8.第2日 恐怖のエアコン

 ボクたちアホバカ夫婦は明洞ミョンドンの第二日目を迎えました。


 第一日目はここまで書きましたようにドタバタの連続でした。このため、アホバカ妻もボクも第一日目の夜は早めに寝たのです。


 さて、二日目の早朝(というか3時ごろでしたので未明というべきでしょうか)、ボクは部屋が寒いので目が覚めてしまいました。大昔に吉永小百合さんと「和田弘とマヒナスターズ」が歌って大ヒットした『寒い朝』という歌がありましたが、まさに部屋の中がその『寒い朝』状態だったのです(古い!!!)。


 実は昨日、ホテルにチェックインして部屋に初めて入った時、部屋がギンギンに冷えていました。部屋のエアコンの温度設定装置はリモコンではなく、壁に埋め込みになっているパネルタイプでしたので、ボクは壁際に行って設定温度を確認したのです。すると、エアコンの設定が18℃になっていました。ちなみに、エアコンの温度設定パネルの表記は韓国語や英語ではなく日本語でした。


 18℃では寒いはずです。それで、ボクはアホバカ妻に断って、エアコンの設定温度を26℃に上げたのです。アホバカ妻は暑いのが苦手なのですが、ボクは暑いのが大好きなので、日本にいるときにはいつもエアコンの設定を26℃ぐらいにしているのです。アホバカ妻もそれをよく知っているので、ボクが「エアコンの設定温度を26℃にするよ」と言っても、特に反対はしませんでした。


 そして、昨日の夜は、エアコンの設定温度は変えずに26℃のままにして、エアコンをつけた状態でボクたちは寝たのです。


 だから、二日目の未明に目覚めたとき、室温は26℃近辺になっていたはずなのですが・・・それにしては寒いのです。ボクたちはいつも部屋の明かりを全部消して眠ります。ボクはあまりに寒いのでエアコンのパネルの表示を確認したかったのですが、そうするためには部屋の明かりをつけないといけません。しかし、明かりをつけると、アホバカ妻を起こしてしまいますので、ボクはそのまま布団をかぶって寝ようとしました。しかし、あまりに寒くて・・・結局その後は朝までよく眠れませんでした。


 朝になってアホバカ妻も起きてきましたので、ボクがそのことを話すと、アホバカ妻も「実は私も寒くて夜中に目が覚めてしまい、朝まで眠れなかった」と言うではありませんか。


 あわてて、壁に埋め込みになっているエアコンの設定温度を見ると、なんとまた18℃になっていたのです。


 昨日チェックインしたときにエアコンを26℃に設定したのに、なぜ再び18℃になってるの?・・・


 ボクの頭の中は『疑問符クエスチョンマーク』で一杯だったのですが、その時はあまり深く考えずに、設定温度をまた26℃に上げて、ボクたちは二日目の観光に出かけたのでした。


 さて、後で述べますように、二日目は明洞ミョンドンの近くの徳寿宮トクスグン南大門ナンデムン市場、新世界百貨店などを巡って、また夕方にホテルに戻ってきました。


 その時、また部屋がギンギンに冷えていたのです。


 エアコンの設定温度を見ると、また18℃になっていました。


 この時は「きっと掃除のおばさんが、サービスのつもりで室温を18℃に設定し直したのだろう」と思い、ボクはまたもや設定温度を26℃にして、アホバカ妻と二日目の夕食に出かけたのです。


 そして夕食後、明洞ミョンドンを散策し、ホテルに戻ってきたのですが、また部屋がギンギンに冷えていたのです。あわててエアコンの設定温度を見ると、なんとまたもや設定温度が18℃になっているではありませんか!


 26℃に設定したのに、なんでいつも18℃になってるの?・・・


 ボクの頭の中の『疑問符クエスチョンマーク』は増えるばかりです。


 さすがに今は夜ですので、掃除のおばさんが再度ボクたちの部屋を訪れて、部屋の温度設定を18℃にしたとは思えませんでした。こうなると、エアコンの設定温度が勝手に26℃から18℃に変わったとしか考えられません。


 近況ノートの写真は、壁に埋め込みになっているエアコンの設定パネルです。近況ノートのURLはこちらです。

 https://kakuyomu.jp/users/azuki-takuan/news/16817330661205314424


 ボクは首をかしげながら、再びエアコンの設定温度を26℃に上げました。このため、しばらくすると室温は27℃まで上昇したのです。しかし、近況ノートの写真の設定温度を見てください。設定温度がいつの間にか再び26℃から18℃になっているではありませんか!


 あまりに不思議なので、思わず写真を撮ったという次第です。


 幽霊の仕業・・・まさかそんなことはありませんよね?


 まあ、幽霊ではないとして、ボクも考えてみました(笑)。


 ボクは化学プラントの設計を本業にしていますので、温度コントロールの設計方法もある程度は理解しているつもりです。設計者の観点で言うと、一旦設定温度を26℃に上げても、ある時間が経過すると再び18℃に設定し直すという温度コントロールは充分に可能なのです。


 しかし、そういう温度コントロールが可能だとしても・・・ホテルはなぜいつも室温が18℃になるようなコントロールを採用しているのでしょうか? 6月とはいえ18℃はあまりに寒いのです。


 つまり、一定の時間が経過すると設定温度をいつも18℃にするというエアコンの温度コントロールは理論上は可能ではあっても、18℃はあまりに寒すぎるため、そうする理由が全く見当たらないのです。


 ひょっとしたら、暑いより寒い方がよっぽどいいだろうとホテルの人が考えて、そういうから、エアコンがいつも18℃になるように調整されているのでしょうか? 


