第6話 圧倒的(ルーナ視点)

「これより、ルキアルア王国跡地の調査へ向かう」


私は今日、ルキアルア王国跡地に行く。DOUBLEダブルZゼータ危険区域に行くのは、さすがに緊張する。私はまだDOUBLEダブルSシグマの手前、ここで死んだら元も子もない。しかし、強くなるにはこの調査が大切だ。


魔物に殺された母、盗賊(アサシン)に襲われた父。魔物に苦しむ人をなく、アサシンを潰すのが私の目標。だから私は強くならなきゃいけない。アサシンの支部討伐はDOUBLEダブルSシグマ。本部はZゼット、経験を得るには絶好のチャンス。


「ちょっとワクワクしてるぜ!なぁルーナ」

「そうですね。ここで生き残り、私はDOUBLEダブルSシグマランクに上がるのです」

「おう!俺らはS級パーティーに上がりたいぜ!」


私と1度臨時パーティーを組んだことのあるアーロンは言った。とてもポジティブで職業として冒険者をしている。その職業だけでA級冒険者に上がれたことは私も尊敬している。


「わかっていると思うが、この調査は死ぬかもしれない。だが、放置すると我がパステル王国にも被害が及ぶかもしれない。生き残り、この違和感を突き止めるぞぉぉ!」

「「「オオオオオオオ!」」」


副騎士団長含め騎士団人数65人。この人数で行くとしても素直に負けることはないだろう。私は腰の鞘にある愛剣の柄を撫で負けないことを今ここで誓った。


「よし!頑張るぞ!」

「はい、最大限の協力をします」





「止まれ!」


馬に乗って2時間半。私たちは王国跡地の入り口まで来た。何度見ても不吉で闇が漂っている。崩れかけの壁、壁を越えて見えるエンシェントワイバーン。私の本能がここに行けば死ぬといっている。だが、今回は違う。アーロンもその仲間もいるし、騎士団も約60人。絶対に生きて帰る。


「これより、作戦Aを決行する。5つに分かれ、各自王都を循環しろ!」


作戦A。5つに分かればらばらに王都を見回るという作戦、私とアーロンパーティー、騎士団10人を連れて私たちは王都の東側に向かった。


見れば見るほど不気味だ。所々に煙が上がっており、分単位でゴブリンやらおーくやらの叫び声が聞こえる。その叫び声を聞くごとに私たちに焦りを見せてくる。


東の調査を始めて10分が経過したころ、私たちは死を実感した。私たちに影ができ、不思議に思い上を見るとキングワイバーンが飛んでいた。キングワイバーンは私たちを見つけるや否や獲物と判定。私たちに向けて魔法を撃ってきた。キングワイバーンの討伐ランクはDOUBLEダブルSシグマ。エリートワイバーンで苦戦してしまう私からしたら負け試合。しかし、今回はアーロンもいるし、騎士団もいる。私はキングワイバーンに向けて剣を鞘から抜いた。




甘く見ていた。私の斬撃は消され、アーロンパーティーの人たちはあっけなく魔法で消し炭にされた。騎士団の人たちも防戦一方で体力が削られるだけだった。私も体力の限界が見えてくる、少し頭がくらくらする。しかし、こんなところで倒れたら死ぬ。アサシンを潰さずに死ぬわけには行けない。私はどうしようか悩んでいると、横から気配が感じられた。


横を見てみると、人らしきものが見えた。私は頭がくらくらするため、幻覚と最初は思ったが目を凝らすごとに鮮明に見えてくる。黒髪青の瞳、優しそうな顔をしておりここの王国にふさわしくない服装。体つきもお世辞にはよいとは言えず、平均的な感じだ。また、手には解読不可能と言われている銃が握られていた。私は気づいた。なぜこんなところに一般人がいるのかと。私は大声でその人に向けて言葉を発した。


「あなた!そんなところで何をしているんですか!ここはDOUBLEダブルZゼータ危険区域ですよ!すぐに物陰に隠れてください!」


しかし、私の言葉が聞こえていない様子なのか眉をひそめただけで、何ならこっちへ向かってくる速度を上げてきた。私はその人に気を取られ、キングワイバーンの攻撃をもろに受け後ろの壁にたたきつけられてしまった。


「おい!大丈夫か!」

「ケホッケホ、大丈夫です。そんなことより」


私はもう一度走ってきている人の方を向いた。さすがにここまで来たら騎士団の人たちも気づき、私と同じように大声を張った。


「君は何をしている!DOUBLEダブルZゼータ危険区域だぞ!離れてろ!死ぬぞ!」


さすがに聞こえる距離なので、さすがに足を止めてくれると思ったが、足を止めずに左腕をキングワイバーンに突き出した。次の瞬間、詠唱する間もなく魔法は放たれキングワイバーンの片羽が消し飛んだ。....え?


