第九話 Go to hell! You devil called Ubilfeint! 2

 いってぇ折れるかと思ったわ。

 あれれ?可笑しいな。俺はペルセポネにステータス関係のメーターMAXにしてもらったはずなんだけどな。

 まさか、ほら吹かれてそのままの状態で転生してしまったのか?くそ、これじゃあ前世の俺より断然的に弱いよ。

  

 そして俺はもう、そんな希望も何も事を諦めて進んだ。

 そのついでに、試しに一応足が早くなっているかも知れないから、走ってみようと思い立った。

 そして俺は誰にも負けない心意気のつもりで全力で走り出した。草木を掻き分け、腕を動かし、歩みを大きくした。

 しかし、恐らくだがスピード【俊敏力】のステイタスは、恐らく俺の前世の1.5倍は遅くなったであろうとも言えるぐらいには劣化の一途を辿っていた。

 つまり、そんなぐらいには遅い。

 明らかに完全なる実力を出しきれていない。

 これに関しては、もしかしたら現実世界で、しばらく運動をサボってたから前よりも退化してしまったのかも知れない。


「はあ、はあ、はあ、遅くなってんじゃねーか。心なしが体力も落ちてるし。はあぁぁぁぁ、もう帰りたい。」

 そんな時とある気配がした。

 静かな森から草木が音を立て、木の葉を踏む足音が聞こえる。これは何者かがコチラに向かって走って来てる事を指していた。

 いったい誰だ?そもそもそれは人間なのか?森だから動物の可能性が高いな。

 そして、しばらく経った頃その正体を知る事になった。


「ちょっとそこお願いー、ほんとにどいて、どいてー.....。そこ邪魔だよー。」


 森から出て来たのは可憐な少女だった。紫の髪に、緑色の眼をしていて、その様子は正に可憐と言っても差し支えの無い様な感じだ。


「うわー!!」


 そして、そんな可憐な少女は、俺に目掛けて突っ込んでいく。

 俺は超回避能力(仮)を使って、避けようも無いので普通にぶつかった。体当たりされたので普通に押されて転んだ。そして、文句の一つでも言おうとしたが、ぶつかった張本人は涙目で見ていた。


「いてて、何だ、何だ?急にそんなに焦って.....いったいどうした?というか人?人だ!!よし、第一村人発見。」


「あわあわあわわわわわ、ちょっ、うししろろしろ」


「うん?後ろだと?後ろに何が.....」


 彼女は何故か震え、怯え、泣いている。

 この様子だと何かに怯えて、かなり怖がっている様子だ。

 それはまるで、とてつも無い力を持つ、何者かに追われているかの様に。

 やはりこの子はとても華美で、その様はとても可愛い。とてもその様子が【可憐】だ。


「え?う、後ろ?後ろにいったい何があるんだよ。」


 俺はそう言い放ちながらそっと、少し恐怖しながらその指差す後ろの方を見た。すると明らかに邪悪そうなオーラを放つ化け物ががすごい気迫で、コチラを見ていた。これは誰がどう見てもかなりの化け物だし、明らかに敵っぽい見た目だ。

 これには心底、度肝雨抜かれた。



「何だよ、何だよ、さっきから色々と急展開すぎるだろ。つーか見た目こぇーな。」


 クッソ、何だコイツ。

 魔族みたいな見た目だけど誰だよ。最初の敵にしては普通に強そうだ。スライムとか比にならないくらいには。

 実を言うと、内心クソみたいにびびっていた。しかし、転生したと言う事で、そんな自分を押し殺して、俺は無駄とも言える勇気をここで出した。


「お、おい、何だよお前!!なんか知らんけど急に現れやがって。この女の子に何かようか?この子お前を見て怯えてるだろうが。まずは何がしたいかきちんと要件を言え。それが、社会のビジネスマナーだろうが。」


 すると邪悪なオーラを放つ奴は瞳をギラつかせて額にシワを作り言った。


「その女は罪だ.....だから.....コロス」


「は、罪?なにいってんだ?」


「ああ、そうだ、罪だ。ソイツは罪人であり、その女は悪魔だ。悪魔の名の下で生まれた愚かな子だ。紫の髪。紫の瞳。それが悪魔の子だという十分な証拠だ。」


 顎に手を置きながら偉そうにそう語る。


「何だよ.....何だよそれ、それがこの子が悪魔だっていう何の根拠に何だよ.....」


「俺が聞いた、古きからのとある、言い伝えがある。まあ、それが俺が信じる根拠だ。言えば、それ以上もそれ以下も無い。」


「違う!!私は、悪魔の子なんかじゃ無い‼︎。」


 そう叫んだのはさっきぶつかった紫の髪の子だった。


「私は唯の人間だよ!!。普通の女の子だよ!!。人間の母親から生まれた普通の人間だ。普通に生活していただけの、唯の真人間だ。お願い.....信じてよー!!私、何もしてない。」


 彼女は自身の潔白を訴える。だが、それは最早無駄に近しい行為だったのだろう。


「はん、これはまたうるさい小娘だ。」


 潔白を訴える言葉は、コイツには何一つ響いてなどいなかったのだ。

 こんなの余計に黙っているわけにはいかない。目の前で無実であろう少女がいる。しかし、俺にはどちらが本当の事を言ってるのかがわからない。

 もしかしたら、この悪魔の言うとおりでこの少女が悪魔の子であり、それを今狩りに来たぞという状況だったのかもしれない。

 或いは、この少女の言うとおり、悪魔の子では無く、ただの人間であろうに、不幸にも襲われている可憐な存在であるか。

 どちらかなんだ。

 お前はどう思っているんだ。そう、お前だよ?俺に聞いているのだ。この状況に直面して、正直面食らって、やれやれしている様なお前だよ。

 どうするんだ?どう動いてくんだ?

 お前がこの場に突っ立っていたらこの状況は覆る事など起こり得ない。お前が、ボーッとしている限り何も決まらないんだ。

 この先起こりうる事、この先起こり得ない事。此処で良くも悪くも分岐することになる。

 まあ、此処はよく考えてくれよ。

 本当の自分を思い出してくれよ。

 ただ、判断は俺自身に全て任せる。委ねる。だから俺は俺のしたい通り動けば良い。ただそれだけなんだからな。陰ながら見守ってるぜ。俺。


 自問自答。そう思えたが、まるで知らない自分と話している様な感じだった。まるで知らない人格がある様に。

 だが、答えさせてもらう。

 俺は俺のやり方で行く。俺の思うままにやらせてもらう。俺の自由にやらせてもらう。ただ、それだけの事なんだ。

 俺は一歩前進し、力を込める。と、同時に一つ。人間としての覚悟も決める。


「おい、ちょっと、あんた。」


「あん?」


「聞いててさ、この感じ、この子が悪魔じゃ無いと嘘をついてるなんて俺は全く思わないけど。それって、もしかして、お前の唯の幻想、もしくはお前の恥ずかしい勘違いじゃねーのか?」


「ふん、また、こやつも面倒くさい奴だ。人間風情の、糞餓鬼の分際で。ふ、じゃあお前には、ほんとうの真実を教えてやろう。実を言うと、俺の真の目的は悪魔退治なんて胡散臭いものじゃ無い。」


「何だと!!じゃあ、一体、何のために....」

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