プロローグ最終回 ハーレムはすぐそこに…
千影のお姉さんの
千恵美さんは40近いらしいが、とても若々しい。美魔女以上の表現を考えたところ、“女神”が最適だと判断した。
さすがにそれを本人に伝えるのは恥ずかしいので、オレの心の中に留めよう。
一方の麻美ちゃんは、26歳のカワイ子ちゃんだ。俯いたり逸らしたりして真正面から顔を観るのが難しいが、それでも可愛い。
彼女と仲良くなるのは、これからに期待しよう。
もう1人、大学生の
「よく来てくれたわね」
玄関で靴を脱いで上がった千恵美さん達に対し、千影が言う。
「あなたが千恵美さんですか~」
オレは女神の手を握る。…スベスベでいつまでも握っていたい。
「千影のお姉さんなのは聴いていますが、歳を感じさせない美しさですね」
ありのままの本心を伝える。ごまかす必要がないからな。
「あら、お上手ね」
微笑む千恵美さん。
しかもノリが良い。完璧だ~!!
…って、このまま彼女と話してるとオレの印象が悪いか。
「2人のこともちゃんと聴いてるぜ。“クー”と麻美ちゃんだね?」
「“クー”?」
首をかしげる倉式隼人。
「名前、倉式って言うんだろ? ピッタリじゃねーか」
ペットのように可愛がってやるよ。気が向いたらな。
「麻美ちゃんは大人しい子と聴いてるから、手を握るのは止めておくよ。本当は握りたいけどな」
オレの仲良くしたいアピール、通じると良いが。
「……」
麻美ちゃんは表情を変えない。
こういう子って確か、『ダウナー系』だったか? 人見知りかもしれないし、焦らず距離を縮めよう。
「健司! おしゃべりは後にしてよ!」
イライラした様子の千影。
玄関でいつまでも話していたら、そうなるか…。
「わかってるって。…千恵美さん、リビングまでお連れしましょう」
オレは彼女の手を引いて、リビングに向かう。
「なんか、若い頃を思い出しちゃうわ」
満更でもない様子の千恵美さん。
「何を言いますか~。千恵美さんはまだまだ若いですよ」
「…本当に面白いわね」
彼女はクスッと笑った。
リビングに着き、オレと千恵美さんはダイニングテーブルに向かい合うように座る。
「ここまで遠路はるばるお疲れ様です。運転は千恵美さんが?」
「そうよ。麻美ちゃんは免許持ってないし、隼人君は大学生だから」
麻美ちゃんは免許持ってないのか。彼女の好感度が上がったら、ドライブに誘えそうだな。もちろん、千恵美さんを誘うのもアリだ。
……千影達もリビングに来た。
「健司! 向こう行って!」
千影がソファーを指差す。
テーブルは4人掛けだが、オレ達は5人いる。客人1人離すのは不自然だし、こうなるのは当然だろう。
「仕方ねーな。…それでは千恵美さん、また後で」
オレはソファーに移動し、仰向けで寝っ転がる。
体勢までは指定されてないからな。楽にさせてもらうぜ。
「ワタシは…、姉さんの横に座ろうかな」
宣言通り、千影は千恵美さんの横に座った。
その後…、クーは千影の前・麻美ちゃんは千恵美さんの前に座る。
「さて、これでゆっくり話ができるわね。姉さん達」
「オレがいることも忘れないでくれよ~、千影」
1人ポツンといるからな。
「健司、口挟まないでくれる?」
これ以上怒らせたくないし、黙っておくか。
「改めて…、よく来てくれたわね」
千影がクーと麻美ちゃんの顔を見ながら言う。
「俺はほぼ関係ない立場なのに、お邪魔してすみません…」
ふ~ん、ちゃんと謝れるのか。プライドは高くないようだ。
「何言ってるの。君は歳の割にしっかりしてるし、2人とは違った形で関わるかもしれないから、無関係じゃないと思うわよ」
違った形というのは社交辞令だと思うが、千影のやつ、クーのことが気に入ったのか?
