第34話 限定品を作るよ

 エリス魔導鎧工房の机に向き合う私ことエリスは、ローナ限定品の構想を練っています。

 なぜそんな事をしているかといいますと、マリィから新しい特産品が欲しいとお願いされたからですね。


「ローナならではの追加装備が、良いですね」

「衛兵隊のアレはどうかな? ブーンドドドドって連発する奴!」


 一緒になって考えてくれていたイレイザさんが、提案してくれますが、アレはちょっと大型すぎますね。

 衛兵隊の装備であるスーパーニクス自体が通常の魔導鎧の五割増の大きさなので、その武装であるラピッドアームキャノンも大型なのです。


「アレは少し大きすぎますね」

「じゃあじゃあ、小さくできない?」


 小さくですか。

 機械槍程度の弾薬にすれば可能かもしれません。


 先程まで作っていたアームキャノンの砲弾と、在庫として保管してある機械槍の弾薬を並べてみます。


 その差は倍ほどなので、機構を小型化すればやれなくもないでしょう。


 でも……。


「小型化してしまうと、火力は極端に落ちてしまいますね」

「あんな威力がなくても良くない? 弾倉を替えなくて済むだけで、十分だと思うよ」


 なるほど、盲点です。


 確かにイレイザさんの言う通り、建物を吹き飛ばす様な火力が求められる場面は少ないですね。


 そういった時は、火砲を用意します。


「ちょっと、作ってみましょうか」

「ええ!?」


 イレイザさんがドン引きしたような顔で見つめてくるのは気になりますが。


 私はラピッドアームキャノンの構成部品より、一回り小型の部品を引っ張り出して仮組みしていきます。


 外装も高レベル戦士のパワーで工具を使えば、不格好ではありますが武器と呼べる体裁のものが、すぐに完成しました。


 私はこの連装機械槍とでも言うべきものを担ぎ、工房内に備えられた射撃スペースへ移動します。


 射撃スペースと言っても、分厚い鋼板で作られた壁の前に土のうを積んだだけの一角なのですが、まあ、弾が貫通しなければ何でも良いのです。


「エリスちゃん、そんな急造品を使っても大丈夫なの?」

「ご安心を。暴発しても工房の壁は頑丈に作ってありますから、大丈夫ですよ」

「工房より人間の心配をして!?」


 連装機械槍を構える私にイレイザさんが何かを言っていますが、機構の回転するキュイーンという快音で、よく聞き取れません。


「良し、発射です!」

「待ってぇ!? 変な音がなってるよぉ!?」


 キュキュンギュルヴィと叫び声を上げる武器のトリガーを引いた途端に、私の持っていた試作装備は大爆発。


 工務用魔導鎧に大ダメージを与えて吹き飛びました。

 ヒドいです……。


「あうう、失敗です」

「あーあ、言わんこっちゃないよぉ……」


 工房の天井は吹き飛んで、髪の毛もボサボサになっています。


 工房の入口にあるドアがガチャガチャいってます。

ドアノブを回している人がいるみたいです。


 しばらくしてガチャガチャ言わなくなったドアは、蹴っ飛ばされて吹き飛んできました!?


「へぶ!?」


「イレイザさん!?」


 飛んできたドアはイレイザさんに直撃。


 鼻血を出した彼女は、ひっくり返ってしまいました。


「大丈夫!? そこの怪我人は……イレイザね! 『回復の奇跡』! オマケにちょっとケガをしてるエリスにも『回復の奇跡』!」

「ありがとうございます。マリアさん」

「もうっ! あんまり事故は起こさないようにね!」


 ドアを破ってきた下手人は、マリアさんでした。


 彼女は鼻血を流してひっくり返っているイレイザさんに飛びつくと、手を光らせて回復してくれます。


 マリアさんが傷つけたんですけどね!


 でも、私に対しても回復してくれるので、文句は言わないでおきます。


 マリアさんは鼻血を拭ったイレイザさんを休憩用のベッドまで運ぶのをに手伝ってくれました。彼女は最近ちょっと太り気味なので助かります。

 律儀なマリアさんは蹴破ったドアを態々ガタガタと立てかけてから、帰って行きました。

 一人残された私は重い工務用魔導鎧を脱ぎ捨ててインナー姿になり、ドアの修繕のために工具を探しつつ思いました。


 物が散乱している工房内で、工具を探すのは手間が、かかりそうです……。

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