第10話 レベル6へ!

「う……」


「あ、ロフル! 目を覚ましたのね!」

「ああ、またか……すまない」


 俺は例の如く魔力切れで意識を失っていたようだ。

 その時間は3時間程だったようだ。


「そういえば、俺の試練でマグは合格したわけだが、マグはクリアになったか?」


 そう言うとフーチェが


「問題無しです! マグは試練クリアになってました!」


 と俺の手を取って喜んだ。

 どうやら、祭壇にもう一度手に突っ込むと、討伐成功済みレベル6になれるという説明が出てきていたようだ。


「お、おお! おめでとう!」


 俺はマグにガッツポーズをとりながら言った。


「ロフル。ありがとう」


 そういってマグは自慢げに六輪になった腕を見せつけた。


「あれ? 輪は6つしかないんだな」

「うん。代わりに左手の掌に小さい魔方陣が増えた」


 そういってマグは掌を見せてくれた。

 確かに小さな魔法陣が増えている……。


「ロフルさん! 新しい魔法が気になるのは分かりますが私の試練を忘れてませんか?」

「ご……ごめん。寝て元気になったしいつでも大丈夫だ! そうだ、その前にどんな敵だったか共有しよう」


 そうしてマグと俺でフーチェにどんな敵だったのかを伝えた。


「んー……」

「どうしたフーチェ? マグの様に引きつけるのも難しい……やはり他に方法は思いつかないか……」


 フーチェは少し考えた後、口を開いた。


「バインドは試してないんですか? 近づいてきた時近距離でバインドを放ち、動きを封じてブラストすれば良いと思うのですが……」

「あ……」


 俺とマグは思わず声が漏れた。

 たしかに近接攻撃をしてきた時はNo6隙が大きかった。


「それで行こう!」


 こんな簡単な事にも思いつかなかったなんて……

 そう思っていると、フーチェが


「マグ! 魔法に頼らずまずは己の肉体で戦おうとする癖、早く治してください! ロフルさんもその癖がありそうですが……」


 と、言いながらじーっと見てきた。

 言われてみればたしかにそうかもしれない……気を付けよう。


「さ、フーチェさんそろそろ行こう!」


 話を早々に切り上げ、俺は試練開始の準備を行った。


・・・


――レベル6開放の試練を開始します。

――No6 戦闘準備


「マグの時と全く同じ場所だ」


「なるほど、さて来ますよ! 四輪バインド!」


 フーチェは相手が動き始める前にバインドを発動、それは見事に命中しNo6の動きを封じた。


「あら……簡単に捕まった……」


「ロフルさん! 早くブラストを!」


「任せろ!」


 俺は早速エンハンスの出力2にしてブラストを放った。

 

「ダメージもほぼ同じ感じだな……」


 ブラストが命中した部分は少し壊れただけ。

 やはり2回当てなければならないようだ。

 そう考えていると……


「これだけ穴が空いていたら私でも……!」


 そういって、フーチェは壊れた部分に向かって真っ直ぐに拳を打ち抜いた。

 そして、No6はそのまま炎に包まれ破壊された。


「ふう。やりましたね!」


「お、お疲れ……!」


 あなたも己の肉体で戦いたいタイプでは……?