 あるいは、韓国の人は寒いのが好きなのでしょうか? しかし、ボクは前記しましたように、仕事で3年間韓国に単身赴任していましたが、韓国の人が寒いのを好むといった話は聞いたことがありません。


 すると、単純にエアコンが壊れているだけなのでしょうか?・・・しかし、今どき、エアコンがこんなに簡単に壊れてしまうものなのでしょうか?・・・また、ホテルのエアコンは重要な部品ですので、どのホテルでも作動を頻繁にチェックしているはずです。頻繁に作動チェックをしているのに、このエアコンがいつも18℃になるということが分からなかったのでしょうか?


 いったいどうなっているの?・・・ボクたちの頭は混乱しました。こうして、アホバカ夫婦は頭を抱えてしまったのです。


 今は夜中です。ボクたちはフロントに事情を話して、エアコンを調べてもらえば原因が分かるだろうとは思いましたが・・・いくら日本語が通じるホテルだといっても、こんな訳の分からない状況を夜中に電話で説明するのは非常に大変です。それに電話で状況を説明した後で、ホテルの人に部屋に来てもらって、エアコンを調べてもらって・・・といったことをしていたら、徹夜になってしまいそうです。


 そのため、ボクたちは結局フロントへの問い合わせはしませんでした。その代わりに、それからエアコンをOFFにすることにしたのです。


 こういったことが起こったときには、フロントに話をするのが本筋だと思います。しかし、前記のように状況説明が非常に難しかったことと、エアコンをOFFにしてもなんとか過ごせたことから、ボクたちはフロントに話をするよりエアコンをOFFにする方法を選んだのでした。しかし、このときがまだ6月で助かりました。これが盛夏だったら、とてもエアコンなしでは対処できなかったでしょう。


 それでも、エアコンを必ずOFFにすることにしたので、以降は部屋の温度設定に悩まされることは無くなりました。しかし、このときの謎である『なぜ、温度設定がいつも18℃になるのか・・・』はいまだに未解決で、今もボクの頭の中に謎のままで残っているのです。


 皆様もお気を付けください。


 こういったことは日本の国内旅行ではちょっと考えられないと思うのですが・・・第一日目の金浦キンポ空港からの謎のリムジンバスやら、この恐怖のエアコンやら・・・どうも外国にはこういった謎が一杯のようです。

 

 で、余談ですが、本当にあった信じられないようなボクの体験を最後に一つご紹介したいと思います。


 仕事である国に行きました。ホテルにチェックインすると、ボクの部屋は6階でした。で、それから、ボクは部屋に荷物を置いて仕事に出かけました。そして、夕方にホテルに帰ってきたのですが・・・ボクは1階からエレベーターに乗って仰天したのです。


 エレベーターには行先階のボタンがついていましたが、5階の次が7階になっていて、なんとボクの部屋があるはずの6階のボタンがどこにもないのです。


 ボクはフロントでもらったカードキーを確認しました。間違いなくボクの部屋は6階です。というか、チェックインしたときに、ボクは間違いなくエレベーターで6階の部屋に上がって荷物を置いているのです。


 そんなバカな? チェックインしたときにはエレベーターに6階のボタンが間違いなくあったのに、どうして今はエレベーターに6階のボタンがないの?・・・ボクの頭が真っ白になりました。


 でも、これは考えていても仕方がありません。ボクはエレベーターを出ると、1階のフロントに行って片言の英語で事情を話したのです。


 すると、理由が分かりました。


 それはこういう話でした・・・


 そのホテルはもともと旧館があって、その後、新館を旧館とフロアを繋げる形で増設したらしいのです。しかし、新館と旧館の建っている場所の高低差から、新館は階を一つ減らさなければならなかったのです。


 そこで、新館は6階を造らずに、5階の次を7階として、旧館と5階同士、7階同士を繋いだらしいのです。このため、旧館の6階だけは新館と繋がらない構造になりました。こうして、旧館のエレベーターには6階があるのですが、新館のエレベーターには6階がないということになってしまったのです。


 しかし、チェックインしたときには、こんな話は全く聞いていません。また、新館のエレベーターの行先階表示部には、そういった説明の張り紙もありませんでした。当然ですが、ボクはそんなことは何も知らないわけです。こうして、何にも知らないボクは間違って新館のエレベーターに乗ってしまい、一生懸命に、あるはずのない6階のボタンを探していたというわけです。


 日本だったらホテルにチェックインしたときに、新館には6階が存在しないことについての説明が必ずあるはずですが・・・外国ではこんな当たり前の説明もないということが現実に起こりうるのです。


 ボクたちが泊まった明洞ミョンドンのホテルの恐怖のエアコンも、この新館のエレベーターのように、理由が分かれば何でもないことだとは思うのですが・・・でも、いまだに謎なのです。やっぱり、あのエアコンは幽霊の仕業だったのでしょうか?


 


 

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