第27話  砂漠のお花畑

『イイニオイ、ガ、アッチカラ、スルヨ』


 ブリジットには、人間に無い嗅覚があるようだ。


「行ってみましょう」


 ティランが、風の奥方を上手に操って、素早く移動した。


「待って!!ティラン!」


(本当にティランなのかしら?)

 ティランのあまりの変化についていけないエリサであった。

(でも…… 滅多に見ない見事な銀髪と銀色の瞳。母君に瓜二つだと言う超絶世の美姫のような顔。妹姫も美姫だったけど、ティランの方が圧倒的に神秘的な美しさを称えてる…… 別人ではあり得ない……)


 エリサは、首を横に振って疑問を受け入れた。


 ティランの銀色の長髪を目印に、エリサは後を追った。


「ブリジット、何があるの?」


『オハナ~~』


 ティランは、かなり早く移動していた。

 エリサが、やっと着地するころには、すでにその花畑を調べていた。

 ほんの小さな泉があって、その泉を取り囲むように花畑はあった。

 見たことも無い大ぶりの花びらを持って、ほんのり青白く光っている。香りがとても強い花だ。


 ティランは、何かを捜しているようだ。


「何を捜しているの?」


 エリサは、丁寧に花の間をかき分けて何かを捜しているティランに聞いてみた。


「精霊です。ゼナという…… 大地の」


「ゼナ?」


「この花の名前です。彼女には、旅人の安全を命じました。

 すでに、肉体は無いでしょうが、精霊としてここに留まっているとばかり思ってました」


「?」


「火竜の姫、また、力を貸してくれ」


『ヤ~!!』


 ブリジットは激しく抵抗したが、エリサのもとから、ヒョイと抱かれてしまった。


「ティラン!!」


 ティランはエリサの怒鳴り声を丸無視して、ブリジットの火の力を引き出した


 そうすると、辺りは急に暗くなり、血だらけで倒れている精霊のゼナと恐ろしい一つ目の怪物が、抱き合っている情景が視えた。


「ディハルド……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る