「千影~。オレ自己紹介してねーんだけど、スルーすんの?」
千恵美さんと麻美ちゃんにしたいんだよ。
「あんたのことなんて、3人共興味ないと思うけど?」
「ひどくね? いくらオレでも傷付いちゃうぜ~」
長い間一緒過ごしてるから、千影のツッコミに磨きがかかっているな。
オレのふざけ・ボケも、その分パワーアップしているが。
「俺は…、あるんですけど」
意外にも、クーが最初に口を開く。
お前は良いんだよ! 千恵美さんと麻美ちゃんに興味を持ってもらいたいの!
「あたしもある」
千恵美さんがオレに興味を持ってくれた…。ヤバい、感動して泣きそう。
「……」
麻美ちゃんは本当にないのね…。
「麻美ちゃんに興味を持ってもらえるように、少し話しますか~」
話の内容次第では、興味を持ってくれるだろ。
オレは座っている千影の隣に立ち、彼女の肩に手を置く。
「オレは三島健司。千影とはタメになる」
「え!?」
「嘘でしょ!?」
2人とも、オーバーリアクション過ぎだろ!
「そんなに驚くところか? 歳言っただけだぜ?」
「あんたがバカだから、ワタシより年下だと思われたのよ」
「マジ? 若く見られてるな~、オレ」
白髪増えてるし、気になってたんだよ…。
「はぁ…」
千影がため息をつく。
オレから自己紹介したいと言ったが、あの事をさっさと伝えておこう。
「わりーけど、仕事のことは訊かないでくれ。仕事とプライベートは、きっちり分けてるんだ。千影みたいにな」
大体、仕事のことなんて話しても面白くない。そのストレスを晴らすために、プライベートでは思いっ切り羽を伸ばしているのだ。
「ということは、サウちゃんの動画を観たことあるんですか?」
クーに訊かれる。
「千影がVTuberになって間もない時はある。動画を観るのはオレの性に合わないから、さっさとリタイアしたが」
あの時は『これの何が面白いんだ?』と思ったが、軌道に乗ってる今はどうだろうな? 気にならんこともないが、やはり観る気にならない…。
「三島君。忘れる前に君に言っておきたいことがあるの」
真剣な顔をした千恵美さんがオレを観る。
今はふざけるべきじゃないな…。真面目モードになるか。
「…何でしょう?」
「あなたの軽い性格についてどうこう言うつもりはないけど、千影を悲しませたら絶対に許さないから!!」
なんだ、そんな事か。千影はバカなオレに初めてを捧げた大切な女だ。千恵美さんに言われるまでもない。
それにしても、長年会ってなかった妹をそこまで心配できるとは…。やはり千恵美さんは女神だ! オレの目に狂いはなかったな。
「御心配には及びません。いくらオレでも、浮気なんてしませんよ。あれは最低でクズの奴がすることですから」
「そう…。忠告はしたからね」
「胸に刻んでおきますよ、千恵美さん」
千恵美さんの好感度UPと千影のお機嫌取りは、同時進行すべきってことか。
「健司の話はとりあえずここまでにしましょうか。本題に入れないし」
さすが千影だ。話を打ち切るタイミングが良い。
「オレの出番は終わりだな。んじゃ、退散するわ~」
一瞬とはいえ真面目モードになったから、肩に力が入っちまった。
またのんびり、ソファーで寝っ転がるか。
「ワタシがオーナーをしているアパートは、ここから4件隣なの。これから一緒に観に行きましょうか」
千影が椅子から立ち上がる。
「そうね」
千恵美さんも立った後、麻美ちゃん・クーと続く。
アパートの件に、オレはまったく関与してないからな。千影達が戻ってくるまで、このまま過ごそう。
しばらくすると千恵美さんとクーだけがリビングに戻ってきて、テーブルの椅子に座った。今は空いてるし、千恵美さんと話すチャンスだ。すぐ彼女の前に座る。
「千影と麻美ちゃんは?」
「配信部屋を案内するそうよ」
「ふ~ん」
