第32話 諸宗寺院法度

 虎永には悪いが今後も航路開拓の為に動いて貰おうと思う、そして壊血病予防のために、ビタミンCが豊富に含まれている果物などを各寄港地で作らせた方がいいかな。

 

 ハワイはどうしようかな、寄港地として押さえておきたい土地だけど正直領土としては遠すぎていらないのよね。

 じゃあ砲艦外交で従属させるかな、条件としては港の使用権くらいの条件だと簡単に受け入れるだろう、

 問題としては、やはり言語の問題なんだよな、本土周辺での海戦は今のところ無さそうだし虎則にミッドウェー経由でハワイに行かせるか、そこで砲艦外交しつつお互いの言語理解の機会をもつしかないか。


「虎則を呼べ」

「せめて逆立ちを止めてから言え」


 そう言われたので逆立ちを止めると毎度の受け身失敗。そうこうしていると


「古湊虎則参りました」

「うむ、ちと虎則にも海外に行ってほしくてな」

「ほほう、面白そうな話ですな」

「虎永は苦労しているぞ」

「ということは原住民相手ということですか?」

「ミッドウェー経由でハワイに行ってもらう、ガレオン船を五隻で砲艦外交だ」

「珍しいですな、じっくりと対話はしていかないので?」

「時間が掛かりすぎるでな、通詞を育ててハワイ諸島を制覇し代官所を置くのだ、サトウキビが取れるはずなのでそれを砂糖にして税として納めさせろ,虎永にやらせている対話方法と比べて、どちらが効率よく支配できるかを比べてみることにする」

「それは砲艦外交の方が早いのでは?」

「征服の速度を問うているのではない、住民をどちらが上手く支配出来るのかを問うているのだ」

「なるほど」

「では大変だろうが頼んだぞ」

「はは!」


 これで二通りの支配の仕方を試すことになるね、全滅させて入植なんてのは選択肢にも上がらんからな。

 虎則が上手くいけばそのままメキシコへの道が出来そうなので楽しみに待っています。


 話は変わって御坊に任せていた寺社への法度が出来上がったので見させてもらっているんだけど、これ完全に江戸幕府の諸宗寺院法度だわ、百年以上先に作られた法度を当たり前の用に作り上げる我が師恐るべき。

 というか本当にまんまなんだよね、うちの御坊も未来の記憶持ってるんじゃないかって感じするね。


「どうだ、問題なければ七衆奉行衆掛かりにして通したいが」

「百年以上先に作られた法度と瓜二つです、御坊も未来人の記憶を持っているのかと疑いますよ」

「何をたわけたことを、ならば問題なさそうだな」

「私に否はございません、問題は領内の寺社が飲むかですが」

「飲むだろうよ、ある意味寺領の安堵を与えているようなものだ」

「では七衆と奉行衆の手が空き次第集めるとしましょう」


 しかしこの法度本当に江戸時代に作られた諸宗寺院法度に似てるというより丸写しな感じなんだよね、なんか歴史が加速してるのかな。


 定の中身が


一、諸宗の法式を乱さないこと。作法の悪い者がいれば必ず処罰せよ。

二、一宗の法式を理解しない僧侶を住持にしないこと。また新規の法式や奇怪な説を唱える事を禁じる。

三、本寺・末寺の秩序を乱さないこと。本寺は末寺に対して理不尽な振舞いをしないこと。

四、僧侶が徒党を組んだり、争いを起したり、副業をすることを禁じる。

五、国法に反した者が寺に逃げ込んで来た場合は、届け出た上で、異議なく追い返すこと。

六、寺院仏閣を修復する時は美麗に拘らないこと。また清掃は怠けることなく行わせること。

七、寺領の売買・質入を一切禁じる。

八、たとえ弟子の希望であっても、正当な理由なく出家を認めてはならないこと。もし認めるべき理由はないが出家したいという者が現れれば、所属する領主・代官に相談して判断を委ねること。


 そして条々が


一、僧侶の装束は分限に応じ、仏事儀式は、檀那が盛大にしてくれと望んでも、相応に軽微にすること。

二、檀那が新たに寺院を創建した場合、檀那と本寺に相談の上で住持を決めること。

三、住持の後任の契約に金銀を用いてはならない。

四、在家に仏壇を構えて寺として利用してはならない。

五、他人はもちろんのこと親類であっても、寺・僧房に女性を泊め置いてはならない。

 

 一定足りていないけど、ほぼ諸宗寺院法度の丸写しなんだよね、うちの御坊の頭の中どうなっているんだろう、しかしこれ一向宗は受け入れられないよね


「しかし、大和の寺社と一向宗がうけいれないでしょうね」

「いや、受け入れる」

「そうですか?」

「逆らえば、そちが焼き討ちにするという噂を流しておけばいいだけだ、命をかけてまでそなたに逆らうまい」

「四定と五条が受け入れられるか心配ではありますが」

「その時は潰してしまえ、国家を新生しようというのだ、この程度のことにも従えない者は潰すのが一番よ」

「分かりました、私も覚悟を決めましょう、まあ叔父上が一番大変な気がしますが」


 その後七衆と奉行衆を集め法度の施行を決定しました。やはり大和を預かる忠季叔父上が難色を示しましたが、従わない場合は焼いて良いことと伊勢と伊賀からいつでも援軍を出せるように説得し賛成してもらいました。


