人魚姫

10物語は・・・話

人魚姫。


この物語は映画版もあるが、意外にどれも展開は似ている。


その昔、海には人魚たちが暮らしていて、一人の人魚姫が、海で遭難した王子を助けた。

人魚姫は王子を海辺までなんとか運んだ。

そして、偶然通りがかった女性が彼を発見し、王子が無事助かったことを見届け、その場を去った。

だが、人魚姫は王子に一目惚れしてしまった。

王子に会いに行くため、魔女に会い、自分の美声と引き換えに人間の足をもらい、歩くとき強烈な痛みをともなったが、歩行できるようになった。

人間となった人魚姫。

しかし、王子に会うも、向こうははっきりと自分のことを覚えていなかった。

しばらくすると、隣国の王女がお妃として、王子に嫁ぐことになった。

王子は、あの日海岸で助けてくれた女性はお妃だと思い込んでいたので、その縁談を受ける。

哀れんだ人魚姫の姉たちは、人間の返り血によって人魚に戻れるナイフを人魚姫に渡す。

王子と妃が眠る寝室に、彼女はナイフを持って近づく。

しかし殺せず、そのまま海に身を投げた。

                           めでたし、めでたし。


童話では珍しい、バッド・エンドに思える。

海に身を投じた人魚姫はその後、「泡」となり、天国に行く。

この物語には、あまり別バージョンは知られておらず、映画版はアンデルセン版と異なり、ハッピー・エンドで終わる。


 ところで、この「アンデルセン版人魚姫」には、他にこれと言った残酷で怖いエピソードはなかったはずだが・・・。

 今回もまた、王子転生なのだろうか?

 でも、どう、展開されていくのだろうか・・・?


・・・深い深い眠りから覚めていく。

足に伝わる振動、人々の声。体に感じる違和感。

前2回でも味わったこの感覚で再び目を覚ました。


「・・・。・・子。」


女性の声が、傍らから聞こえる。

ぼやける眼で隣を見ると、10代ぐらいの少女がいた。

金髪で、可愛い目をしているその少女は、俺の顔を覗き込む。

「王子様。」

可愛らしいその声は人を魅了する。

馬車の窓を見ると、10代中盤の可愛らしい美少年が写っていた。

 そうか、またか・・・。


いつものようにこれまでの王子の記憶が流れ込む。

ただ、今回流れ込んできた情報は、隣に座る少女が、隣国の王女で、許嫁だと言う情報だけ。

どうしてかわからんが、その時は気にしていなかった。


とりあえず、またサクッとクリアしますか!


馬車で散歩中だった俺らは城に帰り、いつものように(王子が)勉強をした。

その後、夕飯を食べ、眠りについた。


次の日も、起き、勉強し、遊び、食べ、眠った。

その次の日も、そのまた次の日も…



何事も無く、4日間が過ぎた。

僕は、何かが起きるのを待っていた・・・


                   あれ?


な、何で「僕」なんだ?

一人称は僕のはず・・・いや、違う!


俺は僕のはずじゃ。


この間何事もなかったからか、王城の王子の生活に溶け込み、時間も経ったため、魂がどんどん融合している。



 俺は平凡な男、平凡な男、平凡な男・・・。


何度も唱えた。


おれ? 僕は王子。


いや、違う。

違うが・・・。


そんな葛藤をしていた4日目。

偶然、メイドたちの噂話を耳にした。


          最近街に、殺人鬼が出た。 


どういうことだ・・・。

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