素人配信者さん、初回でうっかり伝説級の大バズりを披露してしまう(願望)~あれ? モンスターってS級でもこんなものなの?(他人任せ)~

こまの ととと

第1話 ここから始まる伝説の配信者(予定)

 突然だがダンジョン配信というものがある。


 その内容とは! ……正直今更語るほどマイナーなものでもないので大方割愛とさせていただく。十何年か前になんやかんやって……つまるところダンジョンで配信で大受けなのだ!



 そんな、今や若者のトップコンテンツとなったダンジョン配信。

 実を隠そうこの俺もまたその有名コンテンツの配信者、となるのだ。


 危険も顧みずモンスターたちを、ちぎっては投げちぎっては投げの大立ち回りを繰り広げ、男子高校生といううら若いピチピチの肢体を以って縦横無尽に駆け巡ってはお姉さん視聴者のハートを常にゲット。

 ……というものを目指している。


 そうだ、俺は十七歳。若さ溢れるこのフレッシュな容姿を以ってすれば、きっと女性視聴者に受ける事間違いが無い。


 ……はずだったのになあ。


 俺と同じ考え方を持っている人間がこの世には何人もいた。

 そう、若さを生かした男性配信者など他にいくらでもいたんだ!

 同じ学校にも何人もいるなんて思わなかったじゃん。


 お前らこんな危ないことやってんの? もっと将来のことを考えてさ、勉強に励めよ。そして俺に道を譲れってんだよ。


 仕方がない。先人がいるのは納得しよう。納得できないが納得しよう。俺ももう十七歳、清も濁も併せ飲んで胃液と共に吐き出すくらいに大人に近づいているのだ。


 もう今更引き返せねえんだよ! 担任に、お前の頭じゃ大学は諦めろって言われてんだぞ!  でも、就職も嫌なんだなぁ。


 そう、かいつまんでまとめるとこれが天職ということだ。間違いない。


 ダンジョン配信というものがこの世に生まれて早数年、今から売れるには華麗なスタートダッシュを決める以外に道はない。後から都合よく視聴者がついてきたりなんかしてくれねんだよ! だって他にも配信者はいるんだもの。わざわざ売れてない配信者を見に来てくれるそんな視聴者なんかいやしないんだ。


 バッチシ初回でキメ無い限り、後追いに生き残る道はない! ……と、この間有名配信者が言っていた。

 普通の奴ならそこで諦めるかもしれない。だが俺ならできる、なぜなら俺には才能がある。俺がそう思うんだから天才なんだ!


 見てろよ、放し飼いされてる近所の大型犬にちょっかい出しては逃げ切って鍛えた俺の自慢の脚力なら、どんなモンスターだろうと大立ち回りは請け負いだぜ。


 半年間のバイトで貯めた金で揃えた機材をリュックに背負って、いざ出陣である。

 これが個人じゃなくて事務所に所属していたら、機材とかそっちで貸してくれるんだろうなぁ。個人配信の弱みだぜ。


 ◇◇◇


 というわけでやってきたんだ。この……何だっけ? なんとかって名前のダンジョン!

 なんか取れ高が良いって噂を耳にしたような、しなかったような。……というわけで突撃なのだ!


「行けい! ドローン一号!!」


 俺の半年間のバイトの成果、貯金のほっとんどをつぎ込んで買ったこの最新型ドローン。

 俺がどんなに激しい動きをしても必ず自動で追尾してくれる優れもの。しかも非常にブレに強い。おまけに凄く高い。……本当に買おうかギリギリまで悩んだぐらいには。

 その分性能は折り紙付きだ。きっと期待に応えてくれるだろう。


 カメラを搭載したドローンを飛ばし、まずは記念すべき第一声を放つ。


「どーもこんにちわー。今日はですね、最近巷で話題になってるこのダンジョンの配信をやっていきたいと思いまーす! それで僕、『東御堂嶋サエジュウロウ』は今日が初めての配信になるんですけど是非覚えていってくださいね。ピチピチの十七歳ですよ。十七歳の青い果実の男子高校生ですよ! フレッシュな若さ溢れる男子高校性ですよ!! どうですか? お姉さん方、若い男の子好きじゃないですか? きっと需要ありますよね!?」


 き、決まった……! これはいけてる!

 これこそ正に、俺が求めていた配信の姿!


 ちょっと危ない奴感はあるが、それもまた魅力の一つと言えるはずだ。

 ……うん、大丈夫だ。うん。


 ドローンのライトの1つが緑色に点滅している。コメントが来た合図だぜ!

 そしてそのコメントをドローンが自動で読み上げてくれるのだ!


<いや、君こんな危ないことしないで帰って勉強したらどうだ?>


<わざわざ貴重な青春をダンジョン配信につぎ込むなんて、彼女も友達もいないんか?>


<勉強しろ。それがお前の為だ>


「うるせえぇぇぇ!!!!」


 何だお前ら! せっかく気分良くやってんのに水を差すんじゃねえよ。野郎はお呼びじゃないんだよ! 俺はこれから華麗に大活躍して一躍時の人となる男だ。お前ら如きが想像する程度の器に収まる男じゃないんだよ!!


 ……おっと、いかんいかん。もっとクールに愛想よくしなければ。


「あはは、冗談ですってば。ちゃんと勉強もしますよ。だから安心してくださいって。あ、でも勉強ばかりだと息が詰まりますからたまにはこうしてストレス発散しないとダメだと思うんですよね。ほら、適度な運動って大事だし!」


 ふむ、我ながら完璧な言い分だ。これで誰も文句は言えないはず……。


<ロクに勉強もしない上に、友達とも遊ばないでぶらぶらとこんなことやってたら、親御さんが泣くぞ。お前の将来が心配だよ>


「くっ……! ま、まあ。あんまりいじめないで下さいよ。記念すべき初回配信、もっと気前良くな感じで行きましょう! さぁて潜るぞぉ~! どんなモンスターが待ってるか楽しみだなぁ~!!」


 俺はこのダンジョンに入る前から既に若干疲れていた。しかし、そんなことではいけない。ここからが本番だぜ!

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