第8話

 「明日。近くのショッピングモールで一緒に遊びませんか?。」

 まさかソフィアからそんな提案がされるとは思ってもみなかった。

自分から何かをすることはこれまでなかったので正直嬉しかった。

 だから僕もそれに答えなくてはならない。

どんな服を着ていけば良いだろうか?。

ワンピース系?。

オフショルダーな服もいいな。

 (蟷ク縺帙↓縺ェ縺」縺ヲ縺?>縺ョ?。)

 あえて子供っぽく?。

楽しみで仕方ない。

 (譛ャ蠖薙↓?。)


 そしてデート当日。

まあデートって言っても差し支えないでしょう。

僕の服装は無地の白いシャツに、前を開けたパーカー。フリルが三層も重なったミニスカート。調子に乗って白いニーソとガーターベルトも履いてしまった。

恥ずい。

 ソフィアが来た。

一言で言えば大人っぽい服装。

ロングスカートが背の高さをより際立たせる。

 「綺麗…。」

 「そうですか…?。」

 思わずこぼれてしまった。

少し照れくさそうにしている。

それもまた可愛らしい。


 家から電車で片道30分のところにある大きなショッピングモール。

建物と駐車場が一体となったもので、見た目は結構デカい。

そのため中のテナントも多く。

1日いるだけのお店は存在している。

おそらく調べてくれたのだろう。

僕はそれが嬉しかった。


 2人でいろいろと回った。

猫カフェ。

 「にゃー。」

 「ユイにはよくよってくるのにどうして私だけ。」

 「あはは…。にゃー?。」

 「うっ…。」

 (縺薙s縺ェ莠九@縺ヲ縺ヲ縺?>縺ョ?。)


 ゲームエリアで2人でゲームしたり。

 「なんで僕に負けたのか次までに考えてくださいね?。」

 「くふぅ。次行きましょう。」

 「ふふふ。」

 (繝ヲ繧、縺ョ霄ォ菴薙r螂ェ縺」縺ヲ縺翫>縺ヲ?。)


 服屋でファッションショーしたり。

 「これはどうですか?。」

 「こっちが似合うと思うなぁ。」

 「かわいいです。」

 「ちょっと子供っぽくないですか?。」

 (縺ェ繧薙〒縺ゅ↑縺溘′蟷ク縺帙↓逕溘″縺ヲ縺?k縺ョ?。)

 だから忘れていたのかもしれない。

 (縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒。)

 僕がどうしてここにいるのかを。





 ユイが倒れた。

 (なんで。)

 突然だった。

 (どうして。)

 楽しそうにしてたから。

 (こんな事今までなかったのに。)

 まだまだ回れてないところがある。

いっぱい遊んで2人で思い出づくりしたかったのに。

 (私のせいだ。)

 手を引いていたら突然。

 (私がわがまま言ったから。)

 倒れた。

糸の切れた人形ように、プツリと。

 (私のせいだ。)

 私は春樹にメッセージで短文を送って、ユイを抱き抱えて長椅子で横にして安静にさせた。

 (私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。)

 こんな緊急事態なのに冷静にいられる自分が怖い。

昨日まで元気にしてたし。今日だって張り切って着飾ったいたのに。

なのになんで。

 (どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう。)


