第2話 7/24 結託・決意


──気がついたのは翌日の朝、病院だった──


結衣「…あ、先輩…よかった…目が覚めた…」


俺「…結衣ちゃん…」


そこには1年生マネージャーの結衣ちゃんの姿


結衣「奈緒先輩っ、おとうさん、おかあさんっ、先輩気が付きました。わたし、先生呼んできますね」


両親と、奈緒の姿があった。


奈緒「…先輩っ…よかったっ…ぐすっ…ぐすんっ…」


俺「…奈緒ちゃん…」


母「…おはよう!気が付いた?? 急に出ていったと思ったら、事故にあったって連絡あって…本当に心配したんだからね」


俺「…母さん…」


父「…太陽、気がついたか!よかった… 覚えてるか? お前は車とぶつかったんだ…」


俺「…父さん……車と?…」


父「…そうだ! だか、まぁ、幸い、ケガも大したものではなくてよかった。事故の処理だの、そういう面倒事はこっちでやっておくから、お前はゆっくり休みなさい…」


俺「…そっか…わるぃね…ありがとう…」


結衣が呼びに行った医師が戻る


医師「おはようございます。えっと、小林太陽くんだね? 気分はどうですかー?」


医師は聴診をしながら、俺の気分をうかがう


俺「…あ、まあ、よくはないですけど、なんとか…」


医者「うん! 受け答えもしっかりできてるし、問題なさそうだね。 頭少し切ってるから、もう少し様子見るけど、入院はしなくて大丈夫でしょう! ここのベットは今日は終日使ってもらって大丈夫だから、夕方まで休んでもらって、大丈夫そうだったら、そのまま退院なさってください。


