第2話 旅路
リーデル帝国学院に入学すると決心してから一週間が経った。
俺は出かける支度をしてすぐに森の外にでた。
どうやら入学式の始まりが推薦状を渡された日の三週間後、つまりあと二週間しかない。あのバカ親父はなぜ早く渡さなかったんだろうか。
まあこんなことを言いながら実際はグレイには感謝してるし、不自由な体でも俺のことをここまで育ててくれたという事実には頭が上がらない。
ちなみに今は帝国に行くため、馬車を使っている。結構揺れて気持ち悪い。
「なぁにいちゃん。あんたもしかしてリーデル帝国学院の新入生かい?この時期にその年代で帝国に向かうやつらは決まってそうだからな」
そばに座っている30代ぐらいの男が俺に話しかけてくる。
見た目からして帝国周辺を拠点とするために遠くから来た冒険者なのだろうか。革製の鎧にひどく使い古された濃い緑色のマントをまとい、大人一人ぐらいの巨大な大剣をもっている。
「まぁ……一応学院の新入生ですね……」
「おお!やはりか!学院に行くってことはあんた実力もそうとうなもんなんだろう」
「それなりには……」
「そんな謙遜すんなって!」
ガハハと大きな笑い声を男はだす。なんだろう。どことなくグレイに雰囲気が似ているような……。
そんなことをアレスは思いながらガタガタと揺れる馬車の中で男の世間話に長い間付き合わされるのだった。
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「そのとき颯爽と現れた男が手に持っていた酒瓶を酔っ払いに投げ…………ってうわ!なんだぁ!」
男の話に二時間ほど付き合わされているといきなり馬車が急停止した。
男と俺は立ち上がり御者に何が起こったか尋ねる。
「オ、オークです!道のど真ん中にオークの群れがいるんですよ!」
「オークだぁ!?4級相当の魔物じゃねえか!なんでそんな奴がこんなとこにいるんだよ」
男はそう言いながらそばに置いてあった大剣を手に取り、馬車から降りる。
「おい。どこいくんだ」
「きまってんだろ、倒しに行くんだよ。オークを。大丈夫だこれでも何度か倒したことはある」
男はオークの群れの中に突っ込んでいく。
はっきり言って無茶にもほどがある。あの数のオークを倒すためには帝国の騎士団か、三級以上の冒険者じゃないと難しいだろう。
それほどの相手をたった一人で相手するなんて自ら死にに行くようなもんだ。
だが……
「おい。なにしてる」
「わかんないのか。俺も一緒に相手してやるって言ってんだよ。オッサン」
「オッサンって……ていうかお前じゃ無理だ!この規模のオークの群れだと二級指定まで及ぶんだぞ」
おれはオッサンの忠告を無視し、オークの群れに向かう。
「さあて。一週間ぶりの魔物狩りだ。せいぜい楽しませてくれよ」
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