52.不幸な友人
休日の午後、街をぶらぶら歩いていたら友人の田中に会った。
表情が暗く、肩を落とした様子が痛々しい。
「どうしたんだ、落ち込んでるようだな」
「ああ、
「お前に紹介されたときは、そんなことするような子には見えなかったけどなあ。あ、そうだ。これ」
俺は鞄の中から田中の両腕を取り出した。
「さっき拾ってさ。手首のロレックス、見覚えあったから。ちょうど出会えてよかったよ」
「助かった。やっぱり腕がないと不便でね。肩ごと落としてしまったからどうしようと思ったよ」
田中は器用に自分の腕をくっつけて、俺の手を握った。
「やっぱり持つべきものは良き友だな。今から飲まないか。奢るぜ」
田中の誘いに少し考える。靖子の浮気相手というのは俺で、腕のことも靖子から電話で聞いたのだが、そこらへんはバレていないらしい。
俺は笑顔で答えた。
「喜んでつきあうよ。男同士、気兼ねなく飲もう」
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