昨今珍しくもないダメ人間が異世界ファンタジーで無双するそうです。

スパニッシュオクラ

第1話 トオボエ

むせ返る位薄暗く淀んだ雲。


無造作に積まれた廃車の山に登り──亜子神タモツは高らかに叫ぶ。


「今日明日未来ッ、家無し職無し一文ナシッ、好きな物はカッコいいもの嫌いなモノはカッコ良くないもの、腹は鳴るけど俺は鳴かない挫けないッ」。


高い物を見るとどうしても登りたくなるのが男の性というもので、何故か満足そうに口角はあがった。


遮るものが何一つない無い空をぼっと見上げてると、ポツポツと降り出した雨が一滴頬を伝る。


鼻の奥をつつくような機械油と腐葉土の匂いがそこかしこからして、出来るだけ口で呼吸しようと奮闘したけど2日位前に無駄だと辞めた。


今ではひんやりと冷たいボンネットももうすぐ寝れないくらい熱くなるのだろう。

そんな季節の変わり目を肌で感じながらまた薄っすらと溜息を吐く。


ゴミ溜め、スクラップ置き場、元より名など無い、敢えて言うなら《クソみたいな場所ファッキンプレイス》略してクソって所か、世界に終末があるとしたらきっとこんなだ。

巷では荒廃都市ダストシエルなんて呼ばれ方をしているようで、響きが気に入ったのでそう呼ぶことにする。

ここ、基『荒廃都市ダストシエル』はゴミ捨て場である。周辺国家の行き場の無くなった廃棄物が投棄され積み上がった結果1つの街のようなものが形成される。貴族社会の重税で街から追いやられた者や罪を犯して国から弾かれた者がそこに居着くようになると、いつしかそこには街とは名ばかりの居住地域が出来た。


殺人、強盗、薬に殺人、犯罪乱発雨あられ、茶飯事超えて濃茶飯事、治安のちの字も無い。良く言えばスチームパンク、悪く言うならいくらでも、このどうしようもない現実から目を逸らしたくなるのもまた事実でただ溜息を吐く。でも不満は吐かない、先に述べたようカッコ悪い事が嫌いだから。

僕らはみんな人生の主役だ、そんなことを言うやつがどっかにいた。生まれてこの方十四年、否が応でも理解した、これはそういう物語なのだと。


「ハイッ!!今日も一緒にぃぃぃ────」


天高らかに



「───死ねッ!!!」。


情けなくも世界の野郎に罵詈雑言を喰らわせてやった。


そう───情けなくも。

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