策略-17

「あんたら、私をこんなことしてタダで済むと思っているわけ?」

 自身の部屋のリビングで椅子に縛られたさくらは、目の前にいる健人と武彦を睨見つける。

「そんな顔したって無駄だぜ。俺達は、人一人殺してるんだからな」

「殺してる? 刺して、怪我させただけなのに?」

 強気に言う健人に対して、さくらは反論した。

「ウソだろ? 男は死んだんじゃ・・・・・・・」

「碌に確認しないから、こんな事するのよ」

「それはないだろ。お前の為にやってあげた結果がこれだ。自首したら、俺達は刑務所行きの前科者だ」武彦がそう言うとさくらは鼻で笑う。

「そんな事で逃げ隠れしてたの? 大丈夫よ。あの時みたいに事務所は上手くやってくれるから」

 さくらのその言葉に武彦と健人は互いの顔を見合わせる。

「何、見つめ合ってんのよ。私を信用して。悪いようにはしないから、ね?」

「ちょっと、待ってろ」

 武彦はさくらに告げて別室へと移動し、話し合いを終えたようですぐに戻ってきた。

「で、結論出た?」

「ああ。出たよ。さくらを信用する事にした。ま、裏切ったら今度こそ分かっているよな」

 さくらを拘束している縄を解きながら忠告すると「分かってる」それだけ返事をするのだった。


 翌日、仕事に向かおうとするさくらの前に燐、一川警部、絢巡査長の三人が立ちはだかる。

「どうもぉ~」

 ニコニコと手を振りながら、燐から声を掛けた。

「どうも」笑顔の燐とは対照的に素っ気ない返事をするさくら。

「実は、こいつがさくらさんに話があるっていうもので、来たんです」

「こいつ?」

 燐はスマホをさくらに見せると、長四郎が映っていた。

「どうもぉ~」長四郎もまた笑顔でさくらに手を振りながら挨拶する。

 それを見て「はぁ~」とため息をつくさくら。

「あれ? 嬉しくなさそうですね。もう事件が解決するのに」

 長四郎がそう言うと、さくらは舌打ちをして目を逸らす。

「事件が解決ですか。探偵さんに怪我を負わせた犯人が捕まったんですか?」

「いいえ」

「捕まってもないのに、どうして事件が解決するんです?」

「それもそうですよね」

「探偵さん。ふざけるなら私、帰りますよ?」

「申し訳ない。では、ここからは真面目に行きましょう。ラモちゃん」

「はい、これ」

 燐はさくらに新聞記事の切り抜きを渡す。受け取ったさくらは動揺もせず、「これは?」と説明を求める。

「この事件は、さくらさんが指示して起きたものですよね?」燐がド直球の質問をぶつける。

「何のこと? 名誉毀損で訴えるよ」

「それは困ったな」そう言ったのはスマホの向こうの長四郎がそう言う。

「そう言われても仕方ないでしょ?」

「フフッ」燐はそこで思わず笑う。

「何が可笑しいの?」

「いえ、この事件の事を突っついていたらさくらさんが関わっているっていう証言が数多く得られたのになと思って」

「証言って。その事件はもう片が付いたでしょ?」

「さくらさんって、言ったけ? あんたの中では終わっても被害者の人の中では終わっとらんとよ。それだけは分かって欲しいばい」一川警部がさくらに諭す。

「そうですか。この事件が私のストーカーとどんな関係が?」

「そんなものはないですよ」

 長四郎のその言葉にさくらは、ガクッと肩を落とす。

「でも、木幡マイケルさんの事件とは関係ありますよ」

「そんな人知りません」

「おかしいなぁ~ ここにさくらさんと木幡さんが映っている写真があるんですけど」

 燐が木幡の頬にキスするさくらの写真を見せると、さくらの顔が一気に青ざめた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る