にゃんだふる〜子猫♀に転生した僕は、クールで美人なお姉さんに拾われる

二宮まーや

第1話 子猫ちゃん

 


「きゅるる.......ううっ、お腹空いたよ.......」



 現在僕は深夜のガヤガヤとした街を徘徊している。僕が街を徘徊している目的は、人間達が捨てたゴミを漁って食べ物を探す事だ。野良猫の世界は非常に世知辛い.......


 雨が降る中、湿ったダンボールに入ってた僕.......中には少しばかりの食べ物や水が入って居ましたが、僕が寝ている間にカラスや他の野良猫達に全て盗まれてしまった。


(これから先、どうすれば良いのだろう.......)


 僕は普通の猫とは少し違う。何故なら、僕には人間だった頃の記憶が残っているのだ。前世では僕の名前は有原一輝ありはらかずき、9歳の男の子で虚弱体質だった。と言っても長生き出来なかったので、人生経験はほぼ無いに等しい。


 更に僕は難病を患っており、生涯をほとんど病院のベッドの上で過ごすだけの日常でした。僕にはやりたい事や夢があったけど、結局何も出来ないまま夢は夢で終わってしまった。自由と言う言葉にどれだけ憧れを抱いたことやら。


「にゃーん.......」


 僕は病院で人生の幕を閉じたと思えば、次に目を覚ましたら、何と白い子猫に生まれ変わってしまったのだ。何故僕は猫へと転生してしまったのか全くの謎です。


 ラノベであれば、異世界へ転生し神様からチートを授かって、心躍る様な冒険をして圧倒的な力で敵を屠ると言うのが王道な展開ですが、現実はそんなに甘くはありません。


 今の僕の身体は脆弱な子猫.......常に死と隣り合わせの運命です。まあ、不幸中の中の幸い.......唯一良かったと思える様な事は、自由に身体が動く事くらいかな。自由と言っても身体は赤ちゃん同然だ。身体は直ぐに疲れるし目もやっと見える様になったばかり。


「キシャアアア!!」

「ヒィッ.......!?」


 僕はいつの間にか、他の野良猫さん達の縄張りに足を踏み入れてしまったらしい。子猫に生まれ変わってから早3週間.......未だに身体の自由がまともに効かない中、猫社会の厳しさを嫌という程思い知った。


(ぐすんっ.......何か食べ物を僕に恵んで下さい.......)


 僕は威嚇する野良猫に背を向けて全力で走った。


「はぁ.......はぁ.......」


 こうなれば、何処かの飲食店に入りご飯を盗むしかないか.......いや、早まっては駄目だ。窃盗はいくら何でも犯罪に当たる。あ、でも今の僕は猫だからセーフなのか? いや、それでも駄目だ!


「にゃお.......」


 幸い季節は夏、外が暖かいのが唯一の救いでした。本当は昼間に徘徊して、どなたか心優しい人に擦り寄ってお情けを貰うのが賢明かなとも思ったけど、昼間はカラスや車に他の野良猫と言った天敵が等が沢山居る。身体も直ぐに疲れて動けなくなるし、日中はコソコソと隠れるしか無い。


(あ、あれは.......!? Gか!)


 途方にくれながら歩いていると前方にGが何匹が居たのです! でも、流石にGを食べるのは物凄く抵抗感がありますが、今の僕に取って重要なタンパク源の1つ。本当は生後1ヶ月とかならミルクを飲むのが一番良いのだろうけど、そんな豪華なミルク等到底飲める筈が無い。贅沢は言ってられぬ!


(やるしか無い.......生きる為にはあいつを何としても喰らう!)


 子猫は音を立てずに、ゴミ箱の近くに潜むゴキブリにこっそりと近付いた。


「にゃーお!」

「カサカサ.......」

「うっ.......何と言う速さだ!?」


 あぁ.......逃げられてしまった。しかし、本当にやばいな.......空腹で今にも倒れそうだ。水で誤魔化すのもそろそろ限界がある。


「くんくん.......むむ!? こ、この匂いは焼き魚か!?」


 僕は匂いに釣られながらトコトコと歩いた先には、人間達が笑いながらビアガーデンして盛り上がっていたのだった。夏の風物詩の1つと言えばビアガーデン.......これはご飯にありつけるチャンスかもしれない。地面にお零れが落ちてる可能性があるやもしれぬ!


「――――――♪」

「くっ、やはり人間の声は分からないか」


 猫になってから、僕は人間の言語が全く分からなくなってしまった。ご飯を下さいと言っても、相手には恐らく僕の言葉は通じて無いだろう。


「――――――♪」

「――――――!!」


 正直、あの集団の中へと1歩を踏み出すのにかなりの勇気が居る。頭では人間にも良い人は沢山居ると分かっていても、身体が恐怖で震える。まるで産まれたての小鹿の様に僕の身体はプルプルと震えていた。


(勇気を出すんだ! ここで逃げたら僕は本当に死んでしまう!)


 子猫は震える身体に鞭を打って、人間達の集団に意を決して近付いた。


「あ、あの! その焼き魚を少し.......僕にも恵んで下さいませんか?」

「――――――?」

「―――――――――♡」

「――――――!?」


 ふぁっ.......な、何ですか!? 何で皆さん僕の周りに集まるの!? ううっ.......怖いよぉ。


「――――――♡」


 人が続々と集まって来ました。そして皆さん目が怖いです! 僕は反射的に毛を逆さに立てて思わず威嚇してしまいました。


「..............」

「にゃお!?」


 な、何だ!? 何か女性社員の輪の中から、リーダーぽい人が近づい来て、何と僕を抱きあげようとして来たのです!


「――――――?」

「は、はわわっ.......!?」


 思わず見とれてしまいました。長くて清潔感ある綺麗な黒髪、キリッとした目に整った顔、容姿端麗で出る所はしっかりと出たモデルさんみたいなお人だ。そこら辺のアイドルや女優が霞むくらいにこの女性の容姿は美しい。


「や、やめて.......触らないで!」

「..............」

「え、何でそんな悲しそうな顔をするのです?」


 むむっ.......これはこっちに来いと言う事なのか? ふむ、どのみち今の僕には選択肢は残されておらぬ。どうせ野垂れ死ぬくらいなら、このお姉さんに身体を委ねて見るのも良いのかもしれない。


「お姉さん、ご飯下さい.......」

「―――――――――♪」


 僕はお姉さんに抱かれながらこの場を後にしました。

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