 後は朝廷を縛る法度を作らなければいけませんが、これについては日本の大半を押させてからでないと飲み込ませるのは難しいということで後日の課題としました。


 諸宗寺院法度の制定などの内政に力を入れていると、舟木虎永が戻ってきました。


「ご苦労であった」

「はは、ミクロネシア全島は当家に従うと申し出てくれました」

「やはりガレオン船五隻が大きかったのかな?」

「殿と話して信頼できそうなので、という意見も大きかったようです」

「それは嬉しいな、次は更に南の島々に向かって貰うことになる、その際にはミクロネシア人を何人か連れて行け、島が近ければ言語体系も似ている可能性はある」

「はは、今回は最初からガレオン船五隻で?」

「うむ、最初から五隻つれていけ、その方が話が早かろう、港は作らせているのか?」

「はい、寄港して修理くらいは出来るようにしようと思っています」

「うむ、当地の人間を苦しめないようにな」

「はは」

「では、十日ほど休みを与える故、暫くのんびりしてからいくがよい」

「ありがたく」

「下がってよいぞ」

「は」


「南方はかなり順調なんじゃないか?」

「まだまだ、欲しい島々の二割程度しかとれていません」

「先は長い焦るな」

「十六年後にはスペインが新大陸を発見してしまうのですよ」

「そうなるとスペインに領有権を主張されてしまうのか」

「はい、その前に必要最低限の部分は我が国の領土にしておかなければなりません」

「財源の問題というのは分かるが、それ以上に急いでいるように見えるが何かあるのか?」

「欧州人にとって、人は欧州人だけなのですよ、皆殺しにされたり奴隷にされたりと酷い目にある人々が増えないようにしなければなりません」

「ふむ、しかし現地に国があったらどうするのだ?」

「従属させて銀山の採掘権だけもらいます」

「国は残すと?」

「世界の反対側にあるような国は直接統治なんてできません」

「うむ、それが分かっていればよい」


 その頃古湊虎則はオアフ島に到着し五隻のガレオン船から一斉に砲撃を行いました、暫く待った後に原住民が現れたので男性二名を船に拉致しました。


『長よ、二人を見殺しにする気か』

『そうは言ってもあの黒筒から出てくる球が集落に落ちたら全滅しかねない』

『向こうの目的が分からない以上迂闊に動くべきではない』


 原住民が悩んでいた頃に一人が解放されて別の一人を寄こすように指名された。


『なにをされたのだ』

『そこらにあるものを指をさして何と呼ぶのかと聞かれていただけだ、ようは言葉を学んでいる』

『お前と入れ替えた理由は?』

『俺が嘘をついていないかの確認と、攫ったままにはしないということだな』

『結局どうなると思う』

『彼らは俺達を支配しに来たんだと思う』

『急に現れて支配などと舐めてるのか』

『と言っても勝てるわけじゃないぞ、部族を滅ぼすか従うかの瀬戸際に来ていると考えないといけない』

『近づいてしまえば、黒筒なぞ恐るべきものではない!』

『どう近づくのだ、船は沖にあるのだぞ泳いでいくのは不可能だし、舟で近づけば黒筒によって海の藻屑に変えられるだけだ』

『従った振りをして降りてきたところを狙ったらどうだ』

『彼らは黒筒の手持ち用の小型の黒筒をもっているぞ』

『では従うべきだというのか?』

『条件次第だと思いますが』

『任せるから出来るだけいい条件をもってくるのだ』

『了解しました』


「解放したのに再び来るとは何か用事かな?」

「ワレワレヲ、シタガワセルジョウケンヲ、、シリタイ」

「ほう、気付いていたか、条件は単純だ港を作らせる事、そしてその手伝いをすること、それと砂糖を税として納める事だ」

「ミナトヲ、ツクルノモテツダウノモイイガ、ゼイトイウノガワカラナイ」

「税というのは生産物に対して領主や国王に対して払うものだ」

「ソレデ、ソノゼイトハ、ドレクライトルノダ?」

「三割でいいとのことだ、我々の本国では四割だからこれは大分安いぞ」

「ヤスイリユウハナンダ?」

「単純に原住民であるそなたたちの反感を最低限にしたいからだそうだ」

「ワカッタ、ハヅサマニシタガウ」

「そう言ってくれて助かる、我らもそなた等を皆殺しにして占領するなんて方法を取らずにすむ」

「ソコマデシテ、コノシマガ、ヒツヨウナリユウハナンデダ?」

「この広い海の丁度真ん中付近にこの島はあるのだよ、だから必要なのだ」

「ハヅサマガ、コナクテモナニモノカニセンリョウサレルカノウセイガアルトイウコトカ」

「まあ、そういうことだ、我が殿は優しいから安心して欲しい、それと周辺の島も制圧したいので協力してくれ」

「ショウチシタ」


 こうしてオアフ島は我が羽津領となりなし崩し的にハワイ諸島を占領に成功しました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る