配信部屋のことも全然知らんからな。話が膨らませることができない…。
気が利いた話題を考えていたところ…。
「三島君と千影が知り合ったきっかけって何?」
千恵美さんが訊いてきた。
「気になりますか?」
オレ達に興味を持ってくれるのは好都合だ。
「なるわね」
「では、千恵美さんのリクエストに応えましょう…」
その後、千恵美さんとクーの前で出会ったきっかけを話すオレ。プロローグ①で触れたから、今回は省略するぜ。
話し終わった後、配信部屋から千影と麻美ちゃんが戻ってきた。再び邪魔者になったオレは、ソファーに退散する。
全員揃った後、千影が「ピザでもデリバリーする?」と言ってきた。小腹がすく時間だからな。うまく気を利かせたようだ。
そんな中、千恵美さんも金を少し出してくれることになった。馴れ初めを聴いた礼だと言う。
あまりの気前の良さに、つい「女神だ~!」と言ってしまったんだが、千恵美さんは受け入れたように見えた。器がデカい証拠だな。
ピザを待つ間、オレは千恵美さんにこの家で住むことを勧めた。
千恵美さんと麻美ちゃんは『
何故援助してもらえるかというと、婚活や就活する資金として活用するためだ。
無一文が再出発するために、住む場所と金が提供されるみたいだな。
もし何もできなければ、当然のことながら追い出される。それを踏まえて行動することになるのは、言うまでもない…。
千恵美さんの婚活が上手くいかなかった場合、千影のアパートに住んでこの家の家事手伝いをやる予定らしいが、そうすると家賃がかかってしまう。
だからここで住むことを勧めている。それに、千恵美さんが同居してくれれば会える頻度が激増する。千恵美さんにとってもオレにとっても、良い話になるのだ。
この誘いに対し彼女は「ごめん、まだそこまで考えてない」と言った。
可能性が残っている以上、希望はある。諦めちゃいけないな。
ピザを食べ終わった後、千恵美さん達は帰っていった。車で一時間半ぐらいかかるらしいし、早めに帰るのは当然の流れだ。
リビングで千影と2人きりになった後、オレ達は軽いHをした。麻美ちゃんのおっぱいで、少しムラムラしていたからだ。
千影もすぐ乗り気になってくれたし、結果的には共に楽しめただろう。
時は流れ、9月上旬になった。まだまだ暑い日が続く中、朝食中に千影からある話を聴かされる。
「姉さんと麻美ちゃん、この数日中にこっちに来るらしいわよ」
「何で? また下見か?」
「よくわからないけど、向こうにいられる期間が急に短縮されたらしいの。姉さんも麻美ちゃんも、今月末まで退去しないといけないんだって」
「今月末? 数日中じゃねーじゃん」
「それはあくまで“遅くても”よ。2人は早めに花恋荘を出るみたい」
「ふ~ん。じゃあ、2人ともお前のアパートに住むのか?」
「それが…、今空いてるのは1室だけなの。1Rに2人住むのは厳しいでしょ?」
「ああ」
1人で住む部屋だからな。
「だから空いてる1室は麻美ちゃんが住んで、ここに姉さんが住むことになったわ」
「マジで!?」
今年になって5本の指に入る朗報だ。
「マジよ。姉さんから直接電話で聴いたから間違いないわ」
「よっしゃ~!!!」
神はオレに味方した。これからマメに参拝でもしようかな?
「うるさい!!」
こうして、千恵美さん達の来訪が早まった上に同居まで決まるという、とんでもない幸運が舞い込んできた。
千影の言う通り、数日後に千恵美さんと麻美ちゃんが来て挨拶を済ます。
この数日は、荷物の整理や新しい環境に慣れてもらうために、接触は控えるつもりだ。しかしその後は、好感度UPのため奮闘するぜ!
オレのハーレムは…、そう遠くない所にあるからな!
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