「嘘、だよな?」


アーロンも驚きを隠しきれておらず、私と同じように驚愕の顔あらわにしていた。砂埃が舞い、数秒の間があいた。次の瞬間、片羽を消し飛ばした人に向けてキングワイバーンがブレスを吐き出した。ボォォォォォ!と炎が燃え散らかり、ブレスがやんだ。また人を守れなかった。そう思ったとき、体中が炙られた状態で彼は立っていた。


彼は痛そうにしながらも、しっかり生きていた。次の瞬間、彼の炙られた皮膚が元に戻り、片腕が消し飛んだ。何が起きたのか全く脳が追い付かず、流すように見ているとキングワイバーンは死んでいた。


彼はキングワイバーンが死んだことを確認すると、また炙られた皮膚の状態になり片腕が再生した。その強さはまるで尋常じゃない。私はすぐに鑑定して、彼がアサシンかどうかを疑った。しかし、鑑定をしても見れるステータスはなく、すべてがボケて見えた。私は最大限の警戒心を持ちながら彼を睨み続けた。


「大丈夫ですか?」


そんな私の脳を包み込むような優しい声で心配を投げかけた。父の声に似ている、じゃなくて。惑わされないように、こっちからも質問を投げかけた。


「あなた、誰ですか」

「俺はシリル。ここの国に生活しているしてる。年は15でこの国のプラットフォームの下層部にいる人間だ」

「なっ!この国に住んでいるとか死ぬ気かよ!」


彼の名はシリルという。この国で生活している。私は耳を疑った。DOUBLEダブルZゼータ危険区域で生活?不可能ではないか、嘘ではないか。しかし、彼の目は噓をついておらず、私のスキルにも反応しなかった。


すると、彼はアーロンの口を押えうるさくするなと言った。なぜだと疑問も、すぐさま分かった。道の角から大量のゴブリンが出てきた。B級エリートゴブリンとA級キングゴブリン、たぶんこの量な場合、適正冒険者ランクじゃDOUBLEダブルSシグマに値するだろう。しかし、彼は安堵の顔を見せた。


「俺が突っ切って全匹を叩く。でも、俺も弱いから少し取り逃してしまうかもしれない。君たちはその取り逃したのを殺してほしい。あと、その腰の抜けてる人たちも守ってほしい」


と。不可能だ、もともとエリートゴブリンとキングゴブリンは知能が高い魔物で有名だ。作り出した銃は弓職人の手を煩わせきた。そんなゴブリンたちを一人で対応は不可能だ。私はすぐさまその行動を否定、アーロン止めに入った。しかし、「俺は君たちより強い自信はないが、疲弊しきっている君より万全な俺の方がいい」と正論をぶつけられ何も言い返せない。


彼はほんとにやる気なのだろう、群れの方を向き鞘から短剣を抜いた。しかし、短剣は錆びきっており刃こぼれどころじゃないダメージを追っていた。


「何ですか、その剣」

「ん?何って言われても。短剣としか言いようがないが」

「無理、やめといたほうがいい。確かにさっきの魔法の精度はすごかったと思います。でも、そんな錆びた剣では皮膚すら切れないかと」


それで戦うといういかにも奇行をする気だ。確かに魔法はすごかった。あんなに丁寧な魔法は今まで見たこともない。しかし、どんなに武術ができていてもこの量は不可能だ。しかし、彼は効く耳を持たずにそのまま剣を構えた。


すると彼は、自分に向けて超高級鉱石のヒヒイロカネを出し腹を貫いた。さすがに奇行すぎる。このゴブリンの量にもハンデありで戦えるのかという煽りにすら見える。


「ウッ...カハ!」


彼は当たり前だとは思うが吐血し、顔色が徐々に悪くなっている。だが、数秒経過すると彼の体から赤い蒸気が出てきた。彼の瞳も青色からオレンジ色へと変化し、ものすごい速度で群れへ突っ込んでいった。





彼はゴブリンから一撃も食らうこともなく、群れを討伐した。一瞬の出来事だ。錆びた剣で首を八つ裂きにして、ゴブリンの顔に恐怖という文字を浮かびださせた。彼は体が完治した状態でこっち側に戻ってきた。


「俺の拠点来るか?」

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