「大丈夫か?。」


 顔をあげた。

黒い髪に、青い瞳。

春樹だ。

私は春樹に泣きついた。

 「私が。私のせいでユイが。ユイが。」

 「わかったから落ち着いて。」

 私はユイをほっぽりだして必死に謝罪をした。

他にもっとやることがあったのに。


 ユイの妹の乃亜とユイの母親が車で迎えに来ていた。

乃亜は静かに怒っていた。それはそうだ。

この前はあんなことがあったばかりだから余計に。

母親は私を慰めるように私を抱きしめた。


 家に送り届ける車の中。

運転席には母親。

助手席には乃亜。

運転席後方には私。

その隣にユイ

そして反対側に春樹がいた。

……。

 「ごめんなさい。」

 「本当ですよ。大事に至らなかったからよかったようなものを。お姉様は…。」

 「乃亜。」

 春樹に制止させられたが、乃亜の怒りは最もだ。

「任せてください。」と自信満々に言って引き受けたのにこんな事態にさせてしまったのだから。

……。

私がユイを連れ出したから。

……。

 「ソフィア…。」

 「いえ、いいんです。私のせいですから…。」

 「そうじゃない。」

 どうしてそこで春樹が否定するのか分からなかった。

 「それもあるけど。あぁあっ。ユイを楽しませてくれてありがとう。」

 「えっ……。」

 分からない。どうして私がそこでお礼を言われるの?。

 「なんでですか?。」

 「それは…。」

 「話してもいいんじゃない?。」

 母親に言われて、「それもそうか。」と春樹がユイの昔話を始めた。



―――――――――――――――――――――


 それはユイの実母が5歳の時に亡くなって、その数ヶ月後に春樹達がユイと同じ家族になったところから始まった。

 その頃のユイは母親が亡くなった影響でしばし体調を崩してよく寝込んでいたらしい。

春樹は当初この再婚に乗り気ではなかったみたい。

でも長く触れ合っていくうちに次第に本当の妹のように大切にしていた。

ユイも大きくなるにつれて体調も良くなって。

一緒に出かけることも増えたという。

 ユイの体調が安定しだした頃。

ちょうど小学五年生ぐらいの頃。

その時の体調はすこぶるよく、運動会に出れるくらいには元気だった。

けれど。

 玉入れ競技の最終結果。

ユイのチームが勝ち。それは大はしゃぎするくらいには喜んでいた矢先のことだった。

ユイが突然倒れた。

今日と同じように。

春樹たちもてっきり元気になったのだから今日も大丈夫なのだろうと思っていたみたい。

私のように。

 それから1週間くらいはベッド生活の日々。

春樹は後悔していた。

もっと良くやれたのではないかと。

どうして守れなかったのかと。


―――――――――――――――――――――



 家に着いて春樹がユイを部屋のベッドまで運んだ。

私はただ見守るしかなかった。

何もできない自分が悔しかった。

 「少ししたら目を覚まさすと思う。だから起きて文句言われないようにご飯でも作っておいてくれ。」

 悲しそうな顔でこちらを見る。

 「はい。」

 今はただそうするしかなかった。


 春樹を玄関まで見送る。

 「こんなことを言うのもなんだけど。ユイを頼む。」 

 深々と頭を下げる。

 「できません。」

 「ソフィア…。」

 だって私は。

 「そう思うなら任せられる。」

 「なんで!?。」

 分からない。どうしてそれで任せられるの?。

 「俺がやるとどうしても鳥かごにユイを押し込めてしまう。過保護ってやつだな。本当に情けない。」

 軽く笑って誤魔化してるけど、顔には後悔でいっぱいいっぱいになっている。

 「俺じゃどうしてもユイを楽しそうに。幸せそうにすることができない。」

 目線は後悔を示している。

終わらない後悔を。

 「あいつは周りに祝福を振りまくくせに、自分に対しては呪ったように生きている。俺はそれがどうしても嫌だったんだ。」

 だから私に願いを。

 「だからあいつを幸せにしてやってくれ。」

 「できません。」

 「それでもいい。」

 「なんで…。」

 どうしてなの?。

 「それがきっと一番大切だと思うから。」

 「えっ…?。」 

 「そう思い続けることがきっと…。」

 それがユイが苦しまずにすむと春樹は考えている。

けれど私はそれが分からなかった。


 春樹たちが帰ってからすぐ。

ユイが目覚めた。

 「あ…。あぁ…。そうか…。そうか…。」

 まるで動作を確認するように手足を動かす。

 「ソフィア…?。」

 私は泣いて抱きついた。

近くにいることが嬉しかった。




――――――




 僕はどうやらまた倒れたらしい。

どうしてわかるかって?。

僕が“今いる”のは星々が流れる天の川の川沿いを走る銀河鉄道。その客車に僕そっくりな長髪のセーラー服の少女と一緒にいるからだ。

 「また落ちたの。」

 「そうみたい。」

 「相変わらずね。受けいたらこんな事無くなるのに。」

 「そうもいかないよ。」

 そうこの身体は本来僕が居ていいとこじゃないから。

 「それは言い訳よ。」

 「そうかな…?。」

 「そうだよ。」

 こういうことが起こるとよく彼女からお説教をうける。

まるでお母さんのように。

 「でももう時間ね。」

 「えっ…。」

 「帰りを待ってる人がいるのでしょ。なら帰って無事を知らせないとね。」

 視界が白い霧に包まれる。


 知ってる天井だ。

それもそうか。僕の部屋なんだから。

目覚め早々僕は、機械の動作確認のように手足を動かした。

するとソフィアが。待っていたのだろう。

泣いて抱きついてきた。

心配をかけてしまった。

自分が情けない。

 「ごめんなさい。私のせいで。」

 違う。君のせいじゃない。 

 「ソフィアのせいじゃないよ。」

 「違う。私のせいなの。」

 こうなるとソフィアは話を聞かない。

 「だから。なんでもするから。」

 なんでもするって。

僕はソフィアを押し倒す。

 「本当になんでもするの?。」

 僕はそのままソフィアを見つめる。

 「えぇ。」

 目は決意を示していた。

 「なら。」

 僕はそのままソフィアにキスをした。

 「後悔しないでね。」

 ソフィアに倒れ込んで僕はソフィアの耳元で囁いた。

意識が遠のく…。

これでいいよね……。

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