「いえ、私は…」

「貴女に2つの選択肢を与えにきただけですので…」


訪問者は静かにそう答えたのだった。


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