3、ヴァイスとザフィーア

 ローゼと夫は双子の名前を先に産まれた子をヴァイス、次に産まれた子をザフィーアと名付けることにした。

 双子はどちらも非常に愛くるしい女の子で、島では『寿島の真珠と蒼珠』と吹聴する者もいる。元々ローゼ自身も『寿島の柘榴』と呼ばれていたため、子供にも宝石に例えて呼ぶのもおかしくはない。おかしくはないのだが、いずれ自分と同じように‘‘役職’’に縛られて自由が手に入らないのかと思うとゾッと背筋が寒くなる。

 そう、ローゼはいつだって‘‘役職’’に縛られていた。

   ◇◆◇

 ローゼは先代統治者の一人娘で、いつも先代統治者に『学びなさい。いずれお前は婿を迎えて新しい統治者の妻になるのだから。』と言われ続れていた。

 ローゼはそれが苦痛で仕方なかった。何度も「自分は寿島に利用され、寿島で息を引き取るのか」と嘆き自らを哀れんだ。

   ◇◆◇

 せめて、この愛しき子達には自分のようになって欲しくない。

そういう思いが溢れる。

 ではどのようにしたら防げる?

 答えは分からない。

 否、一つある。あるのだが、非常に苦肉の策だ。子供達をこんな境遇にするのは非常に不本意だ。

 しかし、子供達を守るにはこれしかないだろう。

 そう思ってローゼは未来のために動き出した。



   ◇◆◇


「ヴァイス、ヴァイス!!」

 

 そう言いながらドタバタと階段を駆けてくる音が聞こえた。

 ザフィーアの声と足音だ。後ろから静かだが焦った様な足音が聞こえてくる。おそらくお付きの者だろう。

 

 『バーン‼️』と派手な音を立ててヴァイスの部屋のドアが開く。


興奮した顔で目をきらきらと輝せたザフィーアがいた。

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