第5話 待ってる


 俺は一人っ子だった、父さんや母さんも優しくて家もあった。とても幸せで良い家庭だった。

「僕ね、大きくなったら冒険者になってお父さんやお母さんを楽させるからね!」

「そんなことしなくて良いんだよ」

「そうよ?レクトは好きな道を歩むの」

 そんな家族が大好きだった。


 そんな時俺は覚醒した。調査が入り収集と分かると手のひらを返すように無駄な能力者ですねと言われた。それはまだ良かった。

 親もそのままノーマルとして働けば良いといってくれ、俺は高校に進学した。

 能力者という事を隠して普通の高校に入った俺は普通に友達にも恵まれ何不自由ない生活をしていたはずだった。


 が、また調査という名目でうちに上がり込んできた国の機関は俺から全部奪って行った。能力者は学校から追放するべきとPTAから学校の先生まで言い出して俺は退学することになった。友達からも馬鹿にしやがってと罵られ自暴自棄になっていたのをささえてくれたのが親だったのに交通事故で二人とも即死だったらしい。

 それからは遺産相続の関係で優しい親族に預けられたはずの俺は結局は騙されてとられるだけ取られて放り出された。それが18歳の出来事だ。

 俺が街を彷徨ってると松崎さんが声をかけてくれ、バイトを紹介してくれ能力者としっても掌を返すようなことはせず、アパートも見つけてきてくれた。


 俺の中で信用できる人間は松崎さんだけだった。だからあの時も命を張って守った。


 俺を利用する人間はみんなおれの敵だ。


「あーぁ、いちばんやっちゃいけないことやっちゃったわね」

 ピンクの髪の毛をくるくるしながらお茶を飲む女性。

「あー!どうしたら許してくれると思う?」

 青い髪の女は資料を放り投げてうつ伏せになって呻いている。

「無理っぽくね?」

「だよねー」

「そんなに出来る奴なのか?」

 渋い白髪混じりの男性が聞いてくる。

「はぁ、調べたらレベルが63」

「は?」

「やっちゃったねぇーー」

「しかもアイテムボックスやら魔法ももってる、スーパールーキー」

「所属は?」

「無所属」

「なにやってんだよ!」

 椅子に体を預けて天を向く男性。

「わたしだって!…なにやってんだか」

「もう無理っていってんじゃん?」

 ピンク髪の女性はあっけらかんと話す。


「無理だとしても許してもらわなきゃ」

 青い髪の女はゆっくりと前を向く。



 十層で出た剣を鑑定したら雷撃の剣だった。まぁ、今までの剣よりはマシかな?

 装備を整えて家から出ると、青い髪の女がいた。

「調べたんだろ?感想は?」

「本当にごめんなさい」

「分かった。こんなとこでなんだが許してやるよ。だから俺に近づくな」

「それじゃ許してもらってないじゃない!」

「これでも譲歩してるんだ」

「分かった、私は許してもらうまで動かない」

「はぁ、何のために?」

「貴方に許してもらうために」

「くだらない」

 俺は無視して初級ダンジョンに向かう。


 ゴールドスライム収集をし、カードを集め。中級ダンジョンに入ってまたカードを集める。そして十層にクリスタルで転移して十一層からモンスターを集めてレアモンスターを探す。


 二十層まで来て、アイアンコングという名のモンスターを一閃すると、宝箱からは真偽のネックレスというのが出てきた。


「くだらないな」

 俺は俺のためにここを突破する。


 三十層でキメラを倒し、宝箱から剣が出てきた、魔剣デュラム。また剣を変える。

 中級は五十層までらしいので明日で攻略出来るだろ。

 転移陣に乗って一層へ、


 この季節は雨が酷いな。

 タクシーを捕まえて家に帰るとまだあの女は立っていた。

「お前は何がしたいんだよ!」

「許して欲しい」

「許してやるから帰れ!」

「本当か、、、」

 


「ここは?」

「俺の部屋だ!倒れるまで待つ馬鹿がどこにいる?」

「この服は、まさか」

「そのまさかだよ!」

「見たのか?」

「うそだ!大家の婆さんに着替えさせてもらった!あとで礼をいっておけ」

 大家さんにいったら喜んで着替えさせてくれた。俺が頼ってくれたのが嬉しいんだと。


「すまなかった」

「もう聞いたよ」

「あぁ。やっと許してもらえたのか」

「くだらないからな」

「くだらなくない!貴方にとってもっとも嫌な事をしたんだ。くだらなくなんてない」

「はいはい、コーヒーでいいか?」

「ありがとう」

「で?俺にとってのチャンスってなんだ?」

「それはもう良い」

「どっかの組織に入るとかじゃないのか?」

「そうだったが、そんなものはもう良いんだ」

 青い髪の女は普通に笑った。

「俺はレクトだ」

「知ってる、わたしはヒナだ」


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