魔女の居ない始まり

「ユウスケがまたくだらないことを言ってる」

 アキナが呆れ気味で私に向かって言う。

「ちょっとタカヒロなんとか言ってあげなさいよー」

 すかさず私はアキナを守るようにタカヒロにパスを投げた。

「なんでそこで俺に振るんだよ」

 おどけつつタカヒロは私の言葉にあたふたする。

「だって私が言ってもこいつ、聞く耳持たないんだもん」

 アキナは、いーっとした顔でユウスケを見ないで言った。

 私はそんなアキナの顔を可愛いなと思いながら、そこは男同士であるタカヒロの出番じゃないのと無茶振り。

「ははん、俺たちにそんな攻撃が効くわけないだろー」

 とけたけた笑いながらユウスケはタカヒロの肩に肘を置いた。

 しばらく4人で特につかみどころもない、他人が聞けば相当にくだらない会話で盛り上がっていた。

「それってめっちゃ面白いじゃん」



 

 ユウスケの言った冗談に反応すると、すかさずアキナが

「それって言うほど面白くなくない」と応酬する。

「おいおいそんなにズバッと言ってやるなよ」

 タカヒロがケタケタと笑う。

 この4人のグループは高校生になってからたまた同じクラスになって仲良くなったグループだ。

 初めはアキナと席が前後になったのがきっかけだったと思う。

 アキナからの最初の第一声を今でも忘れられない。

 思い出す度に笑ってしまう。

 「君、可愛いね――」

 どこぞのヘタクソなナンパかっ、って思わず突っ込んでしまったのもセットで今でも思い出して笑うことがある。

 


 ユウスケはアキナの幼馴染。

 アキナと私が会話してるところにきて「おっ、めっちゃ仲良しじゃん」って言ってきたのが初めの接点に立ったとは思うんだけど、ユウスケ曰くそれよりもちょっと前に面識はあったとかで初対面の顔をしたら凹んでた。

 タカヒロとの最初の出会いは廊下だった。

 私が先生から頼まれた宿題のノートの束を持って行く途中、廊下にぶちまけてしまった。

 量も多く積み直すのに四苦八苦していると急足で通りかかった隆弘が手伝ってくれたのに、彼は大丈夫だねと言うと足早に帰ってしまった。

 翌朝駅で見かけて声をかけてから、駅で会うと自然と喋るようになり、気がつくとこの4人で居ることが当たり前になった。

 私たちはこの乗り換えで一度降りる駅で合流して4人で学校へ向かうことが日常となっていた。


 

 お互いに見失わないように大体の待機列を決めて、自然とそこに行くとこの4人になるように、別にそこまで意識をしているわけでないけれど

 この4人で居る時が一番楽しいと思っている。

 前日の学校であったくだらない話とか、どうでもいいテレビの内容とか、youtubeの話題でさえどうでもいい。

 ただ、この四人でこうして笑いながら話してるこの今がただただ楽しい。

 盛り上がってる私たちの後ろの階段から、一人の男の子がホームヘ降りて来るのが見えた。

 気が付くと目で追っていた彼はそのままホームの奥へと行ってしまった。

 

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