第4話 配信回 ソフィーナのおしゃべり

僕がカメラの構えると、ソフィーナがおしゃべりを始める。


「ダンジョンに雨が降らなくても空気が乾かなくて不思議なの」


> 水分は魔力で補われてるって言われてるね。


> 雨降るダンジョンもあるよ。あれは戦いにくい。


> 初級ダンジョンは不思議と天気のダンジョンが多いな。


「あら? 初級ダンジョンは雨が降らないの? 不思議ね」


> ダンジョンが弱いヤツを引き寄せるために雨を止めてるらしいな。


「それは怖いわね」


撮影は順調だ。ソフィーナになったルルナは楽しそうだ。結構僕も楽しい。




10分ほど行ったところで、初めてソフィーナが物干し竿を使う。


相手はスライムだ。


「今日は下僕さんたちから物干し竿を使って戦えって言われたから、これで戦うわ」


> ありがとう。僕のリクエストだ。


> 俺は洗濯ばさみを使えってお願いしたのになあ。


「洗濯ばさみじゃ戦えないわ。スライムを挟むことぐらいはできるけど」


> それはそれでおもしろいかも。


> 今度やってよ。


「わかったわ。はい。今、スライムを物干し竿で倒してみたわ」


すごいな。ルルナ。物干し竿でスライム叩いたときにすごい音がしたよ。


けっこう強いよね。ルルナって。




100メートルほど行ったところで、中山に遭遇。カメラを止める。


「おや? 撮影してるの?」


「そうなの。画面に映りこまないようにしてね」


「わかってるって。でも、栄養士なんて撮影に使っていいの?」


「隆起くんは結構役に立つわ」


「そっかな? モンスターが出てきたら逃げるんじゃない?」


「逃げないよ! 僕は!!!」


そのときだ!!!


ルルナが中山の肩を物干し竿でパンと思い切り叩いた。


「いてぇえええええっ」


中山が悲鳴が上げて飛び上がって、僕もびっくりしてルルナを振り返った。


「な、なにするんだよっ。ルルナちゃんっ」


中山が抗議の声を上げると、ルルナはゆらりと黒いオーラを放って、物干し竿をポンポン手の平で叩きながら、中山ににじり寄って行く。


怒ってる。・・・あきらかに怒っている。


すごくこわい。ルルナが放っているのは悪役令嬢そのもののオーラだった。


「・・・隆起を今あなたバカにしたでしょ? ・・・死刑ね」


「ええっ」


「アンタは・・・死刑よ。中山ッ。覚悟しなさいっ」


「うわあああああああああああっ」


中山は悲鳴を上げて逃げて行った。




中山が去って行った後、ルルナがぷんすか怒り続けていた。


「もう! なにかしらっ。隆起に対するあの態度っ。あいつ死刑ッ」


「はは。ありがとう。怒ってくれて。お蔭で気が済んだよ。ルルナ」


「ダメよ。そんな態度じゃ。もっと徹底的に中山を痛めつけるのよっ」


「はは。ルルナってば本気っ?」


「当たり前じゃないっ。友達がバカにされたら、私はソイツを地獄に堕とすわ。いえ、むしろ拷問かしら? 芋虫を食わせてやるわ」


ちょっと頬を染めて僕のためにプリプリ怒ってくれるルルナがかわいい。


ルルナって普段クールで色々と割り切ったところがあるけど、本当に僕がバカにされたりすると真っ先に怒って行動してくれる。


とてもいい友達だ。


「ありがとう・・・」


また僕が言うと、照れ臭そうにルルナは頬を赤く染めて言った。


「・・・当たり前じゃない。私とあなたは友達なんだから」


カメラの中の釣り目のソフィーナと、カメラの外の垂れ目のルルナが同時に照れ臭そうに頬を掻いた。

すごく可愛かった。


なんだか、ルルナと幼馴染でよかったと思った。






それから10分くらい歩くと、まもなくコボルトの住処が見えた。


あれ?


けど、おかしい。住処に異様に人だかりができてる。


「なにがあったの?」


そうルルナが尋ねると、冒険者の人が言った。


「どうも、ダンジョンを壊したヤツがいるらしい。ダンジョンに穴が開いてる」


えっ?


ダンジョンに穴が開いてるってそれって地下から敵が上がってくるんじゃ?

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