第4話 アンキーア帝国

"四界"


 それがアレスがグレイから教わった戦闘術だ。


 四界には"剣術" "魔術" "格闘術" "気術"の4つがあり、それぞれいかなる状況やどんな相手でも対応できるようにと代々クリフォード家から伝わるものらしい。


 先ほどグレイがオーク相手に一瞬の間に間合いを縮めた技は四界の中の1つ気術である技"瞬刹"。


 気と呼ばれる特殊な波動で足を纏い、相手との距離をなくす技である。


「にいちゃん!あんたすげぇな!」

「うわぁ!?」


 ふぅと息をつくとオッサンが近くに歩み寄りいきなり俺の体をガシッと掴み大きな声でそう告げた。


「あんたあの数のオークをたった一人で倒しちまうなんて、信じられんぜ!」


 オッサンは自分のことのように嬉しそうな顔で言う。


 こんなに言ってくれるなんてやった甲斐があったなとアレスは思う。


「私からもお礼をさせてください。量としては少ないのですが。」


 そう言ってきたのは御者である老けた爺さんだ。

 

「いやいや。そんな結構です。」

「いいえ。受け取ってください。あなたは私たちを救ってくれた命の恩人です。これくらいのことはさせてください」

「そうだぞー。大人しく受け取っとけー。」


 御者の人に続いてオッサンも同じようなことを俺に向けて元気よく言う。


 そこまで言われたら断るのも相手に対して失礼というものだ。

 

 そんなことを思いながら俺は御者が手に持つ革袋を受け取る。


 中には金貨がざっと20枚ほど入っていた。


 「では、もうすぐですしこのまま帝国に向かいましょうか。」


 俺たちはその言葉に従い、馬車に再び乗る。


 いや、本当にこんな量の金貨をもらってよかったんだろうか。



 ――――――――――――――――――――――――――――――――


 

 俺たちは長い旅路を終えてアンキーア帝国に到着する。


 「じゃあここまでだな。」

 

 オッサンたちはオークの群れが森から離れていたこと、そして討伐したことを冒険者ギルドへ報告に行くらしい。


 「ええ。ここまでありがとうございました。」


 「いいってことよ。それに礼を言うのは俺のほうだ。」


 ふぅと深呼吸を行って……。


 「それでは。」


 「ああ。またな。」


 オッサンとは短い間だったが帝国につくまでともに旅をした仲だ。

 少し寂しいような、何とも言えない気持ちが俺の中で渦巻いている。


 だがここで切り替えないともうすぐ学院が始まる。

 気合を入れていかないとな。


 そんなことを考えながらしばらく帝国内を歩いているとなにやら香ばしい匂いが俺の鼻孔をくすぐる。


 気になって匂いがするほうを見てみると"食事処"と書かれた看板がある店を見つけた。


 ここにつくまで長かったからな。なにか食べよう。


 金も先ほどたくさんもらったしな。


 俺は空腹を抑えながらに店に立ち寄るのだった。

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