オレと彼女の元に、運命の女性2人がやってきた!

あかせ

プロローグ(健司視点による、前作の簡単なおさらい)

プロローグ① オレと千影が付き合うまで

 オレの名は三島健司みしまけんじ。自他共に認める、バカな30代のサラリーマンだ。そんなオレだが、古賀千影こがちかげという同い年の彼女と一軒家で同居している。


この一軒家、買う際の金は互いに出したが名義は千影になっている。何故なら、彼女のほうが稼いでいるからだ。千影は…、そこそこ有名なVTuberらしい。


2人で住むのに一軒家を選んだのは、これが理由だ。配信に音や振動は厳禁なので、マンションは向かないとのこと。本当かどうかは知らんがな。


それに加えて千影には家賃収入もある。金の事では、アイツに頭が上がらない…。


VTuber“らしい”というのは、オレはVTuberの彼女をほとんど知らない。千影もオレの仕事について詳しく知らないはずだ。話したのは会社名ぐらいかな。


オレ達は、仕事とプライベートをきっちり分けているのだ。いくら付き合っていても、距離感は重要だろう? 踏み込み過ぎがトラブルの元なのはわかりきっている。


とはいえ隠すつもりはないから、訊かれたら答えるつもりでいる。オレは以前、千影のVTuber活動について訊かれて口出ししたことがある。その話は別の機会だな。



 次は千影との出会いについてだ。初めて彼女と出会ったのは、29の時に受けたある会社の中途採用の時になる。オレがいた会社は、業績不振であっけなく潰れた。


中途採用の一次面接を受けるために待合室に入ったところ、千影と出会う。

彼女を観た瞬間、オレは惚れた。いつもふざけてばかりだが、これはマジだ。


一目惚れなんて、ただの都市伝説と思っていた。今まで学校やその他諸々で多くの女を観てきたが、惚れたことは一度もない。都市伝説だと思う気持ち、わかるだろ?


偶然にも同じタイミングで面接することになったオレと千影。面接では自己紹介や自己PRを言うものだが、そのおかげで彼女の人となりを知ることができた。


ついでに、意外にあがり症なのもな。入退室の動きはぎこちなかったし、噛む場面も多かった。偉そうなことを言える立場じゃないが、気になるもんだ…。


一次面接の合否は後日ということで、面接が終わったオレ達は解散となる訳だが、一目惚れした千影を逃さないよう、彼女をランチに誘った。


昼にはちょっと早い時間だったが、それが逆に誘いやすい口実になった。「ランチには少し早い時間だけど、ゆっくり話せそうじゃない?」てな。


誘われた千影は「そうだね、ゆっくり話そうか」と即答した。警戒心がないのか、オレにがあるのか…。都合が良い展開だから、気にしないが。


互いに中途採用なので前いた会社について訊いたところ、千影がいた会社も業績不振で潰れたようだ。高卒ですぐ働き出した会社のようで、愛着があるように聴こえた。


それからも話は弾んだものの、昼時になって店が混みだしたし千影が「用事がある」と言ってきたので、互いの就活成功を祈ってから急いで連絡先を交換する。


その後は解散したが、ランチは当然オレがおごった。男女関係なく誘ったほうがおごるもんだと思うんだが、間違ってないよな?


後日。中途採用の合否の連絡が来たが、ダメだった。何が原因だったのか…。千影にそう連絡したところ「ワタシも~」と来た。お前はそうだろうよ…。


それからも「○○社受けた」とか「面接で何訊かれた?」など、切磋琢磨しながら就活するオレ達。互いに忙しいし住所も知らないから、会う事に触れたりはしなかった。


だがそんなある日。事態は急転する…。



 今日は就活の予定がないから、家でゴロゴロしよう。たまにはこういう日があっても良いよな? メリハリを付けないと、体と気分が持たないし。


なんてだらけていた時、千影から「直接会って話したいことがある」と連絡が来た。何で“直接”にこだわるんだ? 携帯で伝えられるだろ。


…これは千影なりの甘え方かもな。だったら断る理由はねー。そう思ったオレは「OK。場所はあの時ランチした店で良いか?」と連絡する。


するとすぐ「良いよ」と来た。この返信速度から見て、オレのことが恋しくてたまらないようだ。そんな千影のために、早めに着いて待っておくか。


待ち合わせ時間の20分前に店に着き、テーブル席を確保するオレ。…男1人でテーブル席ってな。早く来て欲しいんだが…。


オレの願いが通じたのか、千影はすぐに来た。…予想に反し、彼女は可愛らしい私服姿で現れた。店内をキョロキョロしていたが、すぐオレに気付いてくれた。


早歩きで来た彼女は、向かい合うようにテーブル席に座る。…スーツより着てる枚数が少ないのか、胸の形が分かりやすい。大きい印象はないが、小さくはない。


「それで、話したいことって何だよ?」

つまらない要件じゃないと良いが…。


「実はさ、金欠でピンチなんだよ」


おいおい、金の話かよ? 女は男より金がかかるのは当たり前だが、そういう間柄じゃねーだろ?


「そうか、大変だな」


「それだけ? ワタシが言いたいことわからないの?」


「大体わかる。『金を貸してほしい』だろ?」


「うん…」


「そういうのは、親族に頼むのが筋じゃねーの?」

利子を付けたくないから、オレに頼んできたと考えるべきだ。


消費者金融のことを言っても無駄だな。


「それは無理。母さんとは縁を切ったし、2人の姉さんはどこにいるかわからないし…」


どうやら複雑な家庭環境のようだ。普通の女が言ってきたなら間違いなくスルーだが、一目惚した女なら話は別。オレにできることはないか?


