メランコリーにさよなら。

猫野 尻尾

第1話:出会い。

男と女は不思議だ。

誰かと出会って、恋をしてそして別れる。

傷ついて、もう誰も愛さないって思う。

でも、いつしかまた誰かと出会って恋をする・・・。



この物語の主人公「ヒロイン」 を紹介しておきます。


名前は伊藤 沙都希。いとう さつき


年齢:現在22歳。


身長:167センチ。


髪:今はロングの茶髪。


職業:美容師。

店に出てる時は主にポ二ーテールが多い。


特徴:向かって唇の右下にほくろがある。


ハーフ「父は日本人・母はスペイン系フィリピン人」



沙都希さつき颯太そうたの出会いは理容美容専門学校の保健室。

沙都希18才、颯太17才の時だった。


颯太はその日、体調が悪くて、学校の保健室で寝ていた。

休憩時間、友人の芳樹よしきが様子を見にきてくれた。

芳樹とは学校に入学してから知り合ったが、なぜか馬があってクラスで一番

仲がよかった。


「颯太・・・大丈夫か?」


「ああ・・・少し休んだから多分大丈夫だと思う」

「風邪、引いたのかもな・・・」


そう言いながら颯太は芳樹の後ろに立っている一人の女性を見た。

颯太の目線で、それに気づいた芳樹が言った。


「ああ、彼女、中学の時の同級生」

沙都希さつき・・・伊藤 沙都希いとう さつき


颯太は沙都希を一目見て、固まった。

と同時に沙都希も颯太を見て、固まっていた。

この瞬間、まさにふたりは同時にお互いを好きになっていた。


沙都希と紹介された女性は、とても綺麗で、背も高くスタイルもよかった。

長い髪が、憂に満ちた顔によ似合っていた。


ふと我に戻った颯太はなにも言わず彼女に見とれたまま小さくお辞儀をした。

彼女も、ちょこんと少し斜めに傾くようにお辞儀を返した。


「美容室のクラスでは見たことないけど・・・彼女?」


「ああ、沙都希はもう学校卒業してて、今日はインターン生の講習会に

来てたんだよ」

「で、お前の様子を見に保健室に来ようとした時、ばったりあったんで」

「それで一緒に連れて来たんだ・・・」


颯太は理容師を目指してる学生で沙都希はインターン生、美容師の卵だった。

美容学校で講習を受けるために学校に来ていた沙都希は、そこで颯太に出会った。


颯太にとって沙都機は本当の意味での初恋の人って言ってもよかった。

学生時代に同級生を好きになったことはあったが、いずれも片思いのまま

思いを告白することもなく学校を卒業した。


でも、沙都希との出会いは、まるで雷に打たれたような衝撃的な出会いだった。

沙都希を一目見た時、颯太の体に電流が走った。

颯太にとって沙都希は、まさに自分のタイプ、理想の女性だったからだ。


保健室では言葉を交わすことなく沙都希と別れたが、颯太はそれから

彼女のことが気になってしかたがなかった。

店でお客さんに対応している時でも、どこか上の空だった。

で、辛抱たまらず芳樹に頼んで、沙都希を紹介してもらった。


沙都希も、最初に颯太を見た時、一目で彼に心を奪われた。

だから芳樹から颯太が会いたがってるって話を聞いて、迷わず彼と会う

ことを承知した。

再び会った颯太は子供のような純粋で汚れない青い瞳をしていた。

確かめるまでもなく沙都希のほうが颯太より、お姉さんでひとつ歳上だった。


*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*


沙都希は物心つく前に母親と父親が離婚していて母子家庭で育った。

父親は日本人だったが、母親はフィリピン人、だから沙都希はハーフ。


だが沙都希が16才の時、彼女ひとり残して母親が病気で亡くなった。

それから家庭裁判所のお世話になって施設に入ることになったが、

沙都希には施設が馴染めず、外に出て自立することを望んだ。


ちゃんとした仕事に就きたかったが学歴がないから正規では雇ってくれる

ところは少なく、生きてくために夜の店で働くようになった。


とりあえず食べていかなくちゃいけないから・・・。


そんなお店で働いていると、いろんな男が寄ってくるようになる。

砂糖にたかるアリみたいに・・・。

みんな沙都希の体が目当て・・・最低でクズみたいなヤツばかりだった。


だから沙都希の心は荒んで行った。

沙都希に寄ってくる男はみんな自己中で虚栄心が強くて身も心が腐ってる。

そんな男しか近くにいないから沙都希は男なんてみんなそんなもんだと思っていた。


そんな世界にどっぷり浸かっていると心は病んで疲れていく一方・・・。

半ば、どうでもよくなり始めていた。

でも沙都希は、いつまでもそんな暮らししてたら終わるって思った。

だから、まともな仕事に就かなきゃと思って美容師になろうと決心した。


幸いにも友人に美容師の子がいた。

だからその子を頼った。

美容師なら住み込みだってできるし、学校の学費もお店が出してくれる。

インターン生のお給料なんて子供のお小遣いくらいしか貰えなかったけど

それでも元の暮らしに、もどるよりマシだった。


インターンをしながら、美容室に通って、そして無事学校を卒業して、

今は、市内で一番有名な美容室に勤めていた。


そして期せずして出会った奏太はこれまで出会ったどの男とも違っていた。


美容室も理容室も平日営業が終わるのは、ほぼ9時過ぎ・・・門限は10時。

少ししか会えない。

だから月曜日の休日だけが、ふたりの唯一の時間だった。

それでも、さずかな時間でさえ、ふたりはデートを重ねた。


颯太の愛情はまっすぐでブレないものだった。

沙都希の体が目的だった男どもと違って、純粋な気持ちで自分を愛してくれた。


沙都希は、そんな人に出会ったことなかったから、もしかしたら颯太となら

幸せがつかめるかもしれないと思った。


つづく。​


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