第25話 これからもありがとう

 本物の種を見せてもらうと。



【フレイヤの種】

【詳細】

 女神の残した幻の種。

 体力を全回復する。

 全ての状態異常を回復する。

 材料になる。



「こ、これが……! 凄いです。さっきのユグドラシルの種よりも凄いですよ」

「ええ、この種こそがレアアイテムです。さあ、どうぞ」


 イベリスがわたしにくれた。

 これで勝利確定ね!


「おめでとうございます、アザレア様!」

「マーガレットさんの手伝いもあったからです。本当にありがとう」

「いえ、わたくしは何もしていませんよ~」


 そんなことはない。転移魔法がなければ、この坑道ダンジョンまでは来られなかったし。あのエーデルワイスに先を越されていたかもしれない。


 ともかく、このアイテムを持ってお店へ帰ろう。


 わたしは、マーガレットに指示を出して転移魔法を出してもらった。


「お願いします」

「分かりました。では、地面にワープディメンションを展開しますね!」


 張り切ってマーガレットは、スキルを発動。光の柱が現れた。わたしとイベリスはそこへ飛び込んだ。


 あっという間にポインセチア帝国へ。


 お店の前に到着した。


 中へ向かうと、当然ながらエーデルワイスの姿はなかった。お店でしばらく待つと、扉が開いて人の気配が。


「お、お邪魔させてもらいますわよ!」

「エーデルワイスさん。来られたのですね」

「ええ、まあ。どのみち、あたくしの勝ちですけどね」

「いえ、あなたの負けですよ」

「なんですって!?」



 わたしはホンモノのレアアイテム『フレイヤの種』を見せつけた。



「これがあなたが求めていた種です」

「そ、そんな馬鹿な! では、あたくしが持っているこの種は!?」


 驚くエーデルワイスに対し、イベリスが冷静に解説した。


「それは私がすり替えたニセモノです。まあ、効果はそれなりにありますけどね」

「うそ……うそ!」

「本当ですよ。なので、この勝負は『フレイヤの種』を手に入れたアザレアさんの勝ちです」


「……そんなぁ」


 その場に崩れるエーデルワイスは、深いショックを受けていた。その後、彼女はお店とかわたしへの文句は諦めて帰っていった。

 これでもう安心ね。


「ようやく平和に商売が出来そうです」

「ポーション製造に集中しましょう。私も手伝いますので」

「はい、お願いします!」


 今日手に入れた『フレイヤの種』を有効活用して、新型ポーションを作っていく。もっともっと凄いポーションを製造して、高価なものも作って、もっともっと儲けたい。そして、二号店や三号店を出したい。


 わたしは更なる研究をイベリスとマーガレットと共に進めていく。


 そうして、ついに万能ポーションを完成させた。

 その名も『パナシーアポーション』。


 一個一万セルと高額だけど、自信はあった。


 さっそく売り出していくと直ぐに売れた。五個、十個、ニ十個と。早すぎー!!


「こんなに需要があるなんて!」

「アザレアさん、このポーションはあまりに万能すぎて欲しがる人が続出しています!」


 イベリスの言う通り、高額にも関わらず多くの冒険者が求めてきた。最近、難易度の高いダンジョンも増えてきたし、そういう人向けに売れるようだった。


 たった一日で三十万セル以上の売り上げを達成して、とんでもない利益を叩きだした。


「イベリスさん、マーガレットさん、二人ともありがとです」



 感謝を述べると二人とも疲れていたけど笑顔を浮かべた。



「いえいえ、こちらこそ楽しかったですよ」



 イベリスはそんな風に言ってくれた。



「わたくしもイベリス様と同じ気持ちです。アザレア様と一緒に労働に励むことは、とても楽しいこと。みなさんの笑顔も見れて最高です!」



 思えば、わたしはこういうお店をやりたくて家を出たんだっけ。錬金術師の師匠が出来、仲間が増え、ダンジョンを回ったりトラブルに遭遇したり――たくさんの出会いと別れがあった。


 これからもきっと、たくさんの楽しいことと辛いことがあるかもしれない。


 でも、それでもわたしは錬金術師を続けていくんだ。


 お店をいっぱい出して、ポインセチア帝国一番になる。


 それまでの道のりはまだまだ遠いけれど、イベリスとマーガレット、そして、フレイムフェンリルのゼフィランサスがいれば、きっと何とかなるよね!



「みなさん、一緒にがんばりましょうね」

「そうですね、アザレアさん。これからもずっと一緒ですよ」

「わたくしも可能な限りサポートしますねっ!」



 みんなに、ありがとう。

 そして、これからもありがとう。



 ◆



 一ヶ月後。

 お店はずいぶんと大きくなった。

 二号店、三号店を出して今やチェーン店展開を果たした。わたしは、いつの間にか社長だとか言われるようになって、以前とはまるで違う環境にいた。

 たくさんの錬金術師を輩出し、混迷を極めていたアルケミストギルドを再起させた。その功績が皇帝陛下に認められ、わたしは更なる出世を果たした。


 そして、わたしとイベリスは密かな婚約を果たしたのであった。


 もうこれ以上の幸せはないかも――。

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