第24話 気になる事

 岩剛斎の部屋は質素な作りで、丸太でできた椅子とテーブル、そして本棚があるだけだった。

 本棚には簡素な作りの書物がぎっしりと入っていた。


 本か……この世界では初めて見た気がするな。


 椅子に座って待っていると、

 岩剛斎は飲み物を持ってきてくれた。

 

「さて、わしの力を教える前に、わしから質問してもよいか?」


 と岩剛斎が聞いてきたので、俺達はどうぞと返事をした。


「君たちは何者じゃ? どうもあの施設と全く関係がない……とは思えないんじゃ。勘じゃがのう」


 そう言われ俺とフーチェは顔を見合わせた。

 そして、


「そうだな……結論から言うと、あの施設が現れたのは俺たちのせいかもしれない」


 俺はそう話し始め、今まで何をやって来たのかを包み隠さず伝えた。


「なるほど……急激に人口が増えた結果、あの施設が出現したのではないか? という事じゃな」


 と岩剛斎は納得した様子だった。


「俺たちはあの施設の内部を調査したい。そして、あわよくば破壊したいと考えている」


 俺は力強くそう言った。


「ふむ。その心意気は有難い事じゃ」


 岩剛斎はそう言って少しだけ考えるそぶりを見せた。

 そして、


「ならば施設調査に関して、わしらが試した事を話そうかのう」


 と言った。

 そして、飲み物を一口飲んだ後、真剣な表情で説明してくれた。


・・・

・・


 あの地震の後、わしはリリアナに周辺区画を調査してもらった。

 その結果、例の施設を発見したんじゃ。


 そして、すぐにリリアナとわしで調査へと赴いた。


 出入口と思われる場所には見えない壁があり侵入することが出来なかったが、

 わしの攻撃でそれ自体はすぐに破る事が出来た。


 一旦わしだけで中へと進むこと約2m、急に身体に力が入らなくなってしもうた。


 見ると、わしの纏う闘気が天井にどんどんと吸われておったのじゃ。

 このままでは死ぬと判断し、その時はすぐに戻った。

 その際、入り口はまた見えない壁に阻まれておった。


 力が残っていた為、なんとか破壊して外に出ることが出来たんじゃ。


 そして二回目の調査はリリアナと共に出向いた。

 リリアナは道場で唯一エンハンスが使える。

 エンハンスを纏ってわしが進めなかった先へと言ってもらおうとしたんじゃ。


 じゃが、わしと同じくらいの場所で、魔力が地面から急速に吸われ始めた。

 エンハンスが一気に解除されてしまった。


 だが、エンハンスや闘気を纏っていない場合は問題なく進めた。

 なので、そのまま何も纏わずに進んだんじゃが……


 その通路を抜けた先には大きなフロアがあった。

 しかし、わしたちはそこへ入場することなく帰還した。


 それが最後の調査じゃ……。


・・・

・・


 岩剛斎は一通り話し終えた後、飲み物を一気に飲み干した。

 いまの話で闘気という名称が当然のように出てきたが、聞いたことねーよ……。

 そんな事を思いながらも俺は質問した。


「何故そこで引き返したんだ?」


 岩剛斎はすぐに


「今までに見た事がない魔物がそこで眠るように静止していたんじゃ」


 と続け、闘気を纏っていれば勝算はあるが、生身ではとても倒せる相手ではないと言った。


 闘気もエンハンスも纏えない環境でそいつと戦って勝つ……。

 さっきの魔物を一撃で倒す岩剛斎が倒せないと言うなんて、相当やばい魔物なのだろう。


「じゃぁさ! エンハンスと闘気? を同時に纏ったらどうなるの?」


 俺はふと疑問に思ったことを投げかけた。

 すると岩剛斎はそれは思いついておったが、そんな事を出来る者がここには居ないと答えた。


「え、岩剛斎は出来ないの?」


 そう言うと、岩剛斎は右腕を出して俺に見せた。


「え、魔法輪が……ない?!」


 なんと岩剛斎の右腕には魔法輪と手の甲の輪が一切なかったのだ。


「わしには獣人の血が流れておらぬ。鬼人と人のハーフじゃから魔法を覚えることが出来なかった」


 と言いながら腕を下ろした。


 獣人、鬼人……?

 この会話でどれだけ知らない単語が出てくるんだよ!


 そう思った俺は……


「岩剛斎……話す前に獣人と鬼人、闘気について教えてほしい」


 と質問した。

 このあたりの事が分からないまま話を聞いたところできっと理解できない。


「なるほど、分かった良いじゃろう!」


 岩剛斎は心快く教えてくれた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る