オレと彼女の元に、運命の女性2人がやってきた!
あかせ
プロローグ(健司視点による、前作の簡単なおさらい)
プロローグ① オレと千影が付き合うまで
オレの名は
この一軒家、買う際の金は互いに出したが名義は千影になっている。何故なら、彼女のほうが稼いでいるからだ。千影は…、そこそこ有名なVTuberらしい。
2人で住むのに一軒家を選んだのは、これが理由だ。配信に音や振動は厳禁なので、マンションは向かないとのこと。本当かどうかは知らんがな。
それに加えて千影には家賃収入もある。金の事では、アイツに頭が上がらない…。
VTuber“らしい”というのは、オレはVTuberの彼女をほとんど知らない。千影もオレの仕事について詳しく知らないはずだ。話したのは会社名ぐらいかな。
オレ達は、仕事とプライベートをきっちり分けているのだ。いくら付き合っていても、距離感は重要だろう? 踏み込み過ぎがトラブルの元なのはわかりきっている。
とはいえ隠すつもりはないから、訊かれたら答えるつもりでいる。オレは以前、千影のVTuber活動について訊かれて口出ししたことがある。その話は別の機会だな。
次は千影との出会いについてだ。初めて彼女と出会ったのは、29の時に受けたある会社の中途採用の時になる。オレがいた会社は、業績不振であっけなく潰れた。
中途採用の一次面接を受けるために待合室に入ったところ、千影と出会う。
彼女を観た瞬間、オレは惚れた。いつもふざけてばかりだが、これはマジだ。
一目惚れなんて、ただの都市伝説と思っていた。今まで学校やその他諸々で多くの女を観てきたが、惚れたことは一度もない。都市伝説だと思う気持ち、わかるだろ?
偶然にも同じタイミングで面接することになったオレと千影。面接では自己紹介や自己PRを言うものだが、そのおかげで彼女の人となりを知ることができた。
ついでに、意外にあがり症なのもな。入退室の動きはぎこちなかったし、噛む場面も多かった。偉そうなことを言える立場じゃないが、気になるもんだ…。
一次面接の合否は後日ということで、面接が終わったオレ達は解散となる訳だが、一目惚れした千影を逃さないよう、彼女をランチに誘った。
昼にはちょっと早い時間だったが、それが逆に誘いやすい口実になった。「ランチには少し早い時間だけど、ゆっくり話せそうじゃない?」てな。
誘われた千影は「そうだね、ゆっくり話そうか」と即答した。警戒心がないのか、オレに気があるのか…。都合が良い展開だから、気にしないが。
互いに中途採用なので前いた会社について訊いたところ、千影がいた会社も業績不振で潰れたようだ。高卒ですぐ働き出した会社のようで、愛着があるように聴こえた。
それからも話は弾んだものの、昼時になって店が混みだしたし千影が「用事がある」と言ってきたので、互いの就活成功を祈ってから急いで連絡先を交換する。
その後は解散したが、ランチは当然オレがおごった。男女関係なく誘ったほうがおごるもんだと思うんだが、間違ってないよな?
後日。中途採用の合否の連絡が来たが、ダメだった。何が原因だったのか…。千影にそう連絡したところ「ワタシも~」と来た。お前はそうだろうよ…。
それからも「○○社受けた」とか「面接で何訊かれた?」など、切磋琢磨しながら就活するオレ達。互いに忙しいし住所も知らないから、会う事に触れたりはしなかった。
だがそんなある日。事態は急転する…。
今日は就活の予定がないから、家でゴロゴロしよう。たまにはこういう日があっても良いよな? メリハリを付けないと、体と気分が持たないし。
なんてだらけていた時、千影から「直接会って話したいことがある」と連絡が来た。何で“直接”にこだわるんだ? 携帯で伝えられるだろ。
…これは千影なりの甘え方かもな。だったら断る理由はねー。そう思ったオレは「OK。場所はあの時ランチした店で良いか?」と連絡する。
するとすぐ「良いよ」と来た。この返信速度から見て、オレのことが恋しくてたまらないようだ。そんな千影のために、早めに着いて待っておくか。
待ち合わせ時間の20分前に店に着き、テーブル席を確保するオレ。…男1人でテーブル席って浮くな。早く来て欲しいんだが…。
オレの願いが通じたのか、千影はすぐに来た。…予想に反し、彼女は可愛らしい私服姿で現れた。店内をキョロキョロしていたが、すぐオレに気付いてくれた。
早歩きで来た彼女は、向かい合うようにテーブル席に座る。…スーツより着てる枚数が少ないのか、胸の形が分かりやすい。大きい印象はないが、小さくはない。
「それで、話したいことって何だよ?」
つまらない要件じゃないと良いが…。
「実はさ、金欠でピンチなんだよ」
おいおい、金の話かよ? 女は男より金がかかるのは当たり前だが、そういう間柄じゃねーだろ?
「そうか、大変だな」
「それだけ? ワタシが言いたいことわからないの?」
「大体わかる。『金を貸してほしい』だろ?」
「うん…」
「そういうのは、親族に頼むのが筋じゃねーの?」
利子を付けたくないから、オレに頼んできたと考えるべきだ。
消費者金融のことを言っても無駄だな。
「それは無理。母さんとは縁を切ったし、2人の姉さんはどこにいるかわからないし…」
どうやら複雑な家庭環境のようだ。普通の女が言ってきたなら間違いなくスルーだが、一目惚した女なら話は別。オレにできることはないか?
