小説・詩 練習

猫又大統領

企画ではない作品

納豆がお礼にくる話

 まだ、冬の寒さが彷徨う春先の真夜中、扉を開けた。真っ暗な世界から一人の女性が玄関前に立っていた。

 何の警戒もなく対面したわけではない。こんな夜更けだ。しっかりと、いつもより、警戒はした。でも仕方がなかった。モニターに映ったのは、この世のものとは思えないほどの絶世の美女なのだから。

 先夜はどうも、そう告げる。

 何のことか見当もつかない。こんな美少女だ。忘れるのものか。どこかで? と僕がいう。

「夜食として召し上がった納豆……です……」と頬を赤らめいう。「そ、それはどうも。え? は?」僕は夜食でよく納豆を食べる。どうして彼女が……それを。

「え、冗談はやめてくださいよ」僕はニコッと大きく笑顔を作って記憶の中から彼女を捜索する。

「そうですよね……ばれてしまいますよね。やっぱり……本当は……納豆の……その……フィルムの部分についていた”あの”一粒です。あなたは、捨てずに……食べてくださいました……みなさん、捨てるのに……」

 美女の容姿にもどうにかこうにか耐性が付き始め、ようやく話に疑問を持ち、少女の目を睨む。

「え? そ、そんなことを言われて誰が納得しろっ――」睨んだ先の瞳の中には豆粒のような可愛らしい黒い瞳が輝き、目を奪われ、言葉を失くした。

 そして、僕は。

 ……。

 した。

 納得した。

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