フツメンの僕にもラブコメを!

空舞 隼

新たな出会い

第1話 いつもの四人組

四月、桜が吹くとある路地にて。


「二越く~ん! おっはよ~!」


こんな感じで元気に挨拶をしてくれた彼女は、市川 可恋かれんさん。橙色の綺麗な髪をハーフアップにまとめ、整った顔立ちをしている。それに加えてモデルのようなスラッとした体型を持つ彼女は周りの目を惹きつける。すなわち、美少女である。彼女は僕の中学の友人だ。


「おはよう、市川さん。」


そんな彼女に挨拶する僕は、二越 綾人ふたこし あやと。勉強はある程度できるが、運動は全くダメ。趣味は読書。こんなやつが何で市川さんと並んで歩いているのか、と言われても何も言えない。ただ、彼女は僕の数少ない友人の一人なのだ。それくらいは許してほしい。


「今日から僕たち高校生なんだね。何だか実感がわかないなぁ。」 


「ほんとだよねぇ。私まだ中学生の気分だよ、ふふっ。」


そんなことを話していると、道の向こう側から僕たちを呼ぶ声が聞こえた。2人の男女が大きく手を振っている。


「あ!綾くんと可恋ちゃん!」


「お~い!綾人~市川さ~ん!」


可恋ちゃんと呼ぶ彼女は、金子 美奈。髪は栗色のボブで、背は女子の中でも小さく、小動物のような人である。

そして僕のことを名前で呼ぶ彼は、柳原 廉也だ。高身長でイケメン。中学ではバスケ部のキャプテンを務めていた。二人は僕と小学校からの仲である。いわゆる幼馴染ってやつ。


「おはよ~!美奈ちゃ~ん!柳原く~ん!」


「おはよう、美奈ちゃん、それに廉也。」


「おう!綾人、今日もコンビは仲良いなぁ?」


「ちょっと廉ちゃん!?綾くんたちをからかわないの!」


「美奈ちゃん、大丈夫だよ。実際私たち仲良いし。ね? 二越くんっ?」


そう言ってニコッと微笑む市川さんの笑顔にドキッとしてしまう僕。


「そ、そうだね。まぁ二人とも変わってなくて安心したよ。」


「春休みは中々会えなかったしなぁ。」


廉也の言う通り、四人で会うのは中学の卒業式以来だったりする。春休みは各々が帰省や家族旅行で予定が合わず、会うことが難しかった。懐かしさを覚えながら歩いていると、市川さんが言った。


「あ! 見て見て! 高校が見えてきたー!」


「やっぱり大きいよねー桜田高校。受験で来た時も思ったけど。」


公立桜田高等学校 。一応進学校で、地域の子ならだいたいここを目指す。そして、僕たちが今日から通う高校だ。校舎は最近リフォームを行ったそうで、とても綺麗である。


「美奈はチビだから校舎が大きく見えるだけじゃ…って、ぐほっ!」 


廉人に金子さんの強列なブローが入る。痛そう。


「廉ちゃん、言葉には気をつけよーね?」


「す、すみません美奈様…」


そんな2人を見てクスクスと笑う市川さん。


「今年も皆と同じクラスになれたらなぁ…」


そう僕は呟いて、これから始まる高校生活に想いを馳せていた。桜は僕たちを歓迎するようにゆらゆらと揺れる。



こんなフツメンの僕にラブコメはやってくるのだろうか…

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