第7話 易く流されて

(何でこんなに人がいるんだ…)


アイシャに連れられて決闘場まで来たがなんかくっそ観覧席に人いる…

「アイシャ…何でこんなに人いるんだ…?」

若干震えた声で尋ねる


「まぁみんな誰かが決闘するって聞いて盛り上がってるし今休み時間だから…」


想像してたんと違う


これじゃあ恥さらしじゃないか

「終わった…これからの学校生活…いや…でもそもそも終わってるし今から殺されるから関係ないか…」


「殺される…?」


アイシャが驚いている


「いや俺そもそも剣とか振った事ないから今からあいつに絶対負けるだけどさ…決闘って負けたら死ぬんだろ…?、だから今から俺は殺されに行くってこと…」

これから殺されるのに自分でも恐ろしくなりそうなくらい程淡々とどこか達観した様子で喋る


恐らくもうどうしようもないと諦めてるからだと思う


「…」


「あ、ごめんこんな話して…」


「…」


「…」


「あっ、じゃあ俺もう行くね。今までありがとな」


「待って…」


「ん?」


アイシャが俺の腕を掴む


「行っていいよ」


俺の腕を放す


「…頑張ってね」


「?、ありがと…?」


俺は小走りでフィールドまで降りて行った








「あいつが話題の特待生か!」

「確か0組に入ったんだろ」

「どんな技使うんだろう?」

「0組に入ったぐらいだしやっぱり強いのかな?」

フィールドに降りた瞬間、観覧席が俺の話題で持ちきりになったのが分かった




「やっと来たかユーリ…」

ソロン(オールバック)は俺より先に来ていた


「とっとと始めようぜ」

「…始めようぜってお前剣持ってねぇじゃん…」

「ん?…ああ俺は素手だ」


(ハッ…素手で剣と戦やるとかゴリラかよ)


「んじゃ始めようぜ審判」

「ああそうするか」

審判は先生だ


「では両者、礼!」

(ああ、とうとう始まるのか…)

「位置につけ!」

地面に引いてあった白線まで移動する


「これよりユーリ・グレイス対ソロン・イエルクの試合を始める。両者、用意!」

とりあえず剣を構える

「始め!」

「うっ、うぉぉぉぉお!」


アニメとかの見よう見真似まねで斬り掛かる

もちろんそんな速度は出ないが


「はぁっ!」


ブン!




パシッ


「えっ。」


「は~、こんなもんかよ…雑魚じゃねぇか」


バキッィ


「…」

(剣を…折ら…れ…た…。)

しかも振り下ろした剣を指で受け止めて




「今の剣…3組の奴らより弱いんじゃね」

「あれだったら俺でも…」

「何であんな奴が0組に…」

「裏口入学か?」




「そんなんなら皆が言ってるとおりお前はここにいていい人間じゃねぇ」

「…ッ」

「この学校を汚すんじゃねえよ雑魚が…とっとと」


「死ね」


フッ


(なっ…消え…)


バリバリッ


「ー雷閃らいせん」


ドオォォォン!




紫色の雷が辺りを照らし雷名が響き渡る




そして雷の如く速く重い拳が腹を直撃した


「カハッッ…」


体が数m飛ばされる




「ウッッ…ゲホッ…オエッ…カハッ…ゲホゲホッ」


(痛い…見えなかった…痛い…意識が…とびそう…だ…)


視界が朦朧とする


(殴られたとこの…感覚が…な…)


朦朧としてても気づいた、気づいてしまった、見てしまった


辺り一面が血の海になっていること


そして腹にデカイ風穴が空いていることに


「うっ…うぁぁぁぁ!ゲボッゴホッ…ハァハァ」

(苦しい…痛い…苦しい…何で俺がこんな目に…何で俺がこんなつらい目に…何もしてないのに何で…才能が無いだけなのに何で…)

(クソ…意識が…………もう……もた……な………………い………)




ーーーーードサッ








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー










パチッ


知らない天井


(……………………?ここは…どこだ…?俺は死んだはずじゃ…?)


周りを見渡してみる


ベットがカーテンに囲まれている


(この感じは………………どうやら……保健室………ぽいな…)


カーテンを開けて見るがだれもいない




体を起こしてみる


(………?…………痛くない……)


起こすときに腹が痛むと思ったが全く痛くない


腹を見てみるが完全に傷が治ってる


(何であのけがで生きてるか謎だけど…完治してるってことはまぁまぁ時間が経ってる…のか…?…でも、あのげがだったら治すのに半年位かかるよ…な…?俺は半年間寝たきりだったの…か…?)




ガラッ


誰かが部屋に入ってきた




(まぁ…この人に聞けばいっか…)


「すみませーん…って……先生か…」

「目覚めたのか。意外と早かったな」

「意外とって…どの位俺は寝てたんですか?」

「安心しろ、ちょうど1日寝てただけだぞ」

「えっ1日!?あんなエグいけがが完治してるのに!?」

「ああ1日、ほぼちょうど24時間だ。」

「えぇ…どういうこと…」

「どういうことって…そりゃ…治癒魔法決まってるだろ。自然に治癒させて1日で治る訳がないだろ。」

「ああ、なる…ほど…ね…」

(治癒魔法ってすげぇな…。)


「それにしても…後でアイシャとギルトに感謝しろよ。今お前が生きてるのはあいつらのおかけだからな。」

「ギルト?」

「0組の奴だ。黒髪の…」

「あいつか…(あの根明そうな奴か…)」

「その…ギルト?とアイシャが何やってくれたんですか?」

「まず…お前が腹に穴開けられて気絶して死にかけた時、アイシャが事前にお前にかけた避死魔法が発動し、お前の怪我を急速で治した。だからお前は出血多量で死ななかった」

「避死魔法?」

「死に直結するような一撃を負った時、一度だけその負った怪我を自動で治すという魔法だ。まぁ事前に対象者の体内に自分の魔力を埋め込んどく必要があるし、対象者が気絶しないと発動しなけどな…。」

「………だからあの時呼び止めたのか……」

「ちなみにこの魔法を使えるのはこの王国でアイシャだけだ」

「……すごいな…」


「で、その後傷が治ったお前をソロンが殺そうとしたんだが、ギルトが『気絶してるからもう勝負はついているはずだ!』って邪魔して決闘を強制的に終わらせたって事だ」

「ふーん…」

(あの化け物にケンカ売るって…すごいな…)




「ああそうだ、お前動けるか?」

「?、多分動けますけど…」

「なら、今から校長室に行くぞ。校長と面会だ。」

「!」

「校長から目覚めたら連れてきてくれって言われててな」

「…………分かりました…」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「着いたぞ。ここが校長室だ」




コンコン

先生が木製の厚い扉を叩く


「ユーリ・グレイスをお連れしました」

「そうか、入っていいよ」

「入れ」

「失礼します」


校長室の中には30代位の赤髪の男が座っていた

(こいつが校長か…想像より全然若いな…)


「ああ、悪い。ジルは外してくれると助かる。」

「分かりました。失礼します。」




バタン




「さてと………久しぶりだね」


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