俺「わかりました。ありがとうございます」


一同安堵する


医師、看護師さんは、なにかあったら声かけてくださいと。病室を後にする。

連れられて、父母も、それじゃ先に帰ってるね、また後でねと、病室を後にしていった。


俺「────彩────?────」

俺「奈緒ちゃんっ!!彩はっ??!」


奈緒「──先輩、すみません──」

奈緒「──彩先輩とはまだ連絡取れてません─」


俺「──そっか…──彩…──」


結衣「……あのっ!先輩っ……ぐすっ……ぅっ……ぅぁぁっ……わぁぁぁぁっ…………」


俺「なになになになに??どうしたの??汗」


結衣は俺を呼びかけ、急に泣き崩れた…


奈緒「結衣ちゃん、ちゃんと自分で言わなきゃダメだよ」


結衣がちゃんと話ができるよう、肩を叩いたりとフォローに入る奈緒─


結衣「…ぇぐっ…ぐずっ…わだ…ぐすっ…せい…なんでずっ…」


俺「───え─?───」


結衣「…あゃ…ぜんぱいがっ…あぶなぃ…っ…べにっ…ばって…ぐすっ…るの…わた…じのっ…


───なんだって?───


俺「──え─?…どういう──?」


結衣「…ごべんなざぃっ…ごべっ…うぁぁっ…」


結衣は泣き崩れながらも、一生懸命、全部説明しようとしてくれた…


彩の投稿内容は自分が投稿したものなのだと…

その上で、「相談がある」と、その日時に彩を呼び出したこと…

全部自分がやったと…

それが、「キング」の結衣に対する命令だったのだと…

サイトの掟で、従うしかなかったのだと…



奈緒「──で、昨日夜、命令された通り、彩先輩を21時に〇〇公園に呼び出した─

でも、その後、複数の人に囲まれる先輩を見て、どうしようもなく怖くなり、わたしに泣き付いてきた── って事でいいんだよね?」


結衣「……ばぃっ…ごべん…なざぃ…っ……ぅぅっ……ぅぁぁぁぁーーーーっっ」


俺「────そっか────」


俺「─正直に話してくれて、ありがとう──」


俺「─でも俺はキミを許せない─」


結衣「…ぅぅっ…」


奈緒「…先輩…」


俺「理由はどうあれ、キミは彩を危険な目に遭わせた─ そして、それは今も続いてしまっているのかもしれない。」


結衣「…ぅっ…ぅっ…」


俺「俺は彩を助けたい。その上で、2度と、同じような辛い出来事が起きないように… 動きたい。

キミが彩に申し訳ない気持ちを持ってるなら、

俺に協力してほしい。

そして、2度と同じ事はしないと… 約束してほしい─」


結衣「…ぐすっ…っはびっ…わがりばしたっ」


奈緒「先輩…、結衣ちゃん…、よかった! もちろん、わたしも協力しますからねっ」


俺「奈緒ちゃん、ありがとう!」


〇〇「すっかり出るタイミングを逃しちまったが、俺も協力するぜ!」


俺「健人!」


健人も元バスケ部 俺と彩と同じクラス3A─


健人「どこの誰だか知らないが、彩ちゃんを危険な目に合わせやがって… 例の掲示板がらみか… 一筋縄ではいかないだろうが…

もう女の子の涙は見たくねーからな!」


俺「健人ー、ありがとな!!」



スマホに着信が入る─



俺「──彩…? ─彩からだっ!!」


一同騒つく…


俺「!もしもしっ! 彩? 」


彩「…太陽くん…っ…」


俺「彩! 大丈夫かっ! やっと繋がった…

今どこにいる??」


彩「…うん、さっき帰ってこれたよ…やっと… 今自分の部屋だょ…」


─さっき…?


俺「彩、ごめん。彩が辛い時なにもしてあげれなかった… ごめん…」


彩「…ううん… 太陽くんっ… あのね… わたしねっ… わたしっ… ぅぅっ…… ぅぁぁぁっ…」


─彩─


彩は電話越しに泣き崩れた…


─────


奈緒「先輩、彩先輩は…」


俺「…ああ、とりあえず、もう家には帰ってこれたみたいだ…」


健人「大丈夫だったのか?」


俺「…いや、ちゃんとは聞けなかったけど…。」


奈緒「…そんな…っ…」


結衣「…ぅぅっ…ごべんなざぃっ…こべんなさぃっ…」


健人「クソがっ…許せねーな…」


俺「──俺、病院出たら、彩のとこ行ってくるよ。話せるかわからないけど…」


奈緒「わたしも…─」


健人「─いや、ここは太陽1人のほうがいいかもな。大勢で押しかけても、彩ちゃん辛いだろ。」


奈緒「─そう…ですね。わかりました。それじゃ、太陽先輩、よろしくお願いしますっ」


太陽「ああ! ごめんな、奈緒ちゃん。次、一緒に行けそうだったら来てな。」


奈緒「はいっ。わかりました!」


太陽「─そうだ、奈緒ちゃん、お願いしたい事があるわ!」


奈緒「はいっ!なんでしょう??」


太陽「例のサイトの事で知ってる限りの事教えて。 どこから入るのかとか、サイト内の内容、なんかサイト内の掟みたいなのもあるみたいだから、そのへんもできるだけ詳しく。」


健人「あー、それ俺も聞いておきたいやつだな。俺にも頼むわ。」


奈緒「わかりました! ちょっと自分の中でも再確認しておきたい部分もあるので、今日戻ってから、お2人にメールする形でいいですか?」


太陽「うん、それで大丈夫だよ。頼むね。」


結衣「わたしも、できる限りの事、お伝えします。」


太陽「ああ! ありがとう! 結衣ちゃんも頼むね」


─────


その後、健人、奈緒、結衣の3人は各々のタイミングで病室を後にする

俺も予定通り、夕方に病院を後にし、彩の家に向かった─


俺「(彩に会えたとしてー、どんな言葉をかけたらいいー? どんな顔して会えばー)」


道中、いろいろ考えながら向かうも、結局、考えはまとまり切らないまま、彩の家に着き、電話をかける─


俺「──彩?──大丈夫?──」


彩「─太陽くん…電話ありがとう…─」


俺「今、彩の家の前来てるんだけど…、少し話せる?」


彩「…来てくれたんだ… ありがとう… ごめんね。心配かけて…」


彩「…でも、ごめん、ちょっと… 顔腫れたりとかあって… 泣いたりもしちゃったから、ボロボロでっ… こんな顔じゃ、会えないっ…

ごめんっ… 今日は1人にしてくれないかな…? ごめんっ… 近いうち… 私のほうから、会いに行くからっ…」



─俺は、どうしてやる事もできなかった─

─結局、彩とは会えずに帰路に着く─

─怒りが込み上げる─

─彩の内容の投稿を命じたキングとかいうやつに─

─何もしてやれない自分に─

─その掲示板そのものに─


帰り道、奈緒からメールが入る

俺と健人あてに例の掲示板の詳細だ

細かく全容を伝えてくれている

ありがとう奈緒ちゃん─



─どうして彩がこんな目に遭わなきゃならなかった?

サイト管理者、キング、俺はお前らを絶対に許さない。

お前らのやってる事は犯罪だ。

お前ら別々の人間か?

同一人物なのか? それすら、今の俺にはわからない…

だが、お前らの悪事もここまでだ。

俺が必ず、お前らの正体を突き止め、警察に突き出してやる。それでこんな掲示板もこの世から抹消してやるからな。

首を洗って待ってろ─


─高3の夏、これといった目標のなかった俺はやらなきゃいけない事ができた─




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