第24話(2)

 かなり精神を擦り減らしていたのか、どっと疲れが出たようで、いつの間にか座ったまま寝ていたようだ。スマホの着信ではっと目が覚めると、相手はしずだった。膝の上は洋服が置かれたままなので、畳んでいる途中で寝落ちてしまったらしい。


「エイミー、ご飯は?」

「あ、ごめん寝てた。食べに行くよ」


「そのことなんやけど、かわの部屋で四人でタコパしよって話になってん。タコパってわかる?」


「タコパ……?」

「たこ焼きパーティー」


 世の中にはそんなものがあるのか。寝て起きてもメールのことで体がざわざわしていたので、気分転換になって良いかもしれない。


「向かうよ」

「うん。もうそろそろ準備始めよかなって」

「わかった」


 通話が切れると一人でいるのが怖くなって、制服から私服に着替えてそそくさと部屋から出ていった。



「あ〜、かわ! ちょっとこれタコ入ってへんねやけど!」

「今食べてるやつにタコ入れたのは浅田だろ」

「うっそ、黙っててや河内!」

「冤罪だろどう考えても」


 私はひたすら笑うことしかできない。冬の冷静な切り返しが面白いのだ。面白いのだが、いまいち会話に没頭できない。


「エイミーも笑うようになったなあ」

「え、そんなに?」

「初めは表情変わらんかったもん」


 しずも浅田君も口を揃えて言うので、自分では気にしていない自分の変化に驚いた。あの家にいた頃は防衛術として、笑うことも、表情を変えることも放棄していたから、解放された反動もあるのだろう。そもそも楽しいとか、面白いとかもあまり感じていなかった。


 実際このようなパーティーなど、ここに来るまでやったことはなかった。ここにいれば私は私のままでいられる。全て忘れて。


 なのに今日は、集中できない。


(あのメールのせいだ。胸が押さえつけられるみたい)


 見られているのではないかという考えが頭に侵攻してきて、抗えないのだ。誰が、何のために、私にあんなメールを送ってきたのか。


 お開きになって夜になっても、疲れているはずなのに遅い時間まで目が冴えていた。布団に潜っても眠れず、諦めて数学を開いた。数学を好きな人には申し訳ないのだが、徐々に眠くなってきて、そのまま今日二度目の寝落ちをした。

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