 そんな事を思いつつも口に出さない俺だった。


・・・

・・


「おかえり。早かったね」


 マグは座って待っていた。


「先に情報をもらったおかげです!」


 フーチェはそう言いながら足早に祭壇に腕を突っ込んだ。



――

試練……達成

レベル6を開放します。


レベル6

六輪 バースト を習得

六輪 キーキューブ を習得


次のレベルまで0.9

レベル7情報

七輪 リジェクション


――


「レベル7もあるのか……一体いくつまであるんだろうな」


 俺は呟くように言った。

 そして石板には左腕を入れろと表示されている。

 それでマグの掌のような魔法陣が増えるのだろう。

 フーチェはさっきのマグのレベルアップを見ていた為、

 スムーズに腕を入れなおしていた。


 マグとその様子をじっと見ながら終わるのを待っていた。


「よし、これで私も六輪ですね!」


 フーチェは喜びながら言った。

 俺とマグはおめでとうと言いながらハイタッチをした。

 そして俺達は一度祭壇から外へ出た。


「暗くなってきたな」


 俺は周囲を見渡しながら言った。


「そうですね。アミナも心配だし帰りましょう。ロフルも一緒に来てはどうですか? 開眼の神殿はどうせ私達の所ですし」

「それがいい」


 二人がそう言ったので、俺はそのまま一緒に開眼の祭壇まで行く事にした。


「ありがとう。そのままそっち休んで明日の朝一に試練を受けるよ!」


 そう言って俺はある程度の食糧等をカバンに詰め込み、二人と共に出発した。


・・・

・・


「おかえりー! あ、お兄ちゃんもいらっしゃい~!」


 アミナは元気よく出迎えてくれた。


「久しぶり! 元気そうでよかった」


 俺はアミナの頭を軽く撫でた。


「お、アミナ三輪になってるんだね。いつでも帰る事が出来るな」


 俺がそう言うと、3人は少し沈黙してしまった。


「アミナも帰らないよ」


 アミナは少し悲しそうな表情をしながら言った。


「あ……そうだったんだな。まぁ俺も帰らないし一緒だな!」


 何か地雷を踏んでしまった事を悟った俺は、話を変えようとしたが、


「ロフルさん、私達が何故ここで生活しているか……言ったことなかったですね」


 フーチェが俺の顔を真剣な表情で見ながら言った。

 俺が頷くと、そのまま話始めてくれた。


「私達、神徒の住む上層ではユニークリングは忌み嫌われる存在なのです」


 そういってフーチェは上層の事について説明してくれた。


 神徒は10歳になったら手の甲に魔法輪が発現する。驚く事に強制的にここへ転送される事はない。


 神徒の住む上層には祈りの祭壇と言うものがある。

 そこで毎日4時間以上祈りを捧げると、最終的に五輪までは上がるがかなりの年数を要する。

 祈りで五輪になる場合早い人で10年、30年程掛けても五輪まで行かない人もいるという状況だ。

 才能や信仰心で変わるのだろうか……。


 10歳になった時、発言した魔法輪がユニークリングだった場合、

 例外なく最下層に捨てられるそうだ。

 どうやって最下層に送るのかと聞くと、神徒の祭壇に最下層に飛ばされる転送魔法陣があるという。

 この転送魔法陣が10歳の間でしか使用できない為、ユニークリングと分かった瞬間すぐに飛ばされてしまうようだ。


 仮に生き残って無事に帰られたとしても、幽閉されるなどひどい扱いを受けるそうだ……。


 上層の世界に住む神徒……ここに飛ばされないのは羨ましいが、俺が神徒だったとしても結局ここへ捨てられていたって事か。


「ユニークリングは素晴らしい力を秘めている。それを捨てるなんてどうかしてるな」


「ふふ。そうですよね!」


 フーチェは笑顔で答えた。


「話してくれてありがとう。大変だったんだな」


 俺は優しく微笑みながら言った。そしてアミナの方を向き


「アミナがもう眠たいみたいだ。今日はもう休もう」


 といって立ち上がった。


 マグはそのままアミナを抱き上げ、小屋の寝床に移動した。


 そして俺が木のテーブルあたりで寝る準備をしていると、

 フーチェが小屋の方から声を掛けてきた。

 俺は疑問を持ちつつ小屋の中に入った。

 そこには木製のダブルベッドと岩で作ったシングルサイズのベッドが設置されており、

 ふわふわの綿のような物が一面敷かれている。


「え、凄い。なんだこのふわふわ……」


 触ると見た目通りにふわふわとしていた。

 この上で寝ると気持ちよさそうだな……


「西の方を探索してた時に見つけました。お花みたいに咲いていたんです。それを摘み取って叩いて伸ばしました!」


 フーチェは自慢げに説明してくれた。


「凄いな! 今度採った場所の詳細を教えて!」

「もちろんいいですよ」


 フーチェはそう言いながらエンハンスを解き、布を羽織ってベッドに入った。そして何故か端の方へと移動した。


「マグのは二人で寝られるスペースを確保してますが、私のは少し狭いです。でもこうやって端に寄ればロフルさんも一緒に寝られますよ!」


 と綿布団をぽんぽんと叩いた。

 何で自然に添い寝する感じになってるんだ……?


「あ……ありがとうフーチェ! でも大丈夫。俺は外のテーブルあたりで休ませてもらうよ。流石に同じベッドは……俺、一応男だからさ……」


 そういうとフーチェはハッとした顔になった後、赤面した。


「あ、ああえっと、そうですよね! すいません……じゃぁ、お休みです……」


 そういってフーチェは布団に潜りこんでしまった。


「お休み。フーチェ」


 そうして俺はテーブルの方へと移動し、そこで眠る事にした。


・・・

・・

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