「お願い健司。アンタにしか頼めないのよ」
頭を下げる千影。
「そう言われてもな…」
オレだって金に余裕がある訳じゃない。即決は不可能だ。
「ワタシにできることは何でもやるからさ!」
「何でも…?」
男の本能としてエロいことを考えてしまう。
「そう。何でも!」
そこまで言い切るなら、本当にエロいことを頼んで良いかもしれない。だが、付き合ってない女とHするのはどうだ? 色々面倒なことにならねーか?
だったら、付き合うための手段として“何でも”を活用した方が良さそうだ。
「じゃあ、オレと一緒に住むのはどうだ? 何でもやってくれるんだろ?」
「一緒に…住む?」
千影は予想外の答えを聴いたのか、ポカンとする。
「そうだ。金を借りても、就職するまで返すアテはないよな? それなら同居して節約したほうが、互いのためになると思うが?」
こうすれば、絶対千影の家賃はなくなる。家賃をなくせるのは大きいだろう。
それに、オレも“彼女と一緒に過ごしたい”という望みを叶えられる。
しかし、事は単純ではない。千影にとって彼氏でない男と同居するデメリットは、オレの予想を超えるはず。『何でもはやっぱ無理!』と言ってきてもおかしくない。
千影は少し考え込んだ後…。
「それ良いね!」
笑顔で答えたのだった。
「は…?」
コイツ、警戒心が全くないのか?
「お前。彼氏じゃない男と住むって、どういう事かわかってるか?」
「もちろん。アンタは信頼してるから問題ないよ」
信頼って…。直接顔を合わせたのは、今日含め2回しかないんだが。
バカなオレが一目惚れした女なんだ。千影もそうかもな。
それから数日後。千影はマジでオレの家に来た。元々そう遠くない内に引っ越す予定だったらしく、無駄な物の購入は控えていた上にマメに処分していたとか。
だからこんな早く来ることができたのだ。んで、必要な物はキャリーバッグに詰められる分だけにまとめた、という事のようだ。
無駄な物を買わないなら、何で金欠になるんだよ? 少し気になるが、野暮なのは言うまでもないのでスルーした。
同居後も変わらず就活するオレ達。互いに“新卒”のカードがないから大変だが、地道にやるしかないんだよな…。
コツコツ頑張った努力が実り、オレと千影は別々の会社だが内定をもらう事ができた。互いに他の内定はなかったので、そこに即決した。
就職が決まった以上、今の同居関係は終わりだろう…。この関係はあくまで節約に特化している。収入源を確保できれば、無理して同居する必要はないはずだ。
千影がそう言い出す前に、オレのやりたい事をやろう。後悔してからじゃ遅い。
内定を決めた日の夕食時。雑談しながら探りを入れてみるか。
「千影。お前の初勤務はいつだったっけ?」
「えーと、三日後だね。健司は?」
「オレもそう」
ということは、今日・明日は無茶しても良いな。勤務の前日はゆっくりしたいし。
「あのさ…、千影」
「何?」
…どうやって女をHに誘えば良いんだ? ストレートに言って良いのか、遠回しのほうが良いのか。しっかり情報収集すれば良かったぜ。
「…アンタって、ワタシの胸観ること多いよね」
しまった! 無意識に観ていたか。ごまかしようがない。
「まぁな…」
「いくらアンタでも『Hしたい』はいつものように言えないんだ~」
小馬鹿にしながら笑う千影。
「そりゃそうだろ。簡単に誘えたら苦労しねーよ」
「え? 本当にHしたいの?」
探りを入れられたのはオレのほうか。素直に白状しよう。
「…ああ、そうだ。千影と別れる前にHしたいよ!」
「別れる? 何で?」
「何でって、この同居はお前が就職するまでじゃねーの? 貯金を切り崩していた今までとは違うだろ」
「同居する時に、別れるというか解消の条件言ってないよね? 健司が嫌じゃなかったら、ワタシはこのまま続ける気だけど…」
「マジで?」
「マジだけど」
オレの取り越し苦労かよ。余計なことを考えていたようだ。
…偶然とはいえHが話題になったから、話を広げてみるか。
「千影はさ、経験済みだったりするのか?」
「ううん。そういう健司は?」
「…ない」
「だからワタシとHしたいのか~。納得だわ」
「確かにそれもあるんだが…」
「? 他に何かあるの?」
「女はわからんが、男にはある都市伝説? があるんだよ。『30までに童貞を卒業しないと魔法使いになる』ってな」
「ふ~ん。ワタシ達29だし、もうすぐじゃん」
「だから…、お互い30になる前にヤろうぜ!」
さっきのと合わせて2回Hに誘ってみたが、返答はどうなる?
「……良いよ。女にも似たような都市伝説がありそうだし、ワタシもアンタと同居し始めてからそっちに興味を持ってきたから」
逆に言うと、今まで興味なかったのか…。だから処女をキープしてきたんだな。
その後オレ達は、当日・翌日の2日間の大半をHに費やした。お互い初めてなので試行錯誤する訳だが、初めての感覚に夢中になったのだ。
そしてゆっくりランクアップした結果、ついに童貞と処女を卒業した。
Hした以上、付き合ってもおかしくないと判断したオレが声をかけたことで、交際関係に発展した。待ち望んだ結果になり、大満足だぜ!
この段階では、まだ千影はVTuberになっていない。それは追々語るとしよう。
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