19:~後編~開幕の事情。

 あれから25分後。

 用意したミニゲームを挟み、動画時間が残り5分となった所で千寿達は告知へと移る。


[お?]

[告知?]

[なんだなんだ]

[次回?]

[お?]

[次回ですか?]

[次回放送日?]

[グッズとか?]

[次回やるゲーム?]

[早くもフェレサ女とのコラボかな?]


 蛍達撮影班によるちょっとした準備の時間に千寿の言った告知を予想するリスナー達。

 しかし数多出た予想の中に正解は無く、千寿に代わり満穂からの発表にリスナーの誰も彼もが度肝を抜かれた。


満穂「『明日の6/1から夏休みが始まる7/21の約2ヵ月間、3日毎に動画を投稿します!』」


[!?]

[なに!?]

[動画!?]

[おぉ!ゲーム実況?それとも劇場ですかな?]

[マジすか!?]

[3日毎!?]

[おー!!]


千寿「『更にこの番組もその2か月間、毎週土曜日の夜21時に放送しますよっと』」

琥珀「『内容は今日みてぇなやつな。この身体3Dでやるシノギ云々。あとはまぁ……あ~なんとか雑談だったけか?』」

千寿「『そうそう。1週間の振り返り雑談をしつつリスナーからのお便り返答や、ちょっとした懺悔を聞いたりしますよって。詳しくは三者三葉の公式アカウントから告知しますよて』」

満穂「『ちなみに3Dの私達にやって欲しいゲームがあればそちらもご一緒に』」


 と、言わなければならない事を全て言い、それぞれが決めていた終了の合い言葉を述べ、そして【三者三葉達の夜更かし話】というタイトルコールと共に3人が描かれた一枚絵が出て配信が終了した。


 此処からは現実のお話。

 千寿邸のリビングにてリスナー達と共に自分達が出ている番組を見ていた出演者一同はと言うと――。


「はぁーっ」

「! ビックリした……んだよ千?」

「キッツ!! 初めて自分の過去配信を見た時よりも恥ずかしいッ。数千倍も恥ずかしいッ」

「ふっ……」

「なんだおめぇ満穂も。急にどした」


 耳まで真っ赤にして項垂れる千寿。その様子を訝しむ琥珀。そして勝手知ったると、既に経験済みだと言わんばかりの笑みを浮かべる満穂。


 千寿は基本的に自身の過去配信は見返さない。理由は今見た通りで恥ずかしいから。

 でもって今日のは普段の配信と違って全身が映し出されている。動き回っている。剰えあまつさえその姿を万単位の人達が見ている。故に一挙手一投足の全てが気になって仕方がない。変な動きや手遊びをしていないだろうか? 2人を見る際に視線が変な所に行っていないだろうか? と、再熱した不安や羞恥心に油が注がれて大炎上していた。


 千寿は席を立ち上がり「お便りアドレス諸々の告知してくる」と、逃げるように配信部屋へと向かう。


 約10分後。

 気持ちが落ち着きリビングに戻ると蛍を交えて3人が飲食いしながら雑談をしていた。


「お疲れ」

「ども。とりあえず告知諸々してきましたよて」

「そうかい。反応はどうだった?」

「良いですよと。怖いくらいに。お便りのアドレスを記載した告知は既にリツイート数1000だし、他の告知をしている間にお便りやら感想やらのメールが大量に届いておりませば」

「そいつは上々。――ほぉ。リスナーの反応も想定以上に活きが良い。配信前にした告知の方もリツイート数はもとより表示回数が10万を超えてる。夜更かし話の方も今日中に5万は超えるんじゃないかな?」

「おお!」

こっち告知も姐さんの言う通りすげぇ事になってやがる」


 蛍が先ほどの動画三者三葉達の夜更かし話を見せ、それを見た満穂が驚きつつその傍らで琥珀が自身の携帯で配信前にした告知を見て驚く。


「さて? ウチフェレサ女の連中なら祝いの焼肉と喚く所だが時刻が時刻だ。祝いの宴はこの山場を乗り切ったらにしよう。楽しい楽しい夏休みが控えているしね」

「はい。正直不安から解放されて疲れがドッときちゃいました。も~あれです。お風呂に浸かったら最後、そのまま寝落ちモチモチ確定です」

「そうかい。なら風呂は朝風呂にして今日はゆっくり休むといい。なんだったら送ってる途中に寝ても構わないよ。ご両親から家に上がる許可は貰ってるから寝室まで運んであげよう。運び方のリクエストがあればそれも聞いたげるよ」


 蛍が立ち上がり、それに続いて満穂が席を立つ。その際「流石に寝ませんよ。それにシスターたる者、その日の終わりには清い身体でいませんと。――ちなみにですけど運び方はお姫様だっこが良いです。あとおやすみなさいの口づけも欲しいです。なんだったら蛍さんと朝チュンを迎えたいです……へへ」と、千寿達の前でシスターらしい事を言ったかと思えば秒でそれを撤回させた。

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