寄生事変

モブキャラです

イントロダクション

 バケモノたちの咆哮ほうこうが聞こえる。仲間だった、同胞の声だ。人間が使う生物兵器は同胞をバケモノに変え、同胞を操り、同胞の家族の命すら奪う。私が生まれるよりもずっと前、故郷に人間が降り立った。人間は自らの手を血に染めることなく我々の故郷を奪った。四百年続いた支配の歴史を終わらせるべく私は反乱を起こしたが、自由を取り戻せなかった。宇宙船と人間が呼んでいた船を乗っ取り、パイロットを脅す。どこか遠くへ娘を逃がす、そのことだけを考え、私は人間が放った生物兵器と戦った。人間が生物兵器と呼ぶそれは八本の足を持つ蜘蛛みたいな魔物だ。人間の顔と同じ程度の小さい魔物に我々は負けた。反乱軍の仲間は敵になって、宇宙船を彷徨っている。私も時期にバケモノの仲間になる。私の体から黒い液体が溢れてきた。もうダメだ。意識が遠く、遠くに離れていく。私の兄は言っていた、人間は二種類いるらしいと、かつて地球という惑星の支配者だったが地球を捨て逃げた貴族と地球に取り残された平民。平民は死んだと思われていたそうだが生きているらしい。貴族の身分を放り投げ反対を押し切って地球に戻った一人の人間が「地球に文明がある」その言葉を送った。その人間の言葉を信じるのならば地球は再生し、貴族に変わって平民が支配している。ざまーみろ。貴族はなぜかその報告に歓喜して調査団を送る手配をしている。攻撃ではなく調査だ。意味がわからない。貴族にとって平民は奴隷同然ではないのか? もしや貴族と平民は生物兵器にとっては等しくご主人? 同じならば奴らは襲わない。だが違えば襲う。このままでは娘も私も意味なく死ぬ。娘だったそれ、黒い液体に包まれているそれが歩み寄ってきた。私はそれを抱き締めた。宇宙船が地球に向けてワープを開始する。我々の最後の抵抗だ。

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