「お願い健司。アンタにしか頼めないのよ」

頭を下げる千影。


「そう言われてもな…」

オレだって金に余裕がある訳じゃない。即決は不可能だ。


「ワタシにできることは何でもやるからさ!」


「何でも…?」

男の本能としてエロいことを考えてしまう。


「そう。何でも!」


そこまで言い切るなら、本当にエロいことを頼んで良いかもしれない。だが、付き合ってない女とHするのはどうだ? 色々面倒なことにならねーか?


だったら、付き合うための手段として“何でも”を活用した方が良さそうだ。


「じゃあ、オレと一緒に住むのはどうだ? 何でもやってくれるんだろ?」


「一緒に…住む?」

千影は予想外の答えを聴いたのか、ポカンとする。


「そうだ。金を借りても、就職するまで返すはないよな? それなら同居して節約したほうが、互いのためになると思うが?」


こうすれば、絶対千影の家賃はなくなる。家賃をなくせるのは大きいだろう。

それに、オレも“彼女と一緒に過ごしたい”という望みを叶えられる。


しかし、事は単純ではない。千影にとって彼氏でない男と同居するデメリットは、オレの予想を超えるはず。『はやっぱ無理!』と言ってきてもおかしくない。


千影は少し考え込んだ後…。


「それ良いね!」

笑顔で答えたのだった。


「は…?」

コイツ、警戒心が全くないのか?


「お前。彼氏じゃない男と住むって、どういう事かわかってるか?」


「もちろん。アンタは信頼してるから問題ないよ」


信頼って…。直接顔を合わせたのは、今日含め2回しかないんだが。

バカなオレが一目惚れした女なんだ。千影もそうかもな。



 それから数日後。千影はマジでオレの家に来た。元々そう遠くない内に引っ越す予定だったらしく、無駄な物の購入は控えていた上にマメに処分していたとか。


だからこんな早く来ることができたのだ。んで、必要な物はキャリーバッグに詰められる分だけにまとめた、という事のようだ。


無駄な物を買わないなら、何で金欠になるんだよ? 少し気になるが、野暮なのは言うまでもないのでスルーした。


同居後も変わらず就活するオレ達。互いに“新卒”のカードがないから大変だが、地道にやるしかないんだよな…。



 コツコツ頑張った努力が実り、オレと千影は別々の会社だが内定をもらう事ができた。互いに他の内定はなかったので、そこに即決した。


就職が決まった以上、今の同居関係は終わりだろう…。この関係はあくまで節約に特化している。収入源を確保できれば、無理して同居する必要はないはずだ。


千影がそう言い出す前に、オレのやりたい事をやろう。後悔してからじゃ遅い。



 内定を決めた日の夕食時。雑談しながら探りを入れてみるか。


「千影。お前の初勤務はいつだったっけ?」


「えーと、三日後だね。健司は?」


「オレもそう」

ということは、今日・明日は無茶しても良いな。勤務の前日はゆっくりしたいし。


「あのさ…、千影」


「何?」


…どうやって女をHに誘えば良いんだ? ストレートに言って良いのか、遠回しのほうが良いのか。しっかり情報収集すれば良かったぜ。


「…アンタって、ワタシの胸観ること多いよね」


しまった! 無意識に観ていたか。ごまかしようがない。


「まぁな…」


「いくらアンタでも『Hしたい』はいつものように言えないんだ~」

小馬鹿にしながら笑う千影。


「そりゃそうだろ。簡単に誘えたら苦労しねーよ」


「え? 本当にHしたいの?」


探りを入れられたのはオレのほうか。素直に白状しよう。


「…ああ、そうだ。千影と別れる前にHしたいよ!」


「別れる? 何で?」


「何でって、この同居はお前が就職するまでじゃねーの? 貯金を切り崩していた今までとは違うだろ」


「同居する時に、別れるというか解消の条件言ってないよね? 健司が嫌じゃなかったら、ワタシはこのまま続ける気だけど…」


「マジで?」


「マジだけど」


オレの取り越し苦労かよ。余計なことを考えていたようだ。



 …偶然とはいえHが話題になったから、話を広げてみるか。


「千影はさ、だったりするのか?」


「ううん。そういう健司は?」


「…ない」


「だからワタシとHしたいのか~。納得だわ」


「確かにそれもあるんだが…」


「? 他に何かあるの?」


「女はわからんが、男にはある都市伝説? があるんだよ。『30までに童貞を卒業しないと魔法使いになる』ってな」


「ふ~ん。ワタシ達29だし、もうすぐじゃん」


「だから…、お互い30になる前にろうぜ!」

さっきのと合わせて2回Hに誘ってみたが、返答はどうなる?


「……良いよ。女にも似たような都市伝説がありそうだし、ワタシもアンタと同居し始めてからに興味を持ってきたから」


逆に言うと、今まで興味なかったのか…。だから処女をキープしてきたんだな。



 その後オレ達は、当日・翌日の2日間の大半をHに費やした。お互い初めてなので試行錯誤する訳だが、初めての感覚に夢中になったのだ。


そしてゆっくりランクアップした結果、ついに童貞と処女を卒業した。


Hした以上、付き合ってもおかしくないと判断したオレが声をかけたことで、交際関係に発展した。待ち望んだ結果になり、大満足だぜ!


この段階では、まだ千影はVTuberになっていない。それは追々語るとしよう。

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