策略-8

「ストーカーの正体が分かったって、本当ですか?」

 車が走り出してすぐにさくらが話を切り出した。

「はい。犯人はこの男だと判明しました」長四郎は後ろに座るさくらに木幡の顔写真を見せる。

「この人、知っていますよね?」

「あ、はい」

 さくらのその返答を聞いて、燐はこの男がストーカーだと確信した。

「どういう関係ですか? 彼は、私が通っている大学の院生です」

「ほぉ」長四郎は興味深そうにさくらの話に相槌を打つ。

「それで、どうして知り合ったんですか?」

「え?」燐の質問に驚くさくらは「声を掛けられたの」と答えた。

「という事は、さくらさんのファンで声を掛けてストーカー行為に走ったというわけね」

 燐が自分の推理を披露すると「安直だな」と長四郎は燐の推理を一蹴する。

「じゃあ、あんたの考えを聞かせなさいよ!」

「え~ やだぁ~」かまととぶる長四郎。

「キモい」そう声を出したのは、車を運転する絢巡査長であった。

「さくらさん、安心してください。後で〆ておきますから」燐はガッツポーズをする。

「は、はぁ」

 こういう時、どう返せばよいのか分からず作り笑いを浮かべる。

「そんな事より、彼が殺されたのは教えましたよね?」

「ええ」その質問の真意が読めず、さくらは長四郎を疑念の目を向ける。

「彼、毒殺されたらしいんですよ」

「そうなんですか」

「あれ、気にならないですか? どのようにして、死んだのか」

「気になりません!」語気を強めて否定するさくらに少し驚く燐。それに対して、長四郎はニヤニヤして「それは申し訳ない」と謝罪する。

「もうすぐで着きますよ」絢巡査長は三人に向かってそう告げる。

「明日は何時にお迎えに上がれば?」

「明日も来るんですか? ストーカーは居なくなったんですよね?」

「いいえ」

「あんた、もう一人居るとでも言う訳? 根拠は?」

「根拠? 院生はそんなに暇じゃないから」

「何それ。意味が分からない」

「まぁ、もう少し調査します。もし不服であれば、依頼料はここまでの料金で構いませんから」

 さくらは不服そうに「分かりました。じゃあ、明日、九時にマンションの前に。明日は午前中から仕事ですから」と返答しマンションの前で停車した車から降りて行った。

「長さん。彼女を怒らせちゃったみたいですけど、大丈夫何ですか?」

「どうなんでしょう?」長四郎はそう言って、肩をすくめる。

「ホント、無責任」燐は背もたれに寄りかかり呆れる。

「でも、彼女が木幡マイケルの事件とどう関係しているんですか?」

 絢巡査長は車を走り出させながら、質問する。

「それをこれから調べるの」

 長四郎は窓から景色を見ながら、次の一手を考えるのだった。

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