忘れられた庭園

@poyupin

第1話 美生と少女

「今日も見つからなかったなあ...」


私には家族がいない。

正確には私が物心つく頃には両親、祖父母ともにいなくなっていた。

理由は今でもわからない。

今までは兄とずっと一緒に暮らしてきたが、その兄も最近姿を消した。

学校終わり、私が探していたのは兄ではない。

どこかに落としてきた【私の大切なもの】。

それを探すのが私の日常だった。


すっかり日が暮れて、雨の降る中、私は独り家に帰る。

その道中一人で歩く小さな女の子を見つけた。

私は少し悩んだ末に声をかけた。


「一人でどうしたの?お父さんとお母さんは?」


少女はこちらを向き答える。


「探してるの。でも見つからないの。」


さすがに一人にはしておけなかったので、私は探すのを手伝うことにした。


「お父さんお母さんとはどこではぐれたの?探すの手伝うよ。」


「違うの。私が探してるのは【私の大切なもの】なの。」


私は少女の答えに一瞬戸惑ったが、すぐに冷静になって聞いた。


「大切なものって何?落としたの?」


「お姉ちゃんが探しているのと同じもの。」


私は流石に驚きを隠せなかった。

この少女は私と同じ。

あるかもわからないものを探して一人で彷徨っていたのだ。


気になった私は思わず聞き返した。


「私と同じって...あなたは【私の大切なもの】を知っているの?」


「知らない。でもきっと同じもの。」


なぜ少女は私が【私の大切なもの】を探しているのを知っているのか、聞きたいことは他にも色々あったが、時間も時間なので、私は少女に言った。


「早く帰らないとお父さんお母さんが心配するよ?送っていくから。」


「いないよ。」


「えっ?」


「パパもママもいない。」


少女は続ける。


「私はずっと独り。だから私が探さなきゃいけないの。」


「お姉ちゃんも同じでしょ?」


「わ、私は... !?」


私が動揺している間に少女の姿は消えいた。

まるで最初からいなかったかのように。

ただ雨の音だけが私の